太陽光発電の出力制御についてまとめます。
出力制御には、「需給バランス」によるものと「送電線の容量」によるものがありますが、本記事では需給バランス制約による出力制御についてご説明します。
参考:出力制御が必要な理由については以下の記事をご覧下さい。
今さら聞けない「出力制御」〜なぜ出力制御が必要なのか?〜
平成28年(2016年)1月22日に、四国電力の太陽光発電設備の接続済みおよび契約申込み済みの設備量が接続可能量(30日等出力制御枠)に達したため、平成28年(2016年)1月25日以降に接続申込みをした案件からは「指定ルール」が適用されます。
参考:太陽光発電設備の30日等出力制御枠への到達について | 四国電力
平成29年(2017年)1月23日に、北陸電力の太陽光発電設備の接続済みおよび契約申込み済みの設備量が接続可能量(30日等出力制御枠)に達したため、平成29年(2017年)1月24日以降に接続申込みをした案件からは「指定ルール」が適用されます。
参考:太陽光発電設備の接続可能量(30日等出力制御枠)への到達について | 北陸電力
平成30年(2018年)7月11日に、中国電力の太陽光発電設備の接続済みおよび契約申込み済みの設備量が接続可能量(30日等出力制御枠)に達したため、平成30年(2018年)7月12日以降に接続申込みをした案件からは「指定ルール」が適用されます。
参考:太陽光発電設備の30日等出力制御枠への到達について | 中国電力
令和4年度(2022年度)より、太陽光発電の出力制御の対象範囲の拡大とオンライン代理制御が導入されました。
参考:経済的出力制御(オンライン代理制御)とは?出力制御対象も拡大?
出力制御ルール
出力制御には3つのルールが存在します。
発電設備の接続可能量の空きは、地域によって差があるため、地域と発電設備の容量によって適用されるルールが異なります。
各ルールの説明
旧ルール(30日ルール)
年間30日を上限に、無補償で出力を抑制するよう要請できるルール。
出力制御の設置義務:なし
新ルール(360時間ルール)
年間360時間を上限に、無補償で出力を抑制するよう要請できるルール。
出力制御機器の設置義務:あり(電力会社エリアによって例外あり)
指定ルール(無制限・無補償ルール)
上限時間なく無補償で出力を抑制するよう要請できるルール。
出力制御機器の設置義務:あり
旧ルール | 新ルール | 指定ルール | |
---|---|---|---|
無補償での出力制御上限 | 年間30日 | 年間360時間 | 無制限 |
出力制御機器設置義務 | なし オフライン可 |
あり オンライン |
あり オンライン |
容量別・地域別の適用されるルール
どのルールが適用されるかは、電力会社エリアごとに設備の規模(kW)や接続申込の時期により決まります。
また2022年度より、出力制御の対象が拡大しました。
出力制御区分 | 旧ルール | 新ルール | 指定ルール | |
---|---|---|---|---|
無補償での出力制御上限 | 500kW以上 | 年間30日 | 年間360時間 | 無制限 |
50kW以上500kW未満 | 2021年度まで:当面の間、出力制御実施対象外 →2022年度より出力制御実施対象へ |
|||
10kW以上50kW未満 | ||||
10kW未満 | 当面の間、出力制御実施対象外 |
電力会社ごとの適用ルールは以下のページを参考になさってください。
電力会社エリアごと出力制御ルール整理表
オフラインとオンライン
出力制御の対象となる発電所には、「オフライン」と「オンライン」の2種類があります。
オフライン発電所は、出力制御機器を設置していない発電所です。出力制御が必要となった際には現地で手動で出力を止める操作を行う必要があります。
一方オンライン発電所は、出力制御機器を設置している発電所です。出力制御対応機器により、電力会社から出力制御スケジュールを取得、パワーコンディショナーの出力調整を自動で行います。
オンライン制御は、発電事業者が現地で手動で制御する手間を省き、より実需給に近い柔軟な調整が可能であり、必要時間帯のみ制御が可能なため、出力制御機器の設置義務がない旧ルールにも、オンライン制御とすることが推奨されています。
出力制御はどのように行われるのか
- 電力会社で気象情報などから需給想定を行い、再生可能エネルギーの出力制御が必要量を算定します。
- 必要な制御量に応じて電力会社にて出力制御を指示する発電設備を選び、出力制御スケジュールが作成されます。
- 出力制御実施の前日までに予告があります。
- 出力制御実施の当日も需給状況や天候などにより、必要に応じて出力制御スケジュールが最新化されます。
- 出力制御当日は出力制御指示のあった設備で出力制御を実施します。
出力制御対応機器で制御する場合は、最新の出力制御スケジュールを自動的に取得し、指定された出力制御内容で自動的に出力制御が行われます。
2022年4月より、経済的出力制御(オンライン代理制御)が実施されています。
経済的出力制御とは、オフライン事業者が行うべき出力制御を、オンライン事業者が代理で実施、代理制御の対価を受け取る、というものです。
詳しくは、経済的出力制御(オンライン代理制御)とは?出力制御対象も拡大?の記事をご確認ください。
出力制御対応機器とは?
PCS(狭義)
従来のPCSの機能に加え、「出力制御ユニット」から出力制御情報を受けて、太陽光発電の出力(上限値)を制御する機能を持つPCSです。
すでに各PCSメーカーより「出力制御対応PCS」が発売されており、出力制御対応機器の設置が義務づけられる発電設備では、こうした出力制御対応PCSを導入する必要があります。
出力制御ユニット
電力会社のサーバから出力制御スケジュールを取得し、出力制御スケジュールに基づいて、「PCS(狭義)」 を制御する機能をもつ制御装置と定義されています。
PCS(狭義)だけでは電力会社からの出力スケジュールを取得したり、スケジュールに則って出力を調整することは出来ず、この部分の機能を担う機器が必要となります。
出力制御ユニットについてさらにくわしく
PCS(広義)
上記の「PCS(狭義)」「出力制御ユニット」を合わせて「PCS(広義) 出力制御機能付PCS」として定義されており、この設置が義務づけられます。
出力制御対応機器はいくらぐらい?
出力制御対応機器の設置にかかる費用は、発電事業者が負担しなくてはなりません。
どれくらいの費用がかかるものなのでしょうか。
太陽光発電協会によると、
- 10〜50kW未満の設備の場合
- 出力制御対応済みPCSを導入
- 通信機能付き制御ユニットを導入
- 通信費用
の条件で、1kWあたり1.7万円と試算されています。(経済産業省|調達価格等算定委員会(第18回)資料より)
内訳は以下の通りです。
- 通信機能付き新制御ユニットが0.5万円/kW
- 通信費用(買取期間中合計)が1.2万円/kW
仮に50kWの設備ですと1.7万円×50kW=85万円となり、これが目安となるのではないでしょうか。
通信機能(インターネット回線など)は必要か?
電力会社のサーバから出力制御スケジュールを取得するには、インターネット回線などの外部通信機能が重要となります。
発電設備に通信モデムを備え、外部との通信機能を持っている出力制御対応機器の場合、電力会社のサーバ上に掲載される「出力制御スケジュール」を自動的に取得し、スケジュールに乗っ取ってPCS(狭義)の出力を制御します。
外部通信機能がない場合は、発電事業者にて固定スケジュールを手動で取得(年に1回以上)し、出力制御ユニットに保存、それに則りPCS(狭義)を制御することになります。
外部通信機能がある場合は、直近の気象情報などを鑑みて、30分単位、定格出力制御値1%単位のきめ細かな制御スケジュールが配信されると想定されるため、出力制御による発電機会の損失を最小限に抑えることが可能になります。
これに対し、外部通信機能がない場合は、年間の固定スケジュールをもとに制御することになりますので、例年の電力受給状況から需要が少なく発電の多い時期(ゴールデンウィークなど)に大まかな日時(◯月◯日〜◯月◯日等)を指定したスケジュールとなると想定され、外部通信機能がある出力制御対応機器と比較すると、発電機会の損失が多くなると見込まれます。
またインターネットがない場合は、年に1回以上固定スケジュールを現地で設定せねばならず、そうした稼働コストも発生します。
そのうえ、スケジュールの登録忘れや登録遅れがあると、出力ができなくなるなどの大きなリスクがあることをあらかじめ認識しておく必要があります。
太陽光発電協会などによる資料『出力制御機能付PCSの技術仕様について』によると、通信回線を開設することが物理的に現実的では無い場所(山間地に立地する発電設備等)のみ、固定スケジュールを手動で設定する方向で検討されており、基本的に外部通信機能を備えるものと考えていてよいでしょう。