追加情報:2019年3月29日に中国電力から出力制御対象の発電事業者さまに宛てて「太陽光発電(新・指定ルール)の出力制御に関する今後のお手続について」という書面が送付され、具体的な対応が必要となりました。
中国電力、出力制御の案内開始の記事をご参照ください。

中国電力は2018年7月11日に、太陽光発電が30日等出力制御枠に到達したと発表しました。
7月12日以降は、年間360時間を超えた無補償での出力制御に応じることを条件に接続契約を申し込む必要があります。

参考:太陽光発電設備の30日等出力制御枠への到達について | 中国電力

中国電力管内でこれから太陽光発電設備を作ろうとされている方、すでに運転中の太陽光発電設備のお持ちの方がたくさんおられると思います。中国電力の発表を受けて、今後どうしたらいいのか、設備の状況別にご紹介します。

目次

「30日等出力制御枠」ってなに?

「30日等出力制御枠に到達した」ため、今後は「時間無制限の出力制御への同意が必要」となったのですが、専門的な用語でもあり、本題の前に「30日等出力制御枠」「出力制御」について簡単に説明します。ご存知の方はこの項目を読み飛ばしてお進みください。

需要と供給のバランスを保つ必要がある

送配電系統の需要と供給のバランスを常に保つ必要があり、電力会社はこのバランスを保つ役割を担っています。バランスが崩れることにより、電気が不安定になったり、停電などの事故につながる恐れがあります。電気が足りないのもいけませんが、電気を作りすぎるのもいけないため、想定される電力消費に合わせて発電設備を作る必要があります。

より多くの再エネを系統に接続するために「出力制御」のしくみができた

需要を供給が上回らないようにするためには、最も電力消費が少ない状況に合わせて連系を受け入れることになりますが、「最も電力消費が少ない状況」は1年のうちのごく短い期間でしかなく、ほとんどの期間は余裕があるのです。

本来、太陽光発電の発電量は天候に左右されるため、発電量の調整ができませんが、系統の状況によって出力(発電)を制御できれば、より多くの再エネ発電設備が系統へ接続できるのです。

そこで容量ごとに上限時間を設けた出力制御に同意することを条件に系統への接続が認められてきました。

上限時間を超えて出力制御する必要が出てきた

「30日等出力制御枠」とは、「電力会社が出力制御の上限(30日や360時間)を超えて出力制御を行わなければ、送配電系統への接続が新たに受け入れられなくなる接続量」をいいます。
ここまでは上限時間を設けた出力制御でいける、という接続量が電力会社ごとに算定されています。
中国電力エリアではこのたびこの接続量(接続済+接続申込み済)を超えたため、これ以降接続申込みをする場合は、30日や360時間の上限時間を超えた出力制御に同意することが必要になった、ということです。

参考:各電力会社の30日等出力制御枠(太陽光発電)
北海道:117万kW(すでに超過)
東北:552万kW(すでに超過)
北陸:110万kW(すでに超過)
中国:660万kW(すでに超過)
四国:257万kW(すでに超過)
九州:817万kW(すでに超過)
沖縄:49.5万kW(2018年7月時点では未達。離島系統は超過している系統もある)

中国電力エリアの太陽光発電の出力制御対象

どういった条件の太陽光発電設備が出力制御対応をしないといけないのかを、容量ごとにまとめます。

10kW未満

平成27年(2015年)3月31日までに接続契約を申し込んだ場合
出力制御の対象外
平成27年(2015年)4月1日〜平成30年(2018年7月11日)までに接続契約を申し込んだ場合
出力制御あり。
年間360時間を上限に無補償で出力制御に応じる必要があり、出力制御対応機器の設置が義務付けられています。
※「出力制御対応機器」が何かという点は後ほど説明します。

10kW以上50kW未満

平成27年(2015年)3月31日までに接続契約を申し込んだ場合
出力制御の対象外。
平成27年(2015年)4月1日〜平成30年(2018年)7月11日までに接続契約を申し込んだ場合
出力制御あり。
年間360時間を上限に無補償で出力制御に応じる必要があり、出力制御対応機器の設置が義務付けられています。
平成30年(2018年)7月12日以降に接続契約を申し込んだ場合
出力制御あり。
時間は無制限に無補償で出力制御に応じる必要があり、出力制御対応機器の設置が義務付けられています。

50kW以上500kW未満

平成27年(2015年)1月25日までに接続契約を申し込んだ場合
原則として出力制御の対象外。
ただし電力会社の系統の状況によっては対象となる場合もあるため、詳しくは中国電力への問い合わせが必要です。
平成27年(2015年)1月26日〜平成30年(2018年)7月11日までに接続契約を申し込んだ場合
出力制御あり。
年間360時間を上限に無補償で出力制御に応じる必要があり、平成27年4月1日以降に接続契約申込が受領された発電設備は、出力制御対応機器の設置が義務付けられています。
平成30年(2018年)7月12日以降に接続契約を申し込んだ場合
出力制御あり。
時間は無制限に無補償で出力制御に応じる必要があり、出力制御対応機器の設置が義務付けられています。

500kW以上

平成27年(2015年)1月25日までに接続契約を申し込んだ場合
出力制御あり。
年間30日まで無補償で出力制御に応じる必要があります。
平成27年(2015年)1月26日〜平成30年(2018年)7月11日までに接続契約を申し込んだ場合
出力制御あり。
年間360時間を上限に無補償で出力制御に応じる必要があり、平成27年4月1日以降に接続契約申込が受領された発電設備は、出力制御対応機器の設置が義務付けられています。
平成30年(2018年)7月12日以降に接続契約を申し込んだ場合
出力制御あり。
時間は無制限に無補償で出力制御に応じる必要があり、出力制御対応機器の設置が義務付けられています。

太陽光発電設備の接続契約申込に係る出力制御の取扱いについて

出力制御対象の場合、何かしないといけないの?

30日等出力制御枠に到達しましたが、発電事業者さんは何か対応が必要なのか、気になるのではないでしょうか?

2018年7月20日時点では、出力制御対応機器の設置が済んでいなくても連系申込みが受理されていて、要請があれば出力制御対応機器を設置する、という条件で接続されているので、現時点で出力制御対応機器を設置していない設備もあるかもしれません。
要請があった場合に慌てないよう早めに情報を集めておきましょう。

予想される対応内容

このあと、いつになるかは不明ですが、いずれ中国電力から出力制御対応機器を設置するようお知らせが来ます。
先行する九州電力での対応フローをもとに、おおむね以下のような流れで対応する必要があると予想されますので、参考になさってください。
(2018年7月時点の弊社予測です。確定情報が分かり次第、当ブログでお知らせいたします。)

  1. 中国電力から出力制御対応機器を設置するよう書かれた書面が発電事業者さん宛に届く。
  2. 太陽光発電を設置した事業者へ連絡し、現時点で設置されている機器を確認する。
  3. (機器の追加や変更が必要であれば)機器の選定や見積もりを行う。
  4. 出力制御対応機器の仕様を記入して中国電力に送付し、確認を依頼する。
  5. 中国電力で仕様確認
  6. (必要であれば)追加や変更の工事を行う
  7. 出力制御対応機器に出力制御の設定を行う
  8. 対応が完了した旨を中国電力へ届け出る
  9. 中国電力で確認

出力制御対応機器とは?

出力制御対応機器の設置が義務付けられている設備には、以下の機器・環境が求められます。

  • 出力制御対応のパワーコンディショナー
  • 出力制御ユニット
  • インターネット環境

出力制御対応のパワーコンディショナー

従来のパワーコンディショナーの機能に加え、「出力制御ユニット」から出力制御情報を受けて、太陽光発電の出力(上限値)を制御する機能を持つパワーコンディショナーです。

出力制御ユニット

電力会社のサーバから出力制御スケジュールを取得し、出力制御スケジュールに基づいて、パワーコンディショナーを制御する機器です。パワーコンディショナーだけでは電力会社からの出力スケジュールを取得したり、スケジュールに則って出力を調整することはできません。
「出力制御ユニット」として販売されている機器ならどれでもいいわけではなく、使用するパワーコンディショナーによって対応できる出力制御ユニットが異なりますので、確認が必要です。

インターネット環境

電力会社のサーバから出力制御スケジュールを自動的に取得するために、インターネット環境が必要です。
具体的にはモデム、ルーター等の通信に必要な機器と、インターネット回線となります。
野立ての太陽光発電設備では、インターネット回線の敷設に手間とコストがかかるかもしれませんが、出力制御ユニットに通信機器とインターネット回線がセットになった便利なパッケージも販売されていますので、ご自身の設備で使用できるか確認してみましょう。

出力制御に関する参考情報

出力制御に関するより詳細な解説や、先行する他の電力会社の対応は以下にまとめていますので、今後のご参考になさってください。

出力制御全般

他の電力会社の情報

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