2024年4月に、再エネ特措法が改正されます。
なっとく!再生可能エネルギーのウェブサイトでも特設ページが設けられています。

以前ご紹介した「野立て太陽光発電の周辺住民説明会等が認定の要件とされる」ことも改正内容の一つです。

さらに事業規律を徹底するための「認定事業者の責任の明確化」も含まれます。
発電事業は、建設や保守管理など様々な業務を外部の事業者に委託して行うのが一般的ですが、委託先が認定基準等に違反した場合の「認定事業者の責任」を明確化するとともに、どのように委託先を監督すべきかを示すものとなります。

2024年4月までに詳細を決定することとなっており、現時点では未確定ではありますが、方向性が見えてきていますので、早めのご準備の参考としたいただくため、現時点で分かっていることをご紹介します。

監督義務が課される背景

2050年カーボンニュートラルの実現や、2030年度の再生可能エネルギー比率36~38%という野心的な目標の実現に向けて、再生可能エネルギーの大量導入が不可欠です。円滑に大量導入を進めるためには、地域と共生した再エネ導入が重要となります。

FIT制度の開始以降、リードタイムの少ない太陽光発電の導入が特に進み、多様な事業者が参入しているため、

  • 安全面
  • 防災面
  • 景観や環境への影響
  • 将来の廃棄等

に対する地域の懸念が高まっています。

地域と長期に共生する再エネの大量導入を進めるために
事業規律を徹底するための具体策
既設再生可能エネルギーの最大限の活用策
などの制度設計が「再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ」にて検討されてきました。
とりまとめられた内容が公開されており、2023年9月29日から1ヶ月間、意見が公募されていました。
参考:「再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ第2次取りまとめ(案)」に対する意見公募について

委託先事業者の認定計画や認定基準違反についての課題

太陽光発電事業では、発電所の建設や保守管理などの各段階で、専門の事業者へ工事や管理を委託するケースが一般的です。
安全の確保や地域との共生、太陽光発電設備の廃棄対策など、発電事業の規律の対象は「認定事業者」ですが、現行制度では委託先(再委託先を含む)が認定計画や認定基準に違反した場合における認定事業者の責任が明確ではありませんでした。

認定事業者(発電事業者)の責任を明確化するために、以下の項目が改正に盛り込まれることとなります。

  • 発電事業者に、委託先(再委託先含む)の監督義務を課す
  • 監督義務不履行があった場合は、認定事業者に対して認定取消しなどの措置をとり得ることとする

監督義務とは?

認定事業者の認定計画遵守義務を法文上明確化した上で、委託先も認定基準や認定計画を遵守するよう、認定事業者に委託先に対する監督義務が課されます。

どんな委託に対し監督義務が課されるのか

発電事業の実施に必要な行為に係る業務委託全般。

  • 手続代行
  • プロジェクトマネジメント
  • 設計
  • 土地開発
  • 建設・設置工事
  • 保守点検
  • 設備解体
  • 廃棄・リサイクル
一般的な委託の例

出典:第3回 再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ 資料1

建設・設置工事など事業開始に係る委託だけではなく、運転開始後の保守点検や、将来の解体や廃棄・リサイクルの委託も含むため、これから発電事業をはじめる場合のみならず、すでに運転中の全ての認定事業者に影響があります。

委託先との契約に含めるべき事項

監督義務の履行状況を確認できるようにするため、認定事業者と委託先との間で書面で契約書を締結し、以下の項目を契約書へ記載することが求められます。

  • 契約書に委託先も関係法令の遵守を含めた認定基準・認定計画に従うべき旨を明確に記載する
  • 委託先から認定事業者に対する報告体制
  • 再委託時の認定事業者の事前同意
監督義務のイメージ

出典:第3回 再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ 資料1

認定事業者

認定基準・認定計画を
・自ら遵守すること
・委託先・再委託先が遵守するよう監督すること
法律上の義務として課される。

委託先・再委託先

認定事業者と委託先間で、認定基準・認定計画を遵守する契約を締結するため、契約上の債務として遵守する必要がある。

委託先から認定事業者に対する報告内容

報告形式は一律に定められてはおらず、認定基準・認定計画の遵守状況を報告するよう認定事業者が委託先に求めるものとされています。
今後ガイドライン等について、典型的な委託を事例に、望ましい報告の形式や、客観的資料の例が示される見込みです。

報告の頻度も一律に定められてはいませんが、

  • 定期的な報告(例:年1回)

に加え、

  • 災害発生時
  • 認定基準・認定計画に違反するおそれがある状況が生じた時

など有事の際の緊急報告を認定事業者が委託先に求めることが適切とされています。

監督義務の履行確認

認定事業者が委託先事業者を監督できているかどうかの確認については、認定事業者から経済産業大臣に対する定期報告で委託の実態を報告することになります。

  • 委託契約書の有無
  • 委託契約の相手方
  • 委託契約の概要
  • 委託先から認定事業者に対する報告の内容

監督義務不履行があった場合

監督義務が適切に履行されていないおそれが発覚した場合には、必要に応じて報告徴収・立入検査が実施されます。
委託契約書の原本や監督義務の実情が確認され、監督義務の不履行が確認されたときは、指導・認定取消しといった厳格な罰則が予定されています。

まとめ

2024年度から発電事業者の責任が明確化されることをご紹介しました。
4月からすぐに影響がありそうなこととして、

  • 保守管理や草刈りなどの契約内容に本件を含める必要がある
  • 定期報告に本件を含める必要がある

が考えられます。
現時点ではガイドラインが示されるのを待つことになりますが、慌てずにすむよう、必要となりそうな書類の準備など、気に留めておくといいでしょう。

解説動画

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