新型コロナからの需要回復、ロシアによるウクライナ侵攻や急激な円安などによる燃料価格の高騰により、電気代も上昇しています。

「大手電力10社、規制料金の上限到達」「大手全10社の電気料金が上限到達」「大手電力、自由料金プランで相次ぎ上限撤廃」といった「電気料金の上限」に関するニュースを最近よく見かけますが、「上限」とはどういうことかご存知でしょうか。
電気料金の上限とはなにか、誰に影響があることなのか、などをご説明します。

電気料金の上限とは

大手電力10社で到達した「電気料金の上限」とは、燃料価格の変動分を電気料金に転嫁する「燃料費調整制度」の上限のことです。

燃料費調整制度とは

日本では火力発電が多いため、燃料(原油、LNG、石炭)の価格によって発電コストが大きく変わります。燃料費調整制度とは、燃料価格の変動を電気代に反映させるしくみです。燃料の価格が上がれば燃料費調整額も引き上げられ、燃料の価格が下がれば燃料費調整額も引き下げられます。プラスの額だけでなく、燃料価格が下落する際はマイナスの額になることもあります。
燃料費調整額は、基本料金や電力量料金、再エネ賦課金と合わせて電気料金として請求されます。
電気料金=基本料金+(電力量料金±燃料費調整額)+再エネ賦課金

燃料費調整単価はいくらか

燃料費調整制度として定められており、単価は電力会社が決めるのではなく、3ヶ月の貿易統計価格に基づき自動的に2ヶ月後の燃料費調整単価が算定されます。
燃料費調整単価の反映スケジュール

貿易統計実績をもとに算定する燃料価格の3ヵ月間平均値「平均燃料価格」と、国に現在の電気料金を申請した際の燃料価格「基準燃料価格」の差額を元に「燃料費調整単価」が算出され、電気料金の請求に使用されます。

基準燃料価格より平均燃料価格が高いとき(燃料価格が高い時期)の燃料費調整単価の計算式

燃料費調整単価=(平均燃料価格-基準燃料価格)×基準単価÷1000

基準燃料価格より平均燃料価格が安いとき(燃料価格が安い時期)の燃料費調整単価の計算式

燃料費調整単価=(基準燃料価格-平均燃料価格)×基準単価÷1000

【算出例】東京電力エナジーパートナーの高圧供給の燃料費調整単価(2022年10月・関東への供給の場合)

2022年5〜7月の平均燃料価格 79,000円/kl
基準燃料価格 44,200円/kl
基準単価(高圧供給) 0.224円/kWh

東京電力エナジーパートナーの高圧供給の燃料費調整単価(2022年10月・関東への供給の場合)の計算式

平均燃料価格が上がるほど燃料費調整単価が上がる計算式であるということがお分かりいただけると思います。

上限がある契約も

燃料費調整単価の算出に用いる「平均燃料価格」は電力会社ごとに異なりますが、いくらでも電気料金に反映できるわけではなく、電気料金に反映できる平均燃料価格に上限が定められています。(上限のない料金プランもあります。)
東京電力エナジーパートナーの高圧供給の燃料費調整単価の算出例をご紹介しましたが、高圧、特別高圧で受電する契約の場合は上限はありませんが、低圧で受電する契約には電気料金に反映できる平均燃料価格に上限が設けられている場合もあります。

電気料金に反映できる平均燃料価格の上限

上限がある料金プランの場合、燃料費調整単価の算出に反映できる平均燃料価格の上限は、基準燃料価格(現在の料金設定の前提となる燃料価格)の1.5倍です。
上限:基準燃料価格の1.5倍

【上限ありの場合の燃料費調整単価の算出例】東京電力エナジーパートナーの低圧供給の燃料費調整単価(特定小売供給約款の適用を受ける場合、2020年10月・関東への供給の場合)

2022年5〜7月の平均燃料価格 79,000円/kl
基準燃料価格 44,200円/kl
上限(基準燃料価格×1.5) 66,300円/kl
基準単価(高圧供給) 0.224円/kWh

上限ありの場合の燃料費調整単価の算出例
上限がなければ8.07円/kWhですので、差額は1kWhあたりー2.94円になります。

上限に到達するとどうなるのか?

新型コロナからの需要回復、ロシアによるウクライナ侵攻、急激な円安などによる燃料価格の高騰により、2022年10月の電気料金の時点では大手電力会社10社すべてが上限に到達する状況です。
上限のある料金プランでは、上限を超えて燃料価格が上昇しても電気料金へ転嫁できず、超過分は電力会社が負担することとなります。
上限を設けることで、燃料の価格が大幅に上昇する局面で消費者への影響を和らげる機能を持っていますが、こうした状況が続けば、電力会社の経営を圧迫する要因となり、電気の安定供給にも影響を及ぼしかねません。10社すべてが上限に到達するのは現行の燃料費調整制度開始後初めてのことで、異例の事態と言えます。

上限があるプランとないプラン

各電力会社の料金プランには、燃料費調整制度の上限がある料金プランと、上限がない料金プランがあります。
特別高圧(大規模工場など)…上限なし
高圧(中小規模工場、ビルなど)…上限なし
低圧(店舗、住宅など)…自由料金:上限なし/あり、規制料金:上限あり
※2022年9月時点では、電力会社によっては低圧・自由料金も上限がありますが、2022年中に上限の廃止が決まっています。

規制料金・自由料金

低圧の電気料金には「規制料金」「自由料金」の2種類があります。

  • 規制料金…小売自由化以前のプラン。料金変更には経産省の認可が必要です。
    例)東京電力エナジーパートナーであれば「従量電灯B」や「従量電灯C」など
  • 自由料金…小売自由化以降のプラン。電力会社の判断で料金変更できます。
    例)東京電力エナジーパートナーであれば「スタンダードプラン」や「くらし上手」など

規制料金には燃料費調整制度の上限があります。
自由料金は、電力会社/料金プランによって上限を設けているもの、設けていないものがあります。

電力会社ごと上限設定のあり/なし整理表(2022年9月時点)

  低圧 高圧 特別高圧
  自由料金 規制料金
北海道電力 上限あり 上限あり 上限なし 上限なし
東北電力 上限あり
東京電力 上限なし
中部電力 上限あり
北陸電力 上限なし
関西電力 上限なし
中国電力 上限なし
四国電力 上限あり
九州電力 上限なし
沖縄電力 上限なし

※沖縄電力も低圧・自由料金の上限はありませんでしたが、燃料価格高騰を踏まえた特別措置として2022年9月時点では上限が設けられています。

小売自由化後は規制料金が撤廃される予定でしたが、低圧の契約となる料金プランでは、消費者保護のための経過措置として、2022年9月時点では規制料金も存続しています。
本来、自由化によって競争が働き、多様で安価な料金メニューが望まれるところですが、燃料調整の上限がある規制料金の方が安価になりかねないという事態となっています。

【参考】2022年10月適用の燃料費調整単価(当該電力会社の供給エリア内の場合)

  低圧 高圧 特別高圧
  自由料金 規制料金
北海道電力 3.66 3.66 8.05 7.84
東北電力 3.47 3.47 9.12 8.82
東京電力 8.07 5.13 7.8 7.69
中部電力 5.36 5.36 6.47 6.38
北陸電力 8.28 1.77 7.81 7.71
関西電力 7.47 2.24 7.16 7.07
中国電力 11.56 3.19 11.04 10.71
四国電力 2.55 2.55 8.93 8.69
九州電力 5.74 1.86 5.49 5.4
沖縄電力 15.33(3.98) 3.98 14.79(3.84) 14.5(3.77)

※沖縄電力も低圧の自由料金の上限はありませんでしたが、燃料価格高騰を踏まえた特別措置として現在は上限が設けられています。

「上限撤廃」とは

自由料金は電力会社の判断で料金変更ができますが、契約内容によっては上限を設けていない電力会社/料金プランもあります。しかし昨今の燃料費高騰を受けて⾃由料⾦の上限をなくす「上限撤廃」の動きが活発になっています。

  • 北海道電力…2022年12月分の電気料金より低圧の自由料金の上限廃止。
  • 東北電力…2022年12月分の電気料金より低圧の自由料金の上限廃止。
  • 中部電力…2022年12月分の電気料金より低圧の自由料金の上限廃止。
  • 四国電力…2022年11月分の電気料金より低圧の自由料金の上限廃止。

東京電力、北陸電力、関西電力、中国電力、九州電力、は低圧の自由料金の上限は現時点ですでにありません。
沖縄電力も低圧の自由料金の上限はありませんが、燃料価格高騰を踏まえた特別措置として上限が設けられています。

参考:

上限のあり/なしで燃料調整単価はどれだけ違うのか

2022年中に大手10電力すべての低圧・自由料金の上限が廃止となります。
上限のあり/なしでどれだけ燃料費調整単価が変わるでしょうか。

2022年12月から上限撤廃される北海道電力の低圧供給(10月適用分)を例に試算してみましょう。

【算出例】北海道電力の低圧供給(10月適用分)を用いた試算

2022年5〜7月の平均燃料価格 79,000円/kl
基準燃料価格 37,200円/kl
上限(基準燃料価格×1.5) 55,800円/kl
基準単価(高圧供給) 0.197円/kWh

上限あり
(55,800ー37,200)✕0.197÷1,000=3.66円/kWh

上限なし
(79,800ー37,200)✕0.197÷1,000=8.39円/kWh

北海道電力は2022年12月に上限が撤廃されますので、現状の燃料価格が続くとしたら、1kWhあたり4.73円/kWhの差があります。低圧・自由料金で300kWh/月を使用しているとしたら、1,400円/月、17,000円/年ほどの値上げに相当します。

規制料金と自由料金、どちらが得か

燃料費調整単価について、上限のあり/なしでかなり差があるとお分かりいただけたと思います。電気を利用する立場からみると、規制料金が得なのではないかとお感じになる方も多いのではないでしょうか。自由料金のプランを利用している場合は、規制料金のプランへ変更したほうが得なのでしょうか。

小売自由化後、自由料金プランとして、ライフスタイルに合わせたさまざまな料金プランがリリースされました。電気をよく使う時間帯によってお得なプランや、利用機器・設備の状況に応じたプランなどがあり、燃料費調整単価の高低だけでは判断できません。

各小売電気事業者のホームページや電力比較サイトで、利用状況を入力してシミュレーションする診断ツールが公開されていますので、気になる方は試してみてはいかがでしょうか。

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