現在、経済産業省の再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会にて、固定価格買取制度(FIT)見直しの議論がされています。
9月25日に開催された第2回の委員会では、現状のFITの課題の1つである太陽光発電設備の「認定済み・未稼働」案件増加に対して、今後の対応が検討されましたのでご紹介します。
平成24〜25年度認定の低圧・分割案件も聴聞・取消の対象に?
現在の制度では、設備認定を受けた50kW未満の低圧太陽光発電設備は、認定の失効期限がなく、未稼働に対する聴聞も行われていません。
これに対し、平成24〜25年度に認定された400kW以上を分割した50kW未満の設備で未稼働の案件に対して、今後聴聞を実施し、2年をメドに聴聞・取消を実施する案が検討されています。
※平成26年度以降は、同一の事業地の発電設備を50kW未満の複数の設備に分割して発電事業を行うことが認められなくなったため、分割案件はありません。
対象となる、平成24〜25年度に認定された50kW未満の分割案件(合計して400kW以上となるもの)は約6.3万件(※1)もあり、2年をメドに聴聞・取消を進めるということですので、今後急激に取消が進むと考えられます。
資料によると聴聞体制の強化と手続きの効率化等によって、手続きを加速するということです。
※1 資源エネルギー庁資料「固定価格買取制度の手続の流れについて」より
認定取消の背景
設備認定を受けた後、長期にわたり事業を開始しない案件の「認定取り消し・失効」が進められるのは、下記に挙げるFITの課題解消につなげる目的があります。
- 設備認定時から時間が経過し、太陽光発電設備の導入コストが低下した時に運転開始しても、過去の高い調達価格(買取価格)が保障されていることで、発電事業者に過剰な利益が生じる
- 発電事業者の過剰な利益の分、再エネ賦課金が増加し、国民(電気の需要家)に過剰な負担が生じる
- より低コストで導入可能な後発案件の参入や、太陽光発電以外の再生可能エネルギー発電の系統接続が阻害されている
これまでの取り組み
固定価格買取制度が始まった2012年から、今回の認定取消検討に至るまでの動きを以下にまとめます。
平成24年度(2012年度)
【買取価格】10kW以上:40円+税、10kW未満:42円、10kW未満(ダブル発電):34円
平成25年度(2013年度)
【買取価格】10kW以上:36円+税、10kW未満:38円、10kW未満(ダブル発電):31円
設備認定取消の動き
認定後、一定期間を経過しても土地や設備を確保しない案件数が膨らみ、この年の9月から、平成24年度中に認定を受けた運転開始前の400kW以上の太陽光発電設備を対象に、法に基づく報告徴収を実施。この結果をふまえ、建設場所や設備が未決定の案件については、段階的に認定の取消が行われました。
平成26年度(2014年度)
【買取価格】10kW以上:32円+税、10kW未満:37円、10kW未満(ダブル発電):30円
失効期限付きに
認定の条件として、50kW以上の太陽光発電設備に対し、以下のとおり期限が設定されました。
- 設備認定を受けた翌日から180日以内に、設置場所及び設備を確保した旨の証拠書類を提出しなければ、当該認定が失効。
- 電力会社による連系承諾がなされないとの理由で、設置場所及び設備の確保が遅れた場合には、最大で180日の期限延長(認定後、合計360日以内)が認められます。
- しかし、その期限を越えてもなお、設置場所及び設備の確保にかかる証拠書類が提出されなければ、如何なる理由であっても、当該認定が失効。(付与された買取価格も同時に失効)。
引き続き400kW以上案件に設備認定取消の動き
併せて、平成25年度(2013年度)に認定を受けた運転開始前の400kW以上の太陽光発電設備にも、法に基づく報告徴収を実施。この結果をふまえ、設置場所、設備が未決定の案件については、段階的に認定の取り消しが行われました。
平成27年度(2015年度)
【買取価格】10kW以上:29円+税(4/1〜6/30認定分)、27円+税(7/1〜認定分)
10kW未満:33円(出力制御対応機器設置義務なし)、10kW未満:35円(出力制御対応機器設置義務あり)
10kW未満(ダブル発電):27円(出力制御対応機器設置義務なし)、10kW未満(ダブル発電):29円(出力制御対応機器設置義務あり)
買取価格決定時期の後ろ倒し
2015年3月31日までに買取価格が決定していない太陽光発電設備については、2015年4月1日以降、認定を受けてから電力会社との接続契約が締結された日の買取価格が適用される形に変更されました。
ただし、発電事業者の責によらず、接続契約申込みの受領の翌日から270日以内に接続契約締結に至らない場合、270日を経過した日の買取価格が適用されます(270日ルール)。
失効期限付き認定
認定の条件として、50kW以上の太陽光発電設備に対し、以下のとおり期限が設定されました。
- 設備認定の翌日から270日以内に場所及び設備を確保した旨の証拠書類を提出しなければ、当該認定が失効。ただし、電力会社による接続契約の申込みの受領から接続契約締結までの期間が180日を超えた事実がある場合、期限は認定の翌日から起算して360日まで延長されます。
上記延長の場合、接続契約に要する期間が270日を超えた事実がある場合、期限は認定の翌日から起算して450日まで延長されます。 - 被災地域にて申請する場合、当初から、認定日の翌日から起算して450日後が失効期限となります。(上記の接続契約に要する期間による延長は適用されない)
認定取消以外の未稼働案件の発生抑制に向けた検討事項
再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会では、設備認定取消以外にも買取価格が決定される、認定時期の見直し案も検討されています。
事業実施の可能性が高い案件を認定する方向に進むのは必至とみられ、低圧・分割案件の認定取消と合わせ、注目が必要です。
参考:固定価格買取制度の手続の流れについて | 資源エネルギー庁