再エネ電力を調達するためにFIT申請しない野立て太陽光発電所を買い求めるビジネスが増えていますが、こうした非FITの発電事業では、FITでは馴染みのなかった「発電量調整供給契約」が必要となります。この「発電量調整供給契約」について、その内容と背景を紹介します。
※非FIT太陽光というと、FIT認定を取得しない全ての太陽光発電事業が相当しますが、この記事では小売電気事業者などが再エネ電源の調達のために集める、オフサイトのFIT認定を取得しない太陽光発電所を指して「非FIT」「Non-FIT」と呼びます。
発電量調整供給とは
発電した電力を需要家へ販売するには、一般送配電事業者の持つ送配電網を利用して届ける必要がありますが、これを提供するのが一般送配電事業者の提供する「電力小売託送サービス」です。
※一般送配電事業者とは、送配電用の電柱や電線、変電所などの設備を持ち、それらを使用して電気を送る事業者のことで、北海道電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド、関西電力送配電などを指します。
今回紹介する「発電量調整供給」は、電力小売託送サービスのひとつです。
託送供給 | 契約者から電気を受電し、送配電ネットワークを介して供給する | 接続供給 需要者は供給区域内にあり、計画電力量との過不足を調整して需要者へ供給する場合。 |
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振替供給 需要者は供給区域外にあり、会社間連系点へ供給する場合 |
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電力量調整供給 | あらかじめ通知された計画電力量との過不足を調整して供給する | 発電量調整供給 発電計画どおりに供給する場合 |
需要抑制量調整供給 需要抑制量計画どおりに供給する場合 |
一般送配電事業者のWEBサイトでの発電量調整供給の説明によると、
発電量調整供給とは、発電契約者(発電者)が当社の託送供給に係る小売電気事業等のために発電した電気を当社が受電し、当社の送配電ネットワークを介し、その受電した場所において、発電電力量に過不足量の補給および余剰購入調整し、発電契約者があらかじめ当社に申し出た量(発電量調整受電計画電力量)の電気を供給することをいいます。
出典:北陸電力送配電 発電量調整供給の概要
大まかに言うと、連系点で一般送配電事業者が取り付けた計量器で発電電力量が計測され、発電計画と差分があれば、不足分を補給、または余剰分を吸収するなどして計画どおりの電力量を供給する、というサービスです。
「発電量調整供給契約」が長いため、よく「はっちょう」と呼ばれます。
なぜ発電量調整供給契約が必要か
FIT売電をする際は締結しない「発電量調整供給契約」がなぜ必要になるのか、それはFITでは対応する必要がなかった「計画地同時同量」が、非FITで売電する発電事業では求められるためです。
FIT認定を受けた発電事業の場合、一般送配電事業者に買い取り義務があるため、買い取り先を探す必要がありません。一般送配電事業者と買取価格や期間、開始日を定める「特定契約」を締結します。
一般送配電事業者とは特定契約のほかに「接続契約」を結び、電力系統と連系します。
「特定契約」「接続契約」を合わせて「電力受給契約」を締結します。
FIT認定を受けない非FIT発電事業の場合、発電電力の買い取り先を探す必要があります。
また「計画値同時同量」の対応も必要となります。(計画値同時同量は後ほど説明します)
一般送配電事業者と、電力系統に連系するための「工事費負担金契約」とともに、計画値同時同量への対応の1つとして「発電量調整供給契約」を締結します。
計画値同時同量
現時点では電気を大規模に貯めることが困難であるため、電力消費量に合わせて供給する電力量を一致させ続ける必要があります。
計画値同時同量とは、需要と供給のバランスをとるための制度です。
発電契約者が発電計画を、需要側の契約者が需要調達計画を策定し、広域機関(OCCTO)を通じて一般送配電事業者へ提出します。
計画と実績との差分(=インバランス)が生じた場合は、一般送配電事業者が不足分を補給したり、余剰分を購入するなどして調整します。
インバランスを発生させた(=計画と実績をズレさせてしまった)発電側や需要側はその対価としてインバランス料金を支払う、というしくみです。
発電事業者それぞれが発電契約者となる必要はなく、バランシンググループに参加し、その代表者(小売電気事業者の場合が多い)が発電量調整供給契約を結んだり、グループ全体の発電計画策定、提出を行うのが一般的です。
バランシンググループとは
インバランス(=計画と実績との差分)を算定する単位となる、複数の事業者からなるグループのこと。発電バランシンググループ、需要バランシンググループがあります。略して「BG」。代表者契約制度とも。
発電バランシンググループの場合、1つ(または複数)の発電バランシンググループのうちの1社が代表者である「発電契約者」として、1つの「発電量調整供給契約」を一般送配電事業者と締結します。発電計画の策定や提出もこの発電量調整供給契約単位で行います。インバランス料金も代表の1社にまとめて請求されます。
計画とずれたらペナルティ
発電計画とのズレに対するペナルティとして、計画値に対して供給する電力が足りないときは高い単価で補給され、計画値に対して供給する電力が多い(余る)ときは安い単価で買い取られるため、ズレる量が大きくなればインバランス料金がかさみます。精度の高い計画、発電量の調整へのインセンティブとなります。
FIT発電は特例で免除されていた
FIT制度を利用する発電事業の場合「FITインバランス特例制度」があるため、発電事業者が発電計画を立てたり提出する必要はありませんが、非FITでは必要となります。
それに伴い「発電量調整供給契約」を締結することとなります。