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2023年11月30日〜12月13日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されたCOP28についてご説明します。
なんとなく環境問題を話し合う会議というイメージがあるものの、具体的にはよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
改めてCOP28とは何か、何を目的として開催されるのか、何が決まったのか、などをご紹介します。

COPとは

「COP(コップ)」はおよそ200の国・地域が気候変動問題を話し合う国際会議で、毎年開催されます。「COP」=「Conference of the Parties(締約国会議)」の略で、今回は28回目ですので「COP28」と呼ばれます。

始まりは1992年に採択された「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」。温暖化防止のため、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的としており、現在198の国・地域が締結しています。この条約を締結した国と地域が参加し、温暖化防止に対する具体的な目標やルールを決めるのがCOPです。

よく耳にする「京都議定書」や「パリ協定」といった国際的で具体的なルールも、COP3(京都市開催)やCOP21(パリ開催)で採択されてきました。

京都議定書
先進国各国が、二酸化炭素などの温室効果ガス排出をどれだけ削減するか、法的拘束力のある数値目標などを定めた。(COP3)
パリ協定
世界の平均気温の上昇をヨーロッパの産業革命の時期から2度未満、可能であれば1.5度に抑える努力をすることを目標に掲げた。(COP21)

パリ目標の進捗確認「グローバル・ストックテイク(GST)」

各国がパリ協定に基づき気候変動対策の目標を立てましたが、世界全体の進捗状況を評価する仕組みが「グローバル・ストックテイク」です。
グローバル・ストックテイクの実施で、対策の強化や軌道修正につながることが期待されています。
COP28で初めて実施され、これから5年に1度実施されます。

COP28での合意事項

「損失と損害(ロス&ダメージ)」基金制度

2022年にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27で、干ばつや洪水など気候変動による被害を受けた途上国を支援する基金を設置することが決まりました。しかし誰の負担で、誰が受け取るのかなど、具体的な制度の中身はCOP27では決まらなかったため、COP28での議題として注目されていました。
開催初日の11月30日に基金制度について大枠で合意がなされました。

ポイント

  • 経済基盤やインフラが脆弱で、海面上昇など気候変動の影響が大きい途上国を支援する。
  • 基金を世界銀行のもとに4年間設置し暫定的に運営する。
  • 基金の規模や制度の詳細は今後決定する。
  • 先進国の官民に対し拠出を強く要請するが、義務化は見送り。
    • 議長国であるアラブ首長国連邦(UAE)が1億ドル(約148億円)を拠出することを表明
    • ドイツが1億ドル、アメリカが1,750万ドル(約25.9億円)を拠出することを表明
    • 日本が1,000万ドル(役14.8億円)を拠出することを表明

世界の再エネを拡大「2030年に3倍」合意

再生可能エネルギーのさらなる導入策が協議され、2030年までに世界の再エネ設備容量を3倍に拡大することについて、日本を含む130カ国が合意しました。
9月に国際エネルギー機関(IEA)が、「パリ協定」に基づき気温上昇を1.5度以内に抑えるためには、2030年までに再エネの設備容量3倍に拡大することが必要と提言したことを受け、COP28でも主要な議題として取り上げられました。
約200カ国が参加するCOPの最終合意文書へ明記されることで、世界のさらなる再エネ普及が期待されます。

ポイント

  • 2030年までに世界の再エネ容量を少なくとも1万1000ギガワット(110億キロワット)に増やす。
  • エネルギー効率を2倍にする。

10年で化石燃料からの脱却を加速

議長国であるUAEが12月11日に出した草案では「化石燃料の削減」の表現にとどまり、当初の案では明示されていた「化石燃料の段階的廃止」が盛り込まれなかったことで、欧米の先進国や島しょ国などから大きな反発がおこりました。閉幕予定の12月12日には合意が得られず、会期が延長されました。
会期を延長し採択された合意文書では、「段階的廃止」は明記されず、「2030年頃までのおよそ10年で化石燃料からの脱却を加速する」ことが盛り込まれ、合意に至りました。
表現が弱められた形での合意となりましたが、化石燃料に言及し、使用を減らすことを明確に示したことは評価する声が上がっています。

ポイント

  • 欧米や島しょ国などは「化石燃料の段階的廃止」の明記を求めていた。
  • 中東の産油国は 「化石燃料の段階的廃止」の明記に反対していた。
  • 「2030年頃までのおよそ10年で化石燃料からの脱却を加速する」を盛り込み合意に至った。

以上、COP28についてご紹介しました。
温暖化ガス排出量は減っておらず、予想を上回るペースで温暖化も進んでいるなど、対策が急務となっています。
対策の中でも「2030年に世界の再エネを3倍に」に多くの国が合意したように、再エネが貢献できる力が大きいことが示された機会でもあると感じます。
これからも共に再エネのさらなる導入拡大に向けて、ともに努めてまいりましょう。

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