電気料金は、基本料金、電力量料金、燃料費調整額、再エネ賦課金 から成り立っています。
この中から今回は「燃料費調整額」についてご説明します。
燃料費調整額とは
燃料価格の変動を電気代に反映する料金。
燃料費調整単価(円)に使用電力量(kWh)をかけた金額が電気料金に含まれています。
日本では火力発電が多く、またその燃料を輸入に頼ることから、
・燃料(原油、LNG、石炭)の価格
・為替レート
によっても発電コストが大きく変動しますが、こうした変動は電力会社の企業努力だけではなくすことができません。
経済情勢の変化を迅速に料金に反映させるとともに、事業者の経営環境の安定を図ることを目的に、 燃料費調整制度が導入されました。
電気代内訳のうち、基本料金や電力量料金から外部化した 燃料費調整額 で、「現在の電気料金を設定した時の燃料費」と「現時点の燃料費」の差分をプラスまたはマイナスして調整します。
燃料費調整単価の計算方法
原油・LNG・石炭それぞれの貿易統計価格などの3ヶ月の平均価格である 平均燃料価格 から、現在の料金を設定した際の平均燃料価格である 基準燃料価格 を引いた値に、基準単価などの係数をかけて算出されます。
基準燃料価格(料金設定時の燃料価格)より平均燃料価格(今の燃料価格)が安い局面では、マイナス調整となります。
電力会社により燃料を調達する費用等が異なりますので、電力会社ごと、低圧/高圧別に算出されます。
計算式を覚える必要はありませんが、
料金設定時よりも燃料の価格が上がったら燃料費調整単価も上がり、
燃料の価格が下がったら燃料費調整単価も下がる、
式になっていることを覚えておいてください。
2022年は燃料費調整単価が上昇
2022年はロシアによるウクライナ侵攻などの影響で燃料価格が高騰しました。負担を軽減するため、国による補助(燃料費調整額値引き)が実施されています。
燃料費調整額を値引きする国による補助については 2023年、電気代は下がるのか?上がるのか? でもご紹介していますのでご参考になさってください。
燃料費調整額での調整に上限がある料金プランも
燃料価格がどれだけ高くなってもいくらでも電気料金に反映できるわけではなく、燃料費調整単価の算出に用いる平均燃料価格に上限が定められている料金プランもあります。
平均燃料価格に上限がある料金プラン
規制料金は上限があり、自由料金には上限がありません。
平均燃料価格の上限はいくらか
上限がある料金プランの場合、燃料費調整単価の算出に反映できる平均燃料価格の上限は、基準燃料価格(現在の料金設定の前提となる燃料価格)の1.5倍です。
燃料費調整額の上限に到達したらどうなるか
上限が設定されている場合、燃料価格が上昇しても基準燃料価格が上限値で据え置かれ、電気料金に転嫁できません。
上限ありの場合の燃料費調整単価の算出例
東京電力エナジーパートナーの低圧供給の燃料費調整単価(特定小売供給約款の適用を受ける場合、2022年10月・関東への供給の場合)
2022年5〜7月の平均燃料価格 | 79,000円/kl |
---|---|
基準燃料価格 | 44,200円/kl |
上限(基準燃料価格×1.5) | 66,300円/kl |
基準単価(高圧供給) | 0.224円/kWh |
上限がなければ8.07円/kWhですので、差額は1kWhあたりー2.94円になります。
電気料金に転嫁できない部分は電力会社の負担となり、経営を圧迫することとなります。
こうした負担に電力会社が耐えられなくなったら、規制料金の値上げに向けて動くことになります。
2023年4月時点で大手電力会社10社のうち7社が規制料金値上げを国に申請しています。
平均値上げ率※ | 申請受理日 | 値上げ実施予定日 | |
---|---|---|---|
東北電力 | 25.2% | 2022年11月24日 | 2023年4月1日 |
中国電力 | 30.6% | 2022年11月25日 | 2023年4月1日 |
四国電力 | 27.9% | 2022年11月28日 | 2023年4月1日 |
沖縄電力 | 40.9% | 2022年11月28日 | 2023年4月1日 |
北陸電力 | 46.9% | 2022年11月30日 | 2023年4月1日 |
東京電力EP | 17.6% | 2023年1月23日 | 2023年6月1日 |
北海道電力 | 25.2% | 2023年1月26日 | 2023年6月1日 |
燃料費調整単価の上限については、以下の記事、動画でも詳しくご説明しています。
燃料価格高騰で電気料金が上限に到達。上限撤廃の動きも【燃料費調整制度】|エコめがねエネルギーBLOG
燃料費調整単価が上限到達?! 電気代への影響を徹底解説!|エコめがね営業ここだけの話 | YouTube
今さら聞けない電気料金
今さら聞けない電気料金(1)電気料金の区分
今さら聞けない電気料金(2)基本料金
今さら聞けない電気料金(3)燃料費調整額(←当記事)
今さら聞けない電気料金(4)再エネ賦課金
今さら聞けない電気料金(5)託送料金