太陽光発電の導入を検討する際は、
「導入予定のシステム容量でどれほどの発電量が得られるか」
「得たい発電量はどのくらいの規模のシステムで実現できるか」
などを考慮して進める必要があります。
太陽光モジュールメーカー各社がシミュレーションツールを用意していますが、ご自身で計算できる簡単な計算式と、計算に必要となる日射量の調べ方をご紹介します。
使用するメーカーの特性を反映した精緻な計算はできませんが、Excelでいろんな条件を計算して比較したい場合などにお役立てください。

太陽光発電による年間発電量の計算式

社団法人日本電機工業会(JEMA)が発行する「公共用・産業用太陽光発電システム計画ガイドブック」>「8.年間発電量の算出」に年間発電量の計算式が掲載されています。

太陽光発電の年間発電電力量の計算式(kWh/年)
EPY = PAN × HA × K × 365

各記号の意味を言葉で式にすると以下のようになります。

年間発電電力量(kWh/年) =
標準状態における太陽電池アレイ出力(kW) × 設置場所での日射量(kWh/㎡・日) × 総合設計係数(通常は0.7程度) × 365

計算式だけではピンと来ないですので、実際に以下のケースの値を代入してみましょう。

  • 地域:大阪市中央区付近
  • 出力:49.5kW
  • パネルの方位:南
  • パネルの設置角度:30°
49.5 × 4.43 × 0.7 × 365 = 56,027.3kWh

となります。
発電量のおおざっぱな目安として「太陽光発電システム1kWにつき、年間発電量はだいたい1,000kWh」が示されることがありますが、高めながらそう遠くない値が出ました。

「出力」はイメージがつきやすいと思いますが、「日射量」や「総合設計係数」にどのような値を入れるのか分かりにくいと思います。次項から1つずつご紹介します。

標準状態における太陽電池アレイ出力(kW)

発電量は設置する太陽光発電システムの規模により変わりますので、まずはシステムの容量を指定します。

ソーラーパネルメーカーのウェブサイトやパンフレットで仕様を確認すると、「公称最大出力」が書かれていますが、この数値が標準状態(AM1.5、日射強度 1000W/㎡、太陽電池セル温度 25℃)のパネル1枚あたりの出力です。使用枚数をかけて合計容量を算出します。
ここで紹介している式では「kW」の値を入れますが、公称最大出力は「W」で書かれていることが多いため注意してください。「W」の値を1,000で割って単位を「kW」に整えてください。
例)475(W)× 220(枚)= 104,500(W)→104.5kW

ここまでパネル出力のご説明をしましたが、過積載(パネル容量>パワコン容量)の場合はパワコン容量(kW)を入れればよいでしょう。

設置場所での日射量(kWh/㎡・日)

太陽光発電は日射量により発電量が変わりますので、設置する場所の日射量データを入手して計算します。
ここで入れる値の単位が「kWh/㎡・日」ですので、「1日の間に、1㎡あたり何kWhのエネルギーを太陽から得られるか」の年間平均値になります。

地域ごとの日射量は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「日射量データベース閲覧システム」で調べることができます。

日射量データベース閲覧システムの詳細なご利用方法は操作マニュアルでご確認いただけますが、ここでは計算式に必要な日射量(1日の間に、1㎡あたり何kWhのエネルギーを太陽から得られるか、kWh/㎡・日)の調べ方をご紹介します。
3ステップありますので順を追ってご説明します。

  1. 日射量データベース閲覧システムへアクセス。「年間月別日射量データベース(MONSOLAー20)」を選択
  2. 地域を選ぶ
  3. 設置する角度を指定する

1. 日射量データベース閲覧システムへアクセス。「年間月別日射量データベース(MONSOLAー20)」を選択

日射量データベース閲覧システム | NEDO
METPV-20、MONSOLA-20、全国日射量マップの3つのメニューがありますが、今回は「年間月別日射量(MONSOLA-20)」を使います。

日射量データベース閲覧システム

出典:日射量データベース閲覧システムの表示を弊社にて編集

  • MONSOLA-20…月平均データ(9年間の月平均値[推定値])
  • METPV-20 …時刻別データ(代表年の時別値)

2. 設置する地域を選ぶ

MONSOLA-20へ進むと、日本地図が示されたページに遷移します。地図を拡大するか、左下の「住所検索」「緯度経度検索」から設置場所の情報を入力の上検索して、設置したい地点付近をクリックしてメッシュを選択します。日射量を調べたいエリアが選択できたら「この地点のグラフを表示」へ。

日射量データベース閲覧システム

出典:日射量データベース閲覧システム画面に弊社にて加筆

サンプルは大阪市中央区付近です。

3. 設置する角度を指定する

選択した地点のグラフが表示されます。ここで設置する方角、傾斜角度を指定して日射量を求めます。
まずは画面左上の「表示データ選択」で「角度指定」を選択します。
つぎに「傾斜角」と「方位角」を指定します。

日射量データベース閲覧システム

出典:日射量データベース閲覧システム画面に弊社にて加筆

傾斜角

傾斜角はパネルの傾斜角度です。地面に対して水平に設置する場合が0°、垂直に設置する場合が90°となり、10°単位で指定できます。

方位角

方位角は傾斜面が向いている方角です。南が0°、西が90°、北が180°、東が270°となり、15°単位で指定できます。

角度の指定方法は「傾斜角指定」、「方位角指定」、「任意の指定」の3種類があります。
「傾斜角指定」、「方位角指定」でそれぞれの角度で発電量がどう変わるか確認し、「任意の指定」で角度を指定して、発電量の計算に必要な日射量(1日の間に、1㎡あたり何kWhのエネルギーを太陽から得られるか、kWh/㎡・日)を求めます。

傾斜角指定

傾斜角指定は、パネルの傾斜角度を指定します。
指定した傾斜角で設置した場合における各方位角の斜面日射量グラフが右側に表示されます。
数字で入力するほか、下にある「傾斜角、方位角操作盤」のスライダーでも操作できます。

方位角指定

方位角指定は、方位角を指定します。
指定した方位角で設置した場合における、傾斜角ごとの斜面日射量グラフが右側に表示されます。
季節によって日射量が高くなる角度が変化してるのがよく分かります。

日射量データベース閲覧システム

出典:日射量データベース閲覧システム画面に弊社にて加筆

また、折れ線グラフが重なって判別しにくい時は、右下の「データ一覧表を表示」から、月平均斜面日射量を数字で確認することもできます。

任意の指定

任意の指定では傾斜角、方位角の両方に任意の数字を指定し、その角度の日射量グラフを表示できます。
サンプルのグラフは方位角を0°(南)、傾斜角を30°と指定したもの。
サンプルの場合は「4.43」が設置場所での1日の日射量平均(kWh/㎡・日)となります。

日射量データベース閲覧システム

出典:日射量データベース閲覧システム画面に弊社にて加筆

総合設計係数

太陽光パネルは温度が上昇すると発電効率が低下します。また経年劣化や汚れなどよっても損失が発生しますので、これらの損失を加味するため一定の係数をかけて補正します。この係数を総合設計係数といいます。

総合設計係数は、日射量年変動補正係数、経時変化補正係数、アレイ負荷総合補正係数、アレイ回路補正係数、インバータ回路補正係数、温度補正係数を掛け合わせて算出したものを使用します。こうしたさまざまな係数を取得できれば掛け合わせ、総合設計係数を算出して使用します。
煩雑になりますので、ここでは社団法人日本電機工業会のガイドブックで示されている「0.7」を使用してサンプルの計算を行いました。

まとめ

太陽光発電の発電量の計算方法をご紹介しました。これから導入するソーラーシステムの発電量を想定する際や、運転中の設備の発電量の妥当性を確認する際などに目安としてご活用ください。

太陽光発電の年間発電量の計算式

都道府県ごとの発電実測値

ここでご紹介した計算方法は、設置エリアの日射量の平均値をもとにどのくらい発電するのかを計算して予測するものですが、太陽光発電は天候による影響が大きいので、実際の発電量は計算どおりにいかないことも多々あります。
過去の実測値をご覧になりたいご要望にお応えして、エコめがねの計測データをもとに都道府県別の実測発電データを公開しています。実測データの平均ですので、所有されている発電所の発電量は妥当か、などの判断にもお役立ていただけます。
簡単なご登録で無料でご利用いただけますのでぜひご活用ください。
都道府県別実測発電データ

自家消費型の簡易シミュレーション

発電電力を自家消費する自家消費型太陽光発電の場合、電力消費量データ取り寄せる必要があるなど手間がかかりますし、計算も複雑になりますので、太陽光発電システムの施工会社さんやメーカーに相談する必要があります。導入をする際は詳細にシミュレーションし計画を立てる必要がありますが、まずはご自身で調べたいという方向けに自家消費型太陽光の簡易シミュレーションをご用意しています。簡単にシミュレーションできますので、一度お試しください。
自家消費シミュレーター

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