9月1日は「防災の日」でした。防災の日は「国民が台風、高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備する」日です。
太陽光発電界隈でも、低圧太陽光も事故報告が義務化されたり、火災保険・地震保険等への加入が努力義務化されたりと、制度的にも整えられ、被災した際の心構え、準備が必要であることが広められてきました。
この機会にあらためて予期せぬ災害や事故への備え「保険」について考えてみるべくご紹介します。

太陽光発電の事故率は年々上昇中

パネル崩落事故

出典:再エネ発電設備の電気保安の確保について | 経済産業省

2021年3月に公表された令和元年度の電気保安統計によると、太陽光発電所の事故件数は年々増えています。発電所数が増えているため相対的に事故件数も増えることは当然かもしれませんが、実は事故率も増えています。
事故率増加の要因の1つとして、自然災害(風雨・水害)が上げられており、台風や豪雨などの災害によりソーラーパネルが散乱するショッキングな写真や映像を、ニュース等で見たことがある方も多いのではないでしょうか。

事故件数、事故率の推移

出典:電気保安の現状について(令和元年度電気保安統計の概要)| 独立行政法人製品評価技術基盤機構

「低圧太陽光は大丈夫?」の声も

低圧太陽光発電は参入しやすさから気軽に始めた事業者も多いため、事故や災害で大きな損壊を負ったときに、有害物質が含まれるパネルが適切に処分されるかなど、安全面や環境面について心配する声もあります。
一方、太陽光発電は主力電源化を目指してもっと増やす必要があり、国としても継続して発電事業を行ってほしいと思われているなかで、事故や被災の後も事業が継続できるのかといった点についても課題として取り上げられています。
世間の不安や懸念を払拭し期待に応えるためにも、発電事業者自身の安定的な発電事業への心がけや備えが求められており、必要な対策がきちんと実施されるよう制度も変更されてきました。

信頼回復&主力電源化のための制度整備

2022年7月より、太陽光発電設備の廃棄コストの外部積立法制化

2017年の改正FIT法で廃棄費用を積み立てることが義務化されましたが、売電期間の後半から始めるとする事業者も多く、積み立てが進んでいないことから、2022年7月から売電金額から天引きして外部機関で積み立てることが決まりました。(10kW以上、買い取り期間終了前の10年間)

パネル廃棄費用の外部積立については以下の記事をご参考に
パネル廃棄費用の積立はどうなる? | エコめがねエネルギーBLOG

外部積立が制度化されたが、発電事業者各自が備える必要も

廃棄費用の外部積み立てはFIT買い取り終了時以降に廃棄することを想定し、11〜20年目で積み立てるもの。
そのため、積み立て前や積み立て中など、積立金額が十分でない時期に自然災害の被害等により発電設備が損壊し、廃棄が必要となった場合、発電事業者が都度費用を負担して処分する必要があります。

2020年4月〜、太陽光発電設備の火災保険・地震保険等の努力義務化

2020年に改定された太陽光事業計画策定ガイドライン(太陽光)に、

出力 10kW 以上の太陽光発電設備の場合、災害等による発電事業途中での修繕や撤去及び処分に備え、火災保険や地震保険等に加入するように努めること。

と明示されました。さらに、「努力義務化の影響を見極めながら、遵守義務化の検討を進めることとされている」点に留意が必要との記載もあります。

約1/3は保険未加入との調査結果も

火災保険に加入していれば事故や自然災害における設備損壊の補償がありますが、加入していない事業者も一定数いることが指摘されています。
2017年のアンケートでは、50kW未満の低圧太陽光において、火災保険に加入していると回答したのは56%であり、裏を返せば、約半数近くが加入していないという結果が示されています。また、損害賠償保険、地震保険については、更に低い加入状況となっています。直近の加入状況では変化があるかもしれませんが、一定数は保険に未加入であることが想定されます。

保険加入の状況

出典:太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度に関する詳細検討④ | 資源エネルギー庁

保険未加入で、大きな災害に見舞われたら…

自然災害に起因する事故が増加しているという統計結果が出ていますが、台風の激甚化や暴風雨の頻発などにより、事故の規模が拡大することも想定されます。例えば水害や土砂崩れなどによりパネルが敷地外へ流出するなどした場合、そのまま放置することで近隣に危険が及び、予期せず加害者になる恐れがあるのです。
自らの設備への被害だけではなく、他人に怪我を負わせたり、他人の財産を傷つけたりしてしまうことで賠償責任を負う可能性がありますが、前述の太陽光発電事業者向け「事業計画策定ガイドライン」においては、そういった場合の誠実な対応も求められています。
突然廃棄コストや、賠償金の支払いが発生するかもしれず、保険に加入していない場合は大きな支出や、事業の継続が不可能となる状況にもなりえます。

万一に備えて安心を

ここまで自然災害や事故などをご紹介してきましたが、考えたくない、自身の設備に無縁であってほしいことかと思います。発電事業に心配ごとは多いですが、必要な保険に加入し万一の事故に備えることで、自身の安心にもつながります。
立地や近隣の状況などにより必要な備えは異なるため一概には言えませんが、もし備えが十分でないとお感じの方、地域共生の観点で万一の場合に備えたいと考えている方は、この機会に一度考えてみてはいかがでしょうか。

費用は抑えて、最低限備えておきたい方に

一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)を団体契約者とした発電設備の廃棄コストと賠償資力の確保に特化した新たな保険の募集が始まりました。この保険は、災害などにより壊れた太陽光パネルなどを廃棄した場合や、発電設備の管理不備により賠償責任を負った場合などに安価な保険料で備えられるものです。希望される方は、オプションでサイバーリスク保険にも加入することができます。
一般的な火災保険、地震保険、賠償責任保険との大まかな補償内容の違いと保険料目安をご紹介します。

    火災保険 火災保険
+
地震保険
賠償責任
保険
太陽光発電協会保険
廃棄費用保険+施設賠償責任保険 廃棄費用保険+施設賠償責任保険+サイバーリスク保険
自然災害等による設備損害(地震・噴火を除く) 修理(機器&工事費)
廃棄費
※壊れた部分
以外も対象
地震による設備損害 修理(機器&工事費)
廃棄費
賠償責任
サイバーリスク
年間保険料の目安(50kWの場合)*1 8.6万円 12.8万円 2.6万円 1.7万円 2.3万円

◯:補償あり、−:補償なし
*1:平成29年度新エネルギー等の導入促進のための基礎調査(太陽光発電に係る保守点検の普及動向等に関する調査)を元に弊社にて算出。所在地、補償内容などにより保険料は異なります。あくまでも目安としてご覧ください。

今回ご紹介した保険は、地震のときの廃棄費用も一部補償の対象となる点や、壊れた部分以外もあわせて廃棄する際の費用も対象となる点が特徴です。費用は抑えて、最低限備えておきたい事業者さんは選択肢の一つとしてご検討してみてはいかがでしょうか。

「太陽光発電設備 廃棄費用&賠償責任保険~努力義務化対応~」について詳しくは以下のページでご確認ください。
参考:「太陽光発電設備 廃棄費用&賠償責任保険~努力義務化対応~」の概要

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