大規模な太陽光発電設備といえば“固定価格買取制度(以下FIT制度)で売電”というイメージがあります。
しかし近頃は“自家消費”のニーズが高まっていることをご存じでしょうか?
工場などの事業施設で自家消費型の太陽光発電システムが導入される事例が増加しています。

今回は全量自家消費型の太陽光発電が注目されている理由についてご紹介します。また太陽光エネルギーを自家消費運用するメリットと、その事例についても見ていきましょう。

全量自家消費型の太陽光発電が増えている背景

FIT制度による買取価格の下落と電気代の上昇

太陽光発電電力の買取価格は年々下がっています。

例)10kW以上の太陽光発電の買取価格の推移
平成24年度 40円+税
平成25年度 36円+税
平成26年度 32円+税
平成27年4/1~6/30 29円+税
平成27年7/1~ 27円+税
平成28年度 24円+税
平成29年度 21円+税

一方FIT制度による買取電力量は増加するため、月々支払っている電気料金に含まれる「再生可能エネルギー賦課金」は上昇します。

いずれFIT制度による買取価格は、電気代を下回ると見られています。
「買うよりも創る(発電する)方が経済的」といった時代が目前にせまっていることから、自家消費型の太陽光発電システムが注目されているのです。

「出力制御」で売電量は不透明に

再生可能エネルギーを今後も増やしつつ、電力系統へ流れ込む電力量をコントロールするため、低圧太陽光も含めて「出力制御」の対応が進められてきました。
参考:今さら聞けない「出力制御」〜なぜ出力制御が必要なのか?〜

出力制御対象の発電設備は、電力会社からの要請があれば売電をストップしなくてはなりません。
発電するエリアや契約する時期によっては、無制限の出力制御要請を受け入れる約束で接続契約を行うことになります。
実際にどれほど出力制御され売電収入が減るのかまだ分かりませんが、売電によって投資回収するモデルにはマイナスの影響があるでしょう。

出力制御は売電する電力を対象に行われるものですので、自家消費型のシステムでは発電をし続けられます。電力会社や電力系統の事情に左右されずに発電しつづけられるので、低リスクと言えるでしょう。

改正FIT法に見る国の再生エネルギー方針

経済産業省を筆頭とする国のエネルギー政策では、再生可能エネルギーのシェア拡大と、賦課金増加による国民負担の軽減という2つの目標が掲げられています。

日本はかねてより、再生可能エネルギーが占める国内電力の電源構成比率を増加させなければならないという課題を抱え続けてきました。2015年に締結されたパリ協定によって、日本は2030年までにCO2排出量を26%削減するという課題を抱えており、再生可能エネルギーの普及は急務とされています。加えて地下資源が乏しい日本では、エネルギー自給率約7%という現状を打破するために再生可能エネルギーが注目されているのです。

一方で、固定価格買取制度で再生可能エネルギー設備を普及させるほどに、電力利用者から徴収される「賦課金」も増加していってしまうというジレンマも抱えています。現在の再生可能エネルギー技術は投資に見合った利潤を生み出せていないものが多く、その開発資金は賦課金という形で国民に委ねられています。売電型太陽光の普及により、2012年度に1kW当たり0.22円であった賦課金は、2016年には2.25円まで上昇すると見られているのです。

これらの課題を解消する手段のひとつとして期待されている技術が、家庭や企業で使用する電力を再生可能エネルギーの自家消費によって補うというものです。自家消費型の太陽光発電技術は、CO2削減・エネルギーの自給自足を実現する手段、そして国民の賦課金負担を軽減するための手段として位置づけられています。

太陽光電力を全量自家消費する6つのメリット

最大需要電力の削減で電気代カット

産業用電気料金プランは、年間の最大電力使用量(デマンドといいます)を基準にして決定します。デマンドが大きいと、基本料金が高くなります。
繁忙期の工場稼働コストや夏季の空調利用が電力需要のピークを押し上げている場合、自家消費型太陽光発電システムを導入することで、年間の最大需要電力の削減(デマンドカット)が可能です。
電力消費量の大きい工場などでは大きなコストダウンが見込めます。

施設費用の1/3~2/3の補助金を得られる

自家消費型太陽光発電システムを導入する際は、「再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業」※を利用することができます。(※平成29年度の場合)
この事業を利用すれば、民間事業者のみであれば対象費用の1/3の補助金を、地方公共団体と連携導入したり、団体の指定を受けて導入した場合は費用の2/3を賄うことができます。

参考:再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業 | 再生可能エネルギー事業支援ガイドブック(web版)

再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業以外に、補助や助成金を設けている自治体も多く、自家消費型の太陽光発電システムを検討中の方は要チェックです。

中小企業の節税対策になる

2017年4月に施行された「中小企業経営強化税制」を利用すれば、自家消費型太陽光発電システムにかかる固定資産税軽減を図ることが可能です。
10kW以上を生み出す産業用太陽光発電システムは、その利用目的が売電か自家消費かにかかわらず、収益を生み出す「事業用資産」として見なされ固定資産税の課税対象となります。自家消費型太陽光発電システムは、“生産性を高めるための機械装置”として指定されています。経営力向上計画に基づいて申請し国の認定を受ければ、即時償却または税額控除(取得価格の10%または7%)のいずれかを選んで適用できる可能性があります。なお「中小企業経営強化税制」の場合は、即時償却または税額控除びいずれかの選択適用が可能です。

参考:知って役立つ!使ってトクする!税制改正(平成29年度版) | 中小企業庁

売電型より初期投資の回収が早い可能性も

電気代削減の効果が大きく、補助率の高い補助事業があり、節税にもなるということで、自家消費型太陽光発電は経済的なメリットも大きいのです。
場合によってはFIT制度で売電するよりも初期投資の費用が短くなる場合もあります。

工場など電気を消費する施設へ太陽光発電システムを設置する場合は、売電型と自家消費型のどちらが投資回収が早いかシミュレーションしてみるとよいでしょう。

企業の環境に対する取り組みとして

自家消費型太陽光発電は、環境への取り組みとして評価されるポイントのひとつです。海外で支社や工場を展開する場合、その企業の環境問題対策の有無によって融資が決定するケースも見られます。
また2017年、米フロリダ州のハリケーン被害によって、ウォルマート社などを始めとする企業が膨大な損失を被りました。こうした地球環境の変化から、環境保全をビジネスにおける長期的な投資として捉える風潮があるのです。

全量自家消費型太陽光発電システム 2つの導入事例

自家消費型太陽発電の事例1:トーホー・北関東(食品卸)

栃木県宇都宮市に本社を構える「トーホー・北関東」は、トーホーグループの業務用食品卸売り業務を担う企業です。2013年よりトーホーは自社グループをあげて太陽光発電システムの導入を進めてきましたが、自家消費型の設備を導入するのは今回が初の試みとなりました。
約7500万円の資金をかけて自社施設屋根に1036枚の太陽光パネルを設置、2017年11月末日に施工を完了、同日中に発電を開始しました。約1700平方mに及ぶ同施設の出力規模およそ280kWh、年間想定発電量はおよそ24万kWとしています。太陽光発電システムで創り出した電力の全量を自家消費で利用し、自社施設で使用する電力の20%を賄う見積もりがなされています。

自家消費型太陽発電の事例2:太陽ホールディングス(製造)

プリント配線板開発・製造業を手掛ける太陽ホールディングスは、埼玉県嵐山町にある子会社 太陽グリーンエナジーの再生可能エネルギー事業として水上太陽光発電所を開発しました。隣接する工業団地調整池の上に建設された「嵐山大沼水上太陽光発電所」は、2017年12月上旬に開所を迎えました。
この施設が生み出す電力は、出力規模およそ318kW、年間想定発電量およそ33万kWに上る見込み。当所で発電された電力は、同じく水上発電所に隣接する子会社 太陽インキ製造の工場使用電力の約5%を賄う見積もりです。

全量自家消費型の太陽光発電は、中長期で見れば自社電力施設という資産を形成することが可能で、地方に製造拠点などを構える企業こそ大きな利益を享受することができます。省庁や行政の補助金制度には期限が設けられているため、自家消費型の導入を検討されている方はお早めの判断をおすすめします。