2022年度から
・出力制御対象の拡大
・オンライン代理制御(経済的出力制御)
が始まっています。
実際にどのように代理で制御され、精算されるのかが見えてきました。出力制御の機会が多い九州電力の事例を中心にご説明します。
オンライン代理制御(経済的出力制御)の概要
まずはおおまかにオンライン代理制御とは何か、についてご説明します。
経緯
2022年4月から“当面、制御対象外と整理されてきた旧ルール500kW未満”が出力制御対象に加えられました。
旧ルール | 新ルール | 指定ルール | |
---|---|---|---|
500kW以上 | 従来 | 従来 | 従来 |
50kW以上 500kW未満 |
追加 | 従来 | 従来 |
10kW以上 50kW未満 |
追加 | 従来 | 従来 |
10kW未満 | 当面対象外 | ||
無補償での出力制御上限 | 年間30日 | 年間360時間 | 無制限 |
出力制御機器設置義務 | なし | あり | あり |
詳細は 経済的出力制御(オンライン代理制御)とは?出力制御対象も拡大? の記事でご確認ください。
用語:オフライン発電所
これまで出力制御の義務がなかった設備は、すぐに出力制御の機器を設置するのが難しいため、機器の設置の義務はありません。
出力制御対象だが、出力制御の機器を設置していない発電所を「オフライン発電所」といいます。またその事業者を「オフライン事業者」といいます。
出力制御の機器を設置しているが、インターネットがつながっておらず、出力制御カレンダーを年に1度現地へ登録しに行く設備、いわゆる固定スケジュールで制御しているケースは、「オフライン発電所」のように感じますが、代理出力制御関連で言う「オフライン発電所」には含みません。
用語:オンライン発電所
出力制御機器やインターネット回線をつけ、遠隔で自動的に出力制御できる発電所を「オンライン発電所」といいます。またその事業者を「オンライン事業者」といいます。
オフライン発電所の代理でオンライン発電所が出力制御実施
オフライン発電所は、本来は出力制御時に手動でパワコンを止めたり立ち上げたりすべきですが、低圧設備まで含む発電所が全てそうした対応を行うのは現実的ではありません。
そのためオンライン発電所が代理で制御する「オンライン代理制御」のしくみができました。
オフライン事業者が行うべき出力制御を、オンライン事業者が代理で実施、代理制御の対価を受け取る、というものです。
オンライン | オフライン | |
---|---|---|
出力制御実施 | 本来制御+代理制御 (停止する) |
被代理制御 (停止しない) |
支払い | 発電電力料金+代理制御精算 | 発電電力料金ー代理制御精算 |
オンライン事業者の売電金額への影響
オフライン事業者の代わりに制御した時間帯に発電していたであろう「みなし発電量」に、FIT買取価格を乗じた金額が、代理制御の対価として支払われます。
オフライン事業者の売電金額への影響
オンライン事業者に代わりに制御をしてもらうことから、本来出力制御されるはずであった時間帯の発電量については対価が支払われないこととなります。
精算スケジュール
2月に代理制御を行なった場合を例として一般的なスケジュールを見ていきましょう。
2月の実績が3月に検針され、検針データや制御実績から精算に必要な比率(精算比率)が算定されます。4月末頃に積算比率が確定し、各一般送配電事業者のホームページに掲載されます。
そして4月の実績(5月検針分)の発電料金に2月の精算額を反映した額が支払われる、ということになります。5
支払いタイミングは電力会社により異なりますが、精算は2ヶ月ずれる、ということをご認識ください。
精算比率
売電した電力量に対する代理制御が行われた割合が1ヶ月ごとに「精算比率」として算出されます。
精算月までに各一般送配電事業者のホームページに掲載されます。
参考:
九州電力送配電>オンライン代理制御の精算比率について
精算比率の見方
九州電力のオンライン代理制御の2023年2月の精算比率を例に見ていきます。
代理制御 実施期間 |
精算対象月分 | オンライン発電所 旧ルール及び無制限無補償ルール |
オフライン発電所 旧ルール10kW以上500kW未満 |
オフライン発電所 旧ルール500kW以上 |
---|---|---|---|---|
2023年2月1日~2023年2月28日 | 2023年5月検針分 | 2.50% | ー10.61% | ー10.61% |
積算対象月分:いつ検針した実績の発電料金の支払い時に精算が実施されるか。この例の場合2023年5月検針分で精算されます。
オンライン発電所:オフライン事業者の代わりに制御した時間帯に発電していたであろうとみなされる電力量の売電量実績に対する割合。この例では、2月の発電量の2.5%にあたる電力を、オフライン発電所の代理として制御したとみなすということ。
オフライン発電所:本来出力制御されるはずであったとみなされる電力量の売電量実績に対する割合。この例では、2月の発電量の10.61%は本来制御されるはずであったとみなすということ。
なぜオンラインとオフラインで精算比率がこんなに違うのか
オフライン発電所は遠隔制御ができないため、出力制御を実施するとしたら、朝発電を停止し、夕方に発電を再開する手動作業を行うとみなし、(実際の出力制御時間が10〜14時の4時間だったとしても)8時~16時を出力制御をしたとして算定されます。
そのためオンライン発電所の補填精算(プラスの精算)より、オフライン発電所の控除精算(マイナスの精算)が上回る比率となっています。
精算例
2023年2月の九州電力管内の低圧太陽光発電のオンライン事業者、オフライン事業者それぞれの、代理制御の精算額はいくらくらいか計算してみます。
精算例(九州・低圧・オンライン発電所)
①FIT単価(円) | 39.6円 |
---|---|
②2月の売電電力量(kWh) | 3,800kWh |
③2月の精算比率 | 2.5% |
④代理制御調整電力量(kWh)②×③ (どれだけ代理制御があったか) |
95kWh |
⑤代理制御調整金(円)④×① | 3,762円 |
⑥4月の売電電力量(kWh) | 3,800kWh |
⑦4月の売電料金(円)⑥×① | 150,480円 |
支払い金額合計(円)③+⑦ | 154,242円 |
2月の売電電力量(kWh)が3,800kWhだった場合、精算比率が2.5%ですので、95kWhはオフライン事業者の代わりに制御したとみなされます。
FIT単価39.6円(税込)をかけて、2月の代理制御調整金として3,762円が2ヶ月後の4月の売電料金に加えて支払われます。
精算例(九州・低圧・オフライン発電所)
①FIT単価(円) | 39.6円 |
---|---|
②2月の売電電力量(kWh) | 3,900kWh |
③2月の精算比率 | -10.61% |
④代理制御調整電力量(kWh)②×③ (どれだけ代理制御があったか) |
-414kWh |
⑤代理制御調整金(円)④×① | -16,394円 |
⑥4月の売電電力量(kWh) | 4,800kWh |
⑦4月の売電料金(円)⑥×① | 190,080円 |
支払い金額合計(円)③+⑦ | 173,686円 |
まとめ
オンライン事業者
代理制御と精算の時期がずれるためややこしい。
代理制御の精算に必要な精算比率の算出に時間がかかるため、数ヶ月後の発電料金での精算となり、オンライン事業者の方にとっては金銭的に補填された実感が湧きにくい状況と見られます。
一部は代理で行っている制御で、数ヶ月後に補填されるということはご理解ください。
オフライン事業者
数ヶ月後に控除されることにご留意
新たに出力制御対象になったオフライン事業者さまは、多額の調整金控除が発生しないうちは、出力制御の実感が湧いていないかもしれません。
出力制御が多く実施された数ヶ月後には、売電金額からまとまった調整金が差し引かれることも想定されますのでご留意ください。
オフライン事業者に厳しい精算比率
電力系統運用の観点から、より実需給に近い柔軟な調整が可能であり、必要時間帯のみ制御が可能なオンライン制御が望ましいと推奨されています。
そうした意図も反映してか、精算比率はオフライン発電所に厳しい算定方法になっていました。
オフラインからオンラインにするには費用がかかるためすぐには難しいかもしれませんが、パワコンのリプレース時にはオンライン化をお勧めします。