今さら聞けない「出力制御」〜なぜ出力制御が必要なのか?〜

「出力制御」とは、電力会社から発電設備に対し、パワコンからの出力を停止または減らすよう要請して、発電設備からの出力をコントロールすることです。
せっかく晴れて発電できるのに出力できないなんてもったいない、なぜ制御しなくてはならないのでしょう。
今さら聞けない「出力制御」について、なぜ必要なのか?を中心にまとめます。

電気は需要と供給を常に一致させる「同時同量」が必要

電気は生産(発電)と消費が同時に行われ、基本的に貯めることができません。
刻々と変動している電力消費量に合わせて供給する電力量を常に一致させ続ける必要があります。

これを「同時同量」といい、電力会社の大切な役割の一つです。
電力会社では、予測される需要(電力消費)に応じて発電計画を決め、発電所の稼働や出力を調整して需給バランスを保っているのです。

この電気の需給バランスが崩れ、需要に対して供給が少ない(電気が足りない)と周波数が低下し、一方需要に対して供給が多い(電気が余る)と周波数が上昇します。周波数が保てなくなると、電気を使用する設備への悪影響があるほか、最悪の場合は大規模停電発生の恐れがあるため、瞬時瞬時の需給バランスを保つことが大切なのです。

電気の需給バランスイメージ

出典:環境省「電力需給調整システムについての検討」

FIT開始後の急激な太陽光発電の増加による混乱

固定価格買取制度が始まった2012年7月以降、太陽光発電が急激に増え、2014年9月には「このまま系統に接続し続ければ需要を供給が上回る」と、九州電力が突然系統接続の回答を保留することを発表しました。
続いて北海道、東北、四国、沖縄電力も新規の系統接続に対する回答を保留することを発表し、発電事業を検討する事業者等に大きな衝撃を与え、混乱が起こりました。これが一般的に「九電ショック」と言われている出来事です。

出力制御を行うことで、より多くの再エネを

電力会社は、需要に対して供給が多すぎる場合、出力の変更が比較的容易な火力発電の発電量を抑えること等により、供給量を絞り込みますが、それでもなお電気の供給が需要に対して多くなりすぎることが見込まれる場合は、再生可能エネルギーの発電量も抑えることが必要になってきます。

本来、太陽光や風力の発電量は天気により左右されるため発電量の調整ができません。
この場合、供給過多による停電等の事態を避けるためには、最も需要が少ない状況(電気をあまり使わない状況)を基準として、太陽光等の接続可能量を決めることとなり、出力制御を行う場合と比較して、系統への接続可能量が少なくなります。
一方、出力制御を行うことができれば、こうした制約が緩和され、低需要期を中心に出力制御を行い、高需要期には出力制御を行わずに発電ができることから、より多くの電力量の再生可能エネルギーを系統に接続することが可能となります。

こうした理由で出力制御が行われているのです。

電力の需給イメージ

出典:資源エネルギー庁「固定価格買取制度の運用見直し等について」

新電力に売電する場合も、出力制御は必要なのか?

「既存の電力会社(九州電力など)ではなく新電力に売電をするのであれば、出力制御は不要なのではないか」という疑問をよく聞きます。
再エネを買い取る新電力も存在しており、売電先が違うのでルールも異なるのではないか、ということです。

結論としては「新電力に売電する場合も出力制御は必要」ということになります。
電力網に接続する以上、売電先がどこであれ、その需給バランスをくずさないようルールを守らなくてはならないのです。

出力制御の対象の拡大

2015年1月25日以前は、500kW以上の大規模な発電設備に対し、日数単位(年間30日)で出力制御が行われていましたが、年間30日までの出力制御を行っても再生可能エネルギーを系統に接続することが難しい状況となりました。

この問題に対し、2015年の1月26日に再エネ特措法が改正され、「時間単位できめ細かく出力制御」「より小規模な設備へ出力制御の対象を拡大」することで、接続可能量を増やすこととなりました。

2015年4月1日以降に電力会社に接続申込が受領された案件からは、地域・設備容量によっては、出力制御に対応可能な機器の設置が義務づけられました。

電力会社ごとの状況(2019年4月時点)

九州電力では2018年10月から出力制御が実施されています。
四国電力、沖縄電力、中部電力も、出力制御対応機器への切替案内を送付するなど、具体的な出力制御実施に向けての手続きが進んでいます。

参考リンク
固定価格買取制度の運用見直し等について|資源エネルギー庁(PDF)

参考:出力制御の制度や対応機器について詳細は以下の記事をご覧下さい。

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