2023年3月24日に、2023年度の再エネ賦課金単価が 1kWh当たり1.40円 と発表されました。2022年度と比較して 1kWhあたり2.05円の値下げ となります。
制度始まって以来はじめての再エネ賦課金の値下がりです。その背景を含めご説明します。
再エネ賦課金とは
まずは「再エネ賦課金」とは何かについて、簡単にご説明します。
地球温暖化対策、エネルギー自給率の上昇による日本の産業の活性化などのため、再エネの普及を進める取組が続けられています。FIT制度などにより再エネによる電⼒を⾼く買い取るなどの特別措置もあり、再エネによる発電量は増えています。
今はまだ高い再エネ電力の買い取り費用を、電気の利⽤者が負担するのが再生可能エネルギー発電促進賦課金(=再エネ賦課⾦)です。再エネ賦課金は電気料⾦とともに電気の使⽤量に応じて徴収されています。
全国一律の単価となるよう調整され、1年に1度見直されます。見直された再エネ賦課金単価は5月分の電気料金から適用されます。
参考記事:再エネ賦課金とは?注目キーワードを紹介
再エネ賦課金単価の推移
再エネによる発電電力の増加とともに制度開始以来賦課金単価も年々上昇してきました。その推移を見てみましょう。
年度(年) | 単価(円/kWh) | 前年との差(円/kWh) | 変化率(%) |
---|---|---|---|
2012 | 0.22 | ー | ー |
2013 | 0.35 | +0.13 | +59.1% |
2014 | 0.75 | +0.40 | +114.3% |
2015 | 1.58 | +0.83 | +110.7% |
2016 | 2.25 | +0.67 | +42.4% |
2017 | 2.64 | +0.39 | +17.3% |
2018 | 2.9 | +0.26 | +9.8% |
2019 | 2.95 | +0.05 | +1.7% |
2020 | 2.98 | +0.03 | +1.0% |
2021 | 3.36 | +0.38 | +12.8% |
2022 | 3.45 | +0.09 | +2.7% |
2023 | 1.4 | -2.05 | -59.4% |
再エネ発電設備、再エネによる電力は増えているのですが、なぜ2023年度は再エネ賦課金単価が下落するのでしょうか。
賦課金の計算方法を知ることでその理由が分かります。次項で詳しくご説明します。
再エネ賦課金単価の算定方法
主に①再エネの買取費用(円)、②回避可能費用(円)、③販売電力量(kWh)から算定されます。
①再エネの買取費用(円)…2023年度中に再エネ電力を買い取る費用の推計。
②回避可能費用(円)…再エネを買い取らなかったら、発電や調達にかかると見込まれる費用の推計。市場価格に連動。
③販売電力量(kWh)…過去の実績をもとに推計されます。
賦課金単価算定根拠 内訳
2023年度の再エネ賦課金単価を算定にあたって根拠となる費用、電力量は以下のとおりです。
2022年度における想定 | 2023年度における想定 | |
---|---|---|
①買取費用等 | 4兆2,033億円 | 4兆7,477億円 |
②回避可能費用等 | 1兆4,609億円 | 3兆6,353億円 |
③販売電力量 | 7,943億kWh | 7,946億kWh |
再エネ賦課金単価の算定式に当てはめると以下のようになります。
賦課金単価算定根拠の内訳を見ていただくと、①買取費用や③販売電力量は2022年度とあまり変わらないのに、2023年度の②回避可能費用が2022年度の2.4倍とかなり上昇しています。
回避可能費用とは(おおまかな説明ですが)再エネを買い取ると想定される電力量を市場価格で買い取る場合の費用とお考えください。
再エネ買取費用と回避可能費用との差額をメインに再エネ賦課金単価が算出されるため、電力の市場価格が安いと賦課金単価は上昇し、市場価格が高いと賦課金単価が下落するという算定式になっています。
まとめ:市場価格が高いと再エネ賦課金単価が下がる
前項でご紹介した算定式より、再エネ賦課金単価が下がったのは、市場価格が高止まりすると想定されているということが分かります。
電力市場の価格の高騰は電気代上昇につながります。実際、大手電力7社が値上げを申請中で、平均値上げ額28.08〜45.84%の値上げが予定されています。(2023年3月末時点)
燃料価格や卸電力市場価格の見通しが不透明ではありますが、再エネ賦課金単価が下がったというだけでは負担減につながりにくい状況が続くと見られます。
電気の利用者が電気料金の負担を減らすためには、対策の1つとして電力会社から購入する電力を減らすことが挙げられます。
太陽光発電など再エネ発電設備を導入することは、脱炭素の取り組みであるとともに、コスト面でも貢献しうる対策となってきたと言えるでしょう。
[参考]値上げ申請中の電力会社
東北電力株式会社
申請概要:現行の電気料金(規制部門)を平均32.94パーセント引き上げるほか、その他の供給条件の変更等に伴う特定小売供給約款の変更を行う(申請上の実施予定日は令和5年4月1日)。
値上げ認可申請受理日:2022年11月24日
中国電力株式会社
申請概要:現行の電気料金(規制部門)を平均31.33パーセント引き上げるほか、その他の供給条件の変更等に伴う特定小売供給約款の変更を行う(申請上の実施予定日は令和5年4月1日)。
値上げ認可申請受理日:2022年11月25日
四国電力株式会社
申請概要:現行の電気料金(規制部門)を平均28.08パーセント引き上げるほか、その他の供給条件の変更等に伴う特定小売供給約款の変更を行う(申請上の実施予定日は令和5年4月1日)。
値上げ認可申請受理日:2022年11月28日
沖縄電力株式会社
申請概要:現行の電気料金(規制部門)を平均43.81パーセント引き上げるほか、その他の供給条件の変更等に伴う特定小売供給約款の変更を行う(申請上の実施予定日は令和5年4月1日)。
値上げ認可申請受理日:2022年11月28日
北陸電力株式会社
申請概要:現行の電気料金(規制部門)を平均45.84パーセント引き上げるほか、その他の供給条件の変更等に伴う特定小売供給約款の変更を行う(申請上の実施予定日は令和5年4月1日)。
値上げ認可申請受理日:2022年11月30日
東京電力エナジーパートナー株式会社
申請概要:現行の電気料金(規制部門)を平均29.31パーセント引き上げるほか、その他の供給条件の変更等に伴う特定小売供給約款の変更を行う(申請上の実施予定日は令和5年6月1日)。
値上げ認可申請受理日:2023年1月23日
北海道電力株式会社
申請概要:現行の電気料金(規制部門)を平均34.87パーセント引き上げるほか、その他の供給条件の変更等に伴う特定小売供給約款の変更を行う(申請上の実施予定日は令和5年6月1日)。
値上げ認可申請受理日:2023年1月26日
参考:
再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2023年度以降の買取価格等と2023年度の賦課金単価を設定します | 経済産業省