調達価格等算定委員会による「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」で2023年度、2024年度のFIT制度、FIP制度の調達価格などが示されています。
太陽光発電において「屋根設置」区分が新設されるという大きな変更がありますのでご紹介します。

2024年度から「屋根設置」「地上設置」と区分される

出典:令和5年度以降の調達価格等に関する意見 | 調達価格等算定委員会

10kW以上50kW未満の太陽光発電の場合、
2023年度のFIT認定の調達価格は10円/kWhです。
2024年度は「地上設置 10kW以上50kW未満」と「屋根設置 10kW以上」に区分され、
地上設置 10kW以上50kW未満の調達価格は10円/kWh、
屋根設置 10kW以上※1の調達価格は12円/kWh
となります。

※1 屋根設置区分は、10kW以上FIPのみ認められる容量未満が対象。FIPのみ認められる容量は年度により異なります。2023年度は10kW以上500kW未満、2024年度は10kW以上250kW未満が屋根設置区分の対象となります。(2023/6/14追記)

「屋根設置太陽光」新設の背景

2030年度に再エネ比率36~38%となる導入目標の実現に向けて、屋根に設置する太陽光発電の導入拡大が重要視されています。
地上設置/屋根設置の設置形態毎にコストを分析し、それぞれの区分毎に調達価格の想定値を設定することになりました。

地上設置/屋根設置のかかるコストは、以下のような違いがあります。
・地上設置は土地造成費用がかかるが、屋根設置にはかからない。
・接続費用は地上設置より屋根設置が安価で済む。
・システム費用費用は屋根設置の方が高い。
・運転期間は地上設置は25年、屋根設置は20年。

システム費用は、
・設計費
・工事費
・パネル、パワコン、架台などの設備費
からなりますが、地上設置は足場設置の必要性などから工事費が高くなっています。
また地上設置の場合、FIT期間が終了してもFIT外での売電などで収入を得やすいですが、
屋根設置の場合は、屋根や建物のメンテナンスや建て替えが必要となることが多いため、運転期間は地上設置より短い20年と見積もられています。
工事費の高さ、運転期間の短さなどから、屋根設置のほうがコストが高いと算定され、調達価格も高く設定されています。

「屋根設置太陽光」前倒し

2023年度に10kW以上50kW未満の太陽光発電を屋根に設置して余剰売電する場合は10円/kWhでの売電となりますが、
2024年度に同条件で売電する場合は12円/kWhとなります。
同条件でも翌年に認定を取得した方が調達価格が高くなるということから、2024年度に認定取得を先送りする案件が出ると想定されます。
屋根設置太陽光の早期導⼊を促すため、2023年度下半期(10月〜3月)の調達価格・基準価格についても、2024年度の屋根設置太陽光(10kW以上)の調達価格が適用されることになりました。

認定時期と規模による調達・基準価格まとめ

  2023年度上半期
(4月〜9月)
2023年度下半期
(10月〜3月)
2024年度※4
10kW未満 FIT調達価格
16円/kWh
FIT調達価格
16円/kWh
10kW以上50kW未満 FIT調達価格
10円/kWh+税
(地域活用要件)
地上設置 屋根設置 地上設置 屋根設置
FIT調達価格
10円/kWh+税
(地域活用要件)
FIT調達価格
12円/kWh+税
(地域活用要件)
FIT調達価格
10円/kWh※2
(地域活用要件)
FIT調達価格
12円/kWh※2
(地域活用要件)
FIP基準価格
10円/kWh
(条件あり)
FIP基準価格
10円/kWh
(条件あり)
FIP基準価格
12円/kWh
(条件あり)
FIP基準価格
10円/kWh
(条件あり)
FIP基準価格
12円/kWh
(条件あり)
50kW以上250kW未満 FIT調達価格
9.5円/kWh+税
FIT調達価格
9.5円/kWh+税
FIT調達価格
12円/kWh+税
FIT調達価格
9.2円/kWh※2
FIT調達価格
12円/kWh※2
FIP基準価格
9.5円/kWh
FIP基準価格
9.5円/kWh
FIP基準価格
12円/kWh
FIP基準価格
9.2円/kWh
FIP基準価格
12円/kWh
250kW以上500kW未満 FIT調達価格
入札制
FIT調達価格
入札制
FIT調達価格
12円/kWh+税※3
FIP
入札制
FIP基準価格
9.5円/kWh
FIP基準価格
9.5円/kWh
FIP基準価格
12円/kWh
500kW以上 FIP
入札制
FIP
入札制
FIP
入札制

※2 インボイス発⾏事業者(=課税事業者)→外税、非インボイス発行事業者(=免税事業者)→内税
※3 屋根設置は入札免除
※4 2024年の区分は未確定。変更される可能性があります。
2023年度の500kW以上の区分、2024年度の250kW以上500kW未満、500kW以上の区分について2023/6/14に修正しました。

発電電力は自家消費するのが得

買取単価の上昇は設置を検討するには良い話ではありますが、売電中心の太陽光発電を設置するのがお得かというとそうではありません。

電力・ガス取引監視等委員会が公表している「電力取引の状況(令和4年11月分)」の「販売額」「販売電力量」から1kWhあたりの平均額を算出すると
特別高圧 21.53円/kWh、高圧 25.64円/kWh、低圧 30.48円/kWh
となり、さらに2022年度の再エネ賦課金単価3.45円を加えると
特別高圧 24.98円/kWh、高圧 29.09円/kWh、低圧 33.93円/kWh

  令和4年11月度の販売額(千円) 令和4年11月度の販売電力量(MWh) 販売額÷販売電力量(円/kWh) 販売額÷販売電力量+再エネ賦課金(円/kWh)
特別高圧 378,292,972 17,567,330 21.53 24.98
高圧 544,329,907 21,227,588 25.64 29.09
低圧 625,515,514 20,524,965 30.48 33.93

FIT買取価格が2、3割高くなったとしても、発電電力はFITで売電するより自家消費する方がずっと得であることがお分かりいただけるでしょう。
なるべく電力会社から買う電力量を減らすことがコスト削減に貢献します。
休日などに余剰が出た時に売電する場合の収入シミュレーションや、認定、連系にかかる手間、コストなども算出の上、システム容量を決定されることをお勧めします。

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