東京電力・中部電力・関西電力のエリアの低圧太陽光が2022年度以降に出力制御の対象に含まれることになりました。現時点では実施回数が少ないため影響は限定的ですが、その分提供される情報が少ないことから、勘違いをされたり放置されたりするケースが多いようです。オンライン化には手間や時間がかかることから、余裕があるうちに対策を講じることが得策です。ここでは必要な機器や手続きについてご紹介します。

オンライン出力制御と比較し、オフライン出力制御は経済的な精算が多く発生するためオンライン化をお勧めしています。
くわしくは、2023年春・オンライン代理制御の現状 の記事をご参照ください。

中三電の出力制御区分

接続契約申込 2015年1月25日まで 2015年1月26日〜2015年3月31日 2015年4月1日〜2021年3月31日 2021年4月1日以降
出力制御区分 旧ルール 新ルール 新ルール 無制限無補償ルール
出力制御上限 年間30日 年間360時間 年間360時間 無制限
認可容量ごと出力制御方法 500kW以上 現地操作orオンライン制御 オンライン制御 オンライン制御 オンライン制御
50kW以上500kW未満 被代理制御 or オンライン制御 被代理制御 or オンライン制御 オンライン制御 オンライン制御
10kW以上50kW未満 被代理制御 or オンライン制御 被代理制御 or オンライン制御 被代理制御 or オンライン制御 オンライン制御
10kW未満 当面、制御対象外 当面、制御対象外 当面、制御対象外 当面、制御対象外

10〜50kWの低圧太陽光発電の出力制御区分は以下のように整理されています。

  • 2015年1月25日までの接続申込…旧ルール
  • 2015年1月26日〜2021年3月31日の接続申込…新ルール
  • 2021年4月1日以降の接続申込…無制限無補償ルール

無補償で出力制御される上限はそれぞれ異なり、無制限無補償ルールではオンライン制御が義務付けられ、出力制御機器の設置が必要です。一方、旧ルールと新ルールは、「出力制御機器を設置せず、被代理制御で金銭的に精算する」または「出力制御機器を設置してオンライン制御」を選択することが可能です。
※被代理制御は、オンライン事業者がオフライン事業者に代わりに出力制御(発電停止)します。オンライン事業者による代理制御分は売電料金で精算されます。

出力制御機器が整っているのにオンライン化されていない発電所も

中三電の低圧太陽光の旧・新ルールは、2022年度以降に出力制御対象に加えられましたが、出力制御機器の設置義務はなく、送配電事業者からの案内もないようです。
一方、2015年以降は出力制御対応パワコンや、出力制御ユニット機能を備えた遠隔監視機器なども出回っており、出力制御を意識しないまま出力制御機器が整っているという発電所もあります。この場合は出力制御対応機器を設置している=オンライン化ができている、というわけではありませんので注意が必要です。

オンライン出力制御に必要な機器類の確認

出力制御のオンライン化には以下の機器が必要です。

  • 出力制御対応PCS
  • 出力制御ユニット
  • 通信機器
  • 通信回線

くわしくは 太陽光発電の出力制御まとめ をご確認ください。

オンライン化の手続き、作業

必要な機器が揃っていても、手続きが完了していなければオンライン化されていません。オンライン化の手続きについて紹介します。
具体的な手続きについては2023年7月時点で東電・中電・関電エリアにおいて明確に示されているものは少ないようです。一方で、九州電力送配電ではオンライン化の取り組みが進んでおり、手続き方法が示されています。各社による問い合わせ先や書式フォーマットは異なりますが、基本的な事項は変わらないため、九州電力送配電の手続き方法を参考にし、詳細は各管轄の送配電事業者にお問い合わせください。
オンライン化の大まかなフロー図

手続きのポイント

送配電事業者から発電所IDが発行されないとオンライン化の作業は進められません。仕様確認依頼書、PCS等系列単位の諸元といった書類を提出し、オンライン化が可能な機器が設置されている(またはされる予定である)ことを送配電事業者が確認した後に発電所IDが発行されます。
発電所IDを既設の発電所へ登録するには、現地での登録作業が必要になります。遠方の発電所の場合、定期点検などの日程と合わせてやるのが効率的と思われます。余裕のあるときに早めに手続きを開始しておくことをお勧めします。

各送配電事業者の出力制御案内ページ

オンライン化に係る提出書類

出力制御機能付PCSの仕様確認依頼書

オンライン制御に同意しオンライン化の手続きを進めるために、発電所の基本的な情報を提出する書類。

記入項目 記入例
発電所名 ●●発電所
契約者名 江古 恵
設備ID A000000000
※認定を受けた際のID
発電場所 ●●県●●市●●1-2-3
出力制御機能付PCS切替完了(予定・実施)日 2023年●月●日
ルール毎の契約容量 新ルール 49.5kW
連絡先 住所 〒●●●-●●●●
氏名 ●● ●●
電話  ●●●-●●●-●●●●
e-mail ●●●@●●●

PCS等系列単位の諸元一覧

設置している機器、または設置予定の機器を記入し、オンライン出力制御機器として認証を受けているかどうかを電力会社にて確認するための書類。

記入例

  • オムロン製パワコン 5.5kW(KPMシリーズ)×9台 = 49.5kW
  • NTTスマイルエナジー エコめがね全量モバイルパックRS

PCS等系列単位の諸元一覧の記入例

出力制御機能付PCSの切替完了届

工事や設定が完了したことを伝えるための書類です。これを受けて送配電事業者が出力制御実行システムへの登録へ進めます。記入する内容は、出力制御機能付PCSの仕様確認依頼書とほとんど同じです。

オンライン化にあたり知っておくべきこと

通信途絶=発電量減

オンライン化すると、インターネットを通じて自動的に必要最低限の出力制御となる最新スケジュールを取得し、自動で制御が実行されます。もし通信が途絶えた場合は最新スケジュールが取得できず、出力制御量が増大するため注意が必要です。

出力制御ユニット故障=発電停止

オンライン化すると、出力制御ユニットがPCSの出力をコントロールするため、
・出力制御ユニットが故障した場合、
・出力制御ユニットとPCSの接続が途絶えた場合
は発電が停止するため注意が必要です。
オンライン出力制御が実施されると、制御分は売電が減少しますが、通信や出力制御ユニットのトラブルに気付かないとそれ以上に大きな売電損失が出ます。トラブルに早期に気付くことが一層大切となりますので、通信の死活や出力制御機器の状況を遠隔監視できる機能を持つ機器をおすすめします。

参考:出力制御対象の太陽光発電設備に「遠隔監視」がマストな理由

代理制御の精算は数ヶ月遅れ

オンライン化が完了すると、オフライン事業者が行うべき出力制御をオンライン事業者が代理で実施し、その代理制御した分の対価を発電料金と一緒に受け取ることになります。
この精算は、代理制御を行った月の発電料金支払いと同時に行われるわけではなく、数ヶ月後に精算されるため注意が必要です。一般的には、代理制御を実施した月の翌々月検針分に反映されるとのことで、通常より2ヶ月ほど遅れる、ということをあらかじめご認識ください。

まとめ

  • 中三電の場合は、出力制御対応機器が付いていても、オンライン化されていないケースが多い。
  • オンライン化の手続きは、電力会社さんに書類の提出が必要。
  • オンライン化を完了するには現地での設定が必要。
  • オンライン化した後、出力制御ユニットの取り扱いに注意が必要。
  • オンライン化の後、代理制御精算金が入るまでに数ヶ月タイムラグがあるため注意が必要。
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