2015年12月21日に「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(第19回会合)」が開かれ、
・太陽光発電による電力の買取価格決定方法の変更
・設備設備時期見直し
等について改革案が示されました。
太陽光発電事業に関連する項目を中心にご紹介します。
- 設備認定の変更点:2017年4月から設備認定制度が変わります
- 買取価格決定方法の変更点:2017年4月から買取価格はどう決まる?
太陽光発電設備の買取価格の決定方式を変更
事業用太陽光発電(10kW以上)
- 現行の価格決定方式を厳格化させ、特に効率的に発電できる事業者のコストを基準として毎年決定する「トップランナー方式」を採用。
- 大規模な発電設備から、買取価格を入札で決める「入札方式」の対象とする。
背景
現行の買取価格は、年に1回(必要に応じて半年ごとに)、再エネの種別、規模等に応じて、効率的に事業が実施される場合に通常要する費用に加えて、適正な利潤等を勘案して定められています。
現行の運用方法では「事業者のコスト低減努力に繋がらない」、「むしろ太陽光パネル輸入価格の下げ止まり要因」といった批判がありました。
既に導入が進み、コスト低減が進んでいる太陽光発電において、事業者のコスト低減を促すような買い取り価格の決定方式が求められており、入札制の導入について検討が重ねられてきました。
コストを最小限に抑えられる事業者による導入を優先するために競争入札は有効と言えますが、進みつつある地産地消型の電力ビジネスや、建物や工場等での自家消費一体型の発電設備の導入の障壁となりかねません。
そうしたことを鑑み、入札方式は大規模な発電設備のみ対象となる方向です。
参考:先行する欧州のFIT制度の変遷
先行してFITが始まったヨーロッパでは、2000年代後半の太陽光パネルのコストの急速な価格低下の中で、各国のFIT等の支援制度は、太陽光発電の大量導入と国民負担増の問題に直面し、入札制導入など大幅な制度の見直しや制度の停止に至っています。
住宅用太陽光発電(10kW未満)
- 買取価格の低減スケジュールを複数年にわたり予め決定する方式を採用。
背景
10kW未満の太陽光発電設備では、住宅での自家消費を除いた余剰電力を売電するため、競争入力には馴染みません。
予め低減スケジュールが設定されていることで、
- 買取価格の予見が容易で導入しやすい
- 目標に向けた事業者の努力や技術開発が促され、コスト低減が進む
といったことが期待されます。
また住宅用の太陽光発電の拡大には、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)やエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の導入促進など、省エネ施策と一体となった支援策の充実が必要だとの方向性が示されました。
設備認定は電力会社との契約締結時に変更
- 電力会社との系統接続の契約など、事業の実施の可能性や適切性を確認の上、FIT認定を行う。
- 設備認定後、各種手続きや工事着手に一定の期限を設けるなど、遅延を発生させない対策を講じる。
- 買取価格は新たな認定時を決定時期とする。
背景
現在の設備認定制度では、認定済み・未稼働案件の滞留が問題になっています。
参考記事:50kW未満の設備も認定取消?資源エネルギー庁委員会資料から
現在、未稼働案件に対して認定取消しの取り組みが進められていますが、それとともに未稼働案件を発生させないために、設備認定時期を後ろ倒すということです。
現在認定済みの案件への影響
運転開始済みまたは系統接続の契約締結など、新しい認定制度の要件を満たすものは、現行制度のステータス(買取価格等)が適用されます。
その他の案件はあらためて認定を取得することが必要になります。
ただし、系統接続について電力会社との調整に時間を要しているケースがあることも考慮し、一定の猶予期間を設けることの検討が必要との記載もあります。
FIT制度の方向性まとめ
昨年7月に策定された「長期エネルギー需給見通し」では2030年は電源構成のうち22〜24%を再生可能エネルギーが占めるとの見通しが示されました。
再生可能エネルギーを最大限導入するという方向は変わりませんが、電気代の上昇など国民負担の増加も課題とされており、「再エネの導入」と「国民負担の抑制」の両立が必要です。
特に急速に導入が進んだ太陽光発電については、支援制度がなくても成り立つ「自立化」の早期実現をめざして、コストを抑えて導入を進める仕組みづくりが進められます。
参考:
再生可能エネルギー導入促進関連制度 改革小委員会 報告書(案)|経済産業省 資源エネルギー庁