新しいエネルギーとして、現在「水素」が注目されています。エネルギー問題の解決につながったり、エネルギー供給の安定性の向上などにつながったりする「水素社会」。
ここでは、エネルギーとしての「水素」の仕組みや役割、そしてその利点などを紹介します。
なぜ水素が注目されているのか?
日本政府は2014年に定めた「エネルギー基本計画」で、新たなエネルギー源として水素を活用する方針をとるという決定をしました。
「水素」利用には多くの利点があります。
①二酸化炭素(CO2)を排出しない
水素発電では、燃料電池を利用して、水素と酸素を結びつけることで発電をおこなうのですが、水素は、酸素と結びついても水にしかならず使用する際に二酸化炭素を排出しません。
ただし、水素エネルギーを製造する段階で化石燃料を利用すれば二酸化炭素は排出されてしまいます。したがって、この利点は再生可能エネルギーを利用して水素エネルギーを製造した場合に限られます。
②省エネ
通常の発電ではおよそ60%のエネルギーが無駄になるとされています。しかし、水素による発電では、電気化学反応のためのエネルギー効率が極めて高いとされており、エネルギーロスを抑えることが可能になるのです。
③燃料電池による発電である
水素は燃料電池を使って発電するので、災害時などに緊急エネルギーとして活用できるというメリットがあります。
④ほぼ無限に作ることができる
水素は石油や液化天然ガス、バイオマスや下水汚泥の中など地球上のありとあらゆる場所に存在します。また水を電気分解することで取り出すことのできる水素は、半永久的に利用できるエネルギーであると言えるでしょう。
⑤運搬できる
電気で水を分解し水素にしておくことで、保存することが可能になり、また別の場所に運搬してエネルギーとして利用ができるようになります。
水素のエネルギーとしての活用例
家庭用燃料電池(エネファーム)
よくテレビなどでも紹介される、エネファーム。都市ガスやLPガスから水素を抽出し、酸素と結びつけることで発電します。また発電する際に発生する熱を使って給湯するなど、エネルギーをムダにすることなく活用するシステムのことです。
FCV(燃料電池自動車、Fuel Cell Vehicle)
自動車業界では、水素をエネルギー源にして走る自動車の開発が進んでいます。ガソリンや電気の代わりに水素を利用し走る車です。水素を補給できる水素ステーションの設置など、普及に取り組んでいます。
水素社会の課題とは
実現することでかなりのメリットを得られる「水素社会」ですが、そのためにはまだまだ多くの課題があります。
最大の課題はコスト面の問題でしょう。水素による発電のためには、化石燃料などから水素を抽出し酸素と結びつける必要があります。水素供給インフラの整備や水素の量産効果を向上させ、低コスト化させる必要性があるのです。
また前述した水素を供給する設備などを充実させることも課題のひとつであると言えます。水素を利用して走る自動車も、水素ステーションの普及がなければ実現は難しいものです。どちらも相手の普及が前提になるので、様子見が続いている状況。相互の共存を認識し一斉に普及させる必要性があると言えるでしょう。
まだまだ課題があるものの、普及させればたくさんのメリットが得られる水素社会。
再生可能エネルギーの普及や二酸化炭素排出量の削減のためにも、水素社会の実現は今後も注目されることになると思いますので、ここで紹介したことを参考にして、より理解を深めていってください。