電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)の改正が2017年4月1日に施行されます。
買取価格の決定方式の見直しも含まれており、今回はこの内容についてご紹介します。
買取価格決定方式変更のポイント
電源種別、規模により「トップランナー方式」「価格低減スケジュール」「入札方式」と、異なる価格決定方式が採用されることになります。
価格低減の進捗度合いや開発期間が異なるそれぞれの電源の事情に応じた方法が採用されます。
各決定方式は後ほどご紹介します。
買取価格の決定方式が見直される理由の1つとして、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図る目的があり、コスト効率的な導入が進む仕組みへ変わります。
ポイントは以下の2点です。
- 中長期的な買取価格目標の設定
電源ごとに「買取価格目標」が設定され、この目標を考慮して買取価格が決められます。
将来の買取価格がいくら位になるのか予想しやすくなるとともに、その目標に向けた事業者の努力や技術革新によるコスト低減を促します。
価格目標は、調達価格等算定委員会において検討され、経済産業大臣が設定します。 - コスト低減や事業者の競争を促す買取価格決定方式を採用する。
大規模な事業用太陽光発電については、事業者間の競争を通じた更なる価格低減を実現するため、入札制度も活用されます。
さらに風力・地熱・水力・バイオマス発電のように、リードタイムが長い電源の導入を促進するため、事業の予見可能性を高め、事業化決定を促す仕組みを取り入れます。
それぞれの電源、規模ごとの買取価格決定方法は以下のとおりです。
事業用太陽光発電(10kW以上)
10kW以上の太陽光の買取価格は毎年決定
特に効率的に発電できる事業者のコストを基準として毎年決定する「トップランナー方式」が採用されます。
現行の買取価格は、再エネの種別、規模等に応じて、効率的に事業が実施される場合に通常要する費用に加えて、適正な利潤等を勘案して決められていますが、「事業者のコスト低減努力につながらない」との批判もありました。
産業用の電力料金の水準を買取価格目標とする方向で検討が進められます。
産業用の電力料金は、現在1kWhあたり16円程度です。
2016年の買取価格は24円ですが、数年かけてあと8円ほど引き下げられると思われます。
大規模太陽光は入札実施
「大規模」が具体的にどの程度の規模の設備をさすかはまだ決定していませんが、1MW、2MWといったメガソーラーが入札の対象になると思われます。
決められた容量以上は必ず入札方式をとるわけではなく、「電気の使用者の負担の軽減を図る上で有効であると認めるとき」、要するに買取価格が下がる可能性が高いときに実施される見込みです。例えば新規参入が少なく、買取価格が下がらないと見込まれる場合は適用されません。
対象となる発電設備の区分等を指定した上で、入札量や参加条件、上限価格等の「入札実施指針」が定められます。
入札の流れは、以下のようになります。
- (経産省等)入札対象区分などを指定
- (経産省等)入札実施指針の策定、公表
- (発電事業者)入札を希望する発電事業者から「再エネ発電事業計画」の提出
- (経産省等)入札参加資格の確認、通知
- (経産省等)入札の実施(年1〜3回程度)
(発電事業者)希望する買取価格、出力を入札 - (経産省等)落札者の決定、通知、公表
- (発電事業者)FIT認定の申請
- (経産省等)FIT認定
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入札からFIT認定まで、数ヶ月〜半年程度かかる見込みです。
住宅用太陽光発電(10kW未満)
価格低減のスケジュールを示す
価格低減の具体的なスケジュールは今後決定していくとのことですが、買取価格目標に向けて数年かけて引き下げられていくことになります。
住宅用太陽光発電の買取価格目標は家庭用電気料金の水準となる見込みです。家庭用電気料金は、2016年現在1kWhあたり25円程度です。
2019年に余剰電力買取制度の買取期間が終了する案件が多数発生するのに合わせ、買取価格目標まで引き下げていく方針が示されていますので、2019年に25円程度になるよう、段階的に引き下げるスケジュールが組まれることが予想されます。
風力発電
価格低減のスケジュールを示す
風力発電の買取価格はずっと据え置かれていましたが、中長期的な買取価格の引き下げを行っていくことが示されました。
現在の日本の風力発電の買取価格は主要国と比較して約2倍と高い水準にあり、建設コストを引き下げる事業者の努力を促すために買取価格を引き下げるスケジュールが定められます。
設備利用率を20%から25%に向上させる想定で買取価格目標を設定し、段階的に低減していくスケジュールとなる見込みです。
地熱発電、水力発電、バイオマス発電
複数年分を一括して買取価格を決定する
前出の風力発電に加え、地熱、水力、バイオマス発電は、地元調整や環境アセスメントなど、事業の検討を始めてから運転開始までに時間がかかります。事業化決定後に買取価格が下落するリスクがあるため、事業化を進めにくいという事情があります。
数年先まで買取価格が決定していると、認定を受けるときの買取価格が分かるため、事業の見通しが立ちやすくなり、事業化の決定を促すことが見込めます。
電源ごとに事業化決定〜FIT認定までの期間を勘案して、一括価格決定の期間が設定されます。2年~5年程度先まで、買取価格が一括して決定される見込みです。
参考: