59a626a64668dbd939a1b9d4285ac9f3_s FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)の改正案が閣議決定し、国会に提出されています。
成立すれば2017年4月1日に施行される予定です。
(※2016/5/25追記 5月25日に可決、成立しました。)

この改正には設備認定制度の見直しも含まれています。
再エネ発電事業者の方や販売事業者の方にとって大きな影響が予想されますので、今回は設備認定制度の改正にしぼってご紹介します。

認定基準が変更に

未稼働案件が大量に存在していることなど、現行の認定制度の課題が問題視されてきました。
そうした課題の解消と、長期安定的な発電を促すため、

  1. 事業内容の適切性(運転開始後も含めて)
  2. 事業実施の確実性
  3. 設備の適切性

の新たな認定基準が設定されます。

それぞれの基準項目を見ていきましょう。

1.事業内容の適切性

第一号 事業の内容が基準に適合すること
適切に点検・保守を行い、発電量の維持に努めること 新規
定期的に費用、発電量等を報告すること 新規
設備の更新又は廃棄の際に、不要になった設備を適切に処分すること 新規
費用を記録すること
他事業のバイオマス調達に著しく影響を及ぼさないこと(バイオマス) 等

2.事業実施の確実性

第二号 事業が円滑かつ確実に実施されると見込まれること ※省令委任なし
接続契約を締結していること 新規
土地利用に関する法令を遵守すること 新規
適正な期間内に運転開始すること 新規
「接続契約を締結していること」が設備認定基準に含まれており、設備認定申請の前に接続契約を締結させることとなります。

参考までに現在の50kW未満の太陽光発電の設置までの大まかな流れは、以下のとおり。
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  1. 経産省から設備認定を受ける
  2. 電力会社に接続契約の申込み
  3. 接続契約が成立し、調達価格が決定
  4. 設置工事
  5. 運転開始

図出典:なっとく!再生可能エネルギー

3.設備の適切性

第三号 設備が基準に適合すること
発電設備の安全性に関する法令を遵守すること 新規
設備の設置場所において事業内容等を記載した標識を掲示すること(新規) 新規

認定制度が見直される背景

未稼働案件への対応

認定を受けたにも関わらず運転開始に至っていない「未稼働案件」が大量に発生している問題を受け、電力会社との系統接続の契約など事業の実施可能性や事業内容の適切性を確認した上で認定することで未稼働案件の解消を目指す狙いがあります。

加えて新たな未稼働案件の発生を防止するために、新しく認定を取得したあと運転開始までの期限を設ける案も検討されています。(例えば、1000kW以上の太陽光発電は、標準的な設置工事期間を考慮して、3年とするなど。)

未稼働案件がなぜ悪い?

設備認定時から時間が経過し、太陽光発電設備の導入コストが低下した時に運転開始しても、過去の高い調達価格(買取価格)が保障されていることで、発電事業者に過剰な利益が生じます。
固定価格買取制度は、電気を使用する人の再エネ賦課金により支えられているため、発電事業者の過剰な利益の分、再エネ賦課金が増加し、国民(電気の需要家)に過剰な負担が生じることになります。
加えて、より低コストで導入可能な後発案件の参入や、太陽光発電以外の再生可能エネルギー発電の系統接続を阻害することにつながります。
上記のことから、未稼働案件の解消に向けて、様々な方策がとられてきました。
参考記事: 50kW未満の設備も認定取消?資源エネルギー庁委員会資料から

長期安定的な発電を促す

適切な点検、保守、発電量の適切な計測や報告など、安全性の確保や発電能力の維持を促すための項目が追加されます。
また「土地利用に関する法令を遵守すること」といった項目も追加されます。

認定された設備について発電事業者が「安全規制」「土地利用の法令や条例」を遵守しなければならないことは当然ですが、遵守を担保する仕組みの整備が必要となります。

土地利用や景観、設備の安全性等に関する法令・条例を管轄している地方自治体や関係省庁に、認定された設備の情報を提供する運用が2016年4月1日から運用が開始されています。
この情報提供システムの内容は、
閲覧権限を申請した自治体や省庁に対し、経済産業省が「認定情報データベース」の閲覧権限を付与し、関連する認定申請情報、例えば自治体であれば◯◯県内・◯◯市内など、省庁であれば省令に関連する情報が提供されるというものです。
参考:地方公共団体等向け情報提供システム

自治体・関係省庁への情報提供システム

出典:資源エネルギー庁

情報提供システムなどにより発見された違反事例は、関係省庁や自治体より指導・命令等がなされます。
FIT法においても改善命令を行い、認定取消を行うことが出来るようになります。

法令違反事案への対処

出典:資源エネルギー庁

太陽光発電における安全性の確保に向けた取り組み

2015年は、9月には鬼怒川氾濫がソーラーパネル設置のせいではないかという報道があり、安全性や環境への悪影響への不安が広がりました。
周辺社会の理解を得られるしくみづくりとして、以下のような制度見直しの検討が進められています。

1.使用前自己確認の対象を拡大

使用前自己確認が、これまでは2,000kW以上だったのに対し500kW以上の設備に拡大して義務を課す。

使用前自己確認制度とは?

事業用電気工作物の使用開始前に、事業者自ら技術基準適合性を確認し、その結果を国に届け出る制度。

2.技術基準の整備

  • 標準化仕様の明確化
  • 感電防止策の検討

3.事故報告の規制を拡大・強化する

  • パネルが発電所構外に飛散した場合は報告を義務づける。
  • 50kW以上にもパネルの脱落・飛散が生じた場合に、報告義務を課す。(これまでは500kW以上が対象)

これまでの認定はどうなる?

改正法の施行日である2017年4月1日(予定)時点で、電力会社との接続契約が締結が済んでいる案件、発電開始済みの案件は、現行FIT法の買取のしくみや価格が維持されます。

2017年4月1日(予定)時点で電力会社との接続契約を締結していない案件は、現在のFIT法に基づく認定が失効します。
ただし電力会社との接続契約にかかる時間を考慮し、以下の猶予期間内に接続契約を締結すれば、現在の認定を改正後のFIT法の下での認定とみなされる経過措置があります。

  • 認定から施行日までに十分な期間(9ヶ月)を確保できない場合は、認定から9ヶ月の猶予期間。
  • 系統入札プロセス※に入っている場合は、同プロセス終了から6ヶ月の猶予期間。

※系統増強の工事費負担金を複数の事業者で共同負担するための手続き。

施行予定日(来年4/1)における事業進捗と経過措置の関係

出典:資源エネルギー庁

系統入札の状況

系統入札の状況 出典:資源エネルギー庁

電力会社の接続待ちの場合はどうなる?

現在、認定済みで未稼働の案件の中には、電力会社との系統接続の調整に時間がかかっているものもあります。
施行予定の2017年4月1日に向けて、接続契約を進める案件の増加も予想されるため、電力会社には十分な体制を構築するなどの対応が求められています。
接続契約の締結を改正法の施行予定日に間に合うための各電力会社への申し込み期日は、今後各電力会社より発表される予定です。

※2016/5/26追記
2017年3月31日までに接続契約の締結を完了させるには、遅くとも2016年6月30日までに接続の申し込みを行うよう、各電力会社より案内がありました。

系統連系に関する各電力会社の問い合わせ先

各電力会社のお近くのお客様センターまたは担当営業所へお問い合わせください。
お近くのお客様センターまたは担当営業所は各電力会社のウェブページでご確認ください。
※ご不明な場合は下記までお問い合わせ下さい。

北海道電力:011-251-4342
東北電力:0570-0109-33(低圧太陽光)/0120-175-466(上低圧太陽光以外)
東京電力パワーグリッド:0120-995-007
中部電力:052-973-2194
北陸電力:0120-167-540
関西電力:0800-777-3081
中国電力:082-544-2571
四国電力:0120-410-761
九州電力:092-761-3031
沖縄電力:0120-586-391

参考:

※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください。