大規模な太陽光発電が作れる大きさのひとまとまりの土地を分割して、複数の太陽光発電設備、主に低圧に分割して連系する、いわゆる「分割」「分譲」太陽光案件。
FITの野立て案件でも、かつてはひとまとまりの土地に多数の低圧案件を作る“分譲案件”に人気が集まりましたが、現在では意図的な分割とみなされると認定を受けられなくなっていることをご存知の方も多いでしょう。
参考:分割案件の審査が厳格化 | エコめがねエネルギーBLOG

一方、「自己託送」や「オフサイトPPA」など、FIT認定を受けない野立て太陽光発電の場合、分割して接続する案件がここ数年急増しているそうです。
非FITの太陽光発電は、再エネ導入拡大や分散グリッド推進の取り組みとして導入が加速していますが、細かく分割されることで社会的コストが増大することもあり、改善すべき制度の課題として検討が進められました。
4月1日から電気事業法施行規則が改正され、規定が設けられました。分割案件に対する経緯や、今回の変更内容などをご紹介します。

分割案件とは

ひとまとまりの土地を意図的に分割した太陽光発電設備のこと。

  • 50kW未満(低圧)と50kW以上(高圧)では保安上の取扱いが大きく異なる。
  • 高圧にするとキュービクル(高圧受電設備)の設置が必要。
  • 低圧の方が連系が早い。

などの理由から、高圧の設備を作れる面積があるにもかかわらず、複数の低圧案件に分割するケースが多くあります。

なぜ分割案件がいけないのか?

本来適用されるはずの保安規制が適用されない

  高圧 低圧
電気工作物の位置付け 事業用電気工作物 一般用電気工作物
事前規制(工事計画の届出、使用前自主検査、使用前自己確認) 2,000kW以上で工事計画届出及び自主検査が必要
50kW以上で自己確認が必要
不要
国の技術基準と連携した民間のガイドラインやチェックリスト、一定水準の技術者による施工・ 保守点検等で保安確保。
事後規制(報告徴収、事故報告) 報告徴収・事故報告が必要 報告徴収・事故報告が必要
主任技術者 必要
2,000kW未満は外部委託が可能
不要
保安管理 保安規程に基づき、主任技術者が管理 「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」に基づき、 発電設備設置者が自主的に管理

発電設備を低圧に分割することで、工事計画の届出等の事前規制や主任技術者の配置が不要となり、本来適用される保安上の規制を回避するために分割するのは、社会的な不公平が発生します。

不必要な電柱、メーター等の設置が非効率

設備ごとに構内電柱、変圧器、計量装置の設置が必要となるため、社会的に非効率です。
不必要な電柱、メーター等の設置が非効率

送配電の管理コスト増、電気料金への転嫁が発生する

  分割前 (49.5×N)kw×1箇所 分割 49.5kw×N箇所
発電事業者 ・受電設備
・内線設備
・柵、塀など
・内線設備
・柵、塀など
一般送配電事業者 ・高圧引込線(1か所)
・計量装置(1セット)
・高圧線
・構内電柱(複数)、支線等
・柱上変圧器(複数)
・低圧引込線(Nか所)
計量装置(Nセット)

上の表を見ても分かるように、分割して複数の発電設備とした場合、一般送配電が負担して設置、管理する設備がかなり増えます。
一般送配電事業者が電柱、変圧器、計量装置の管理費用を負担しており、本来不要な設備を設置する非効率な運用により管理コストが増加することで、結果的に電気料金への転嫁(値上げ)につながりかねません。

今回の改正での変更点

1つの発電設備として接続契約を結ぶ単位(一の需要場所)は、電気事業法施行規則で定められていますが、分割を除外する定義が付け加えられました。

旧:柵、塀その他の客観的な遮断物によって明確に区画された一の構内
分割された各発電設備がそれぞれ「一の需要場所」として規定できたため、それぞれ引込線を引き、系統と接続することができました。
旧:柵、塀その他の客観的な遮断物によって明確に区画された一の構内

新:柵、塀その他の客観的な遮断物によって明確に区画された一の構内。ただし、特段の理由がないのに複数の発電設備を隣接した構内に設置する場合を除く。
特段の理由がないのにひとまとまりの土地を分割して複数の発電設備が設置されているとみなされた場合、まとめて「一の需要場所」となります。
これまでフェンスなどで区画し、複数の発電設備として接続していたような案件も、ひとまとまりの発電設備とみなされるケースが出てくるでしょう。
FIT認定を受けない設備も、系統に接続する場合は一般送配電事業者による接続検討や技術検討の際に審査され、意図的に分割しているとみなされた場合は、連系できない事態となりえます。
新:柵、塀その他の客観的な遮断物によって明確に区画された一の構内。ただし、特段の理由がないのに複数の発電設備を隣接した構内に設置する場合を除く。

「分割案件」とみなされる条件

意図的に分割しているかどうか、「実質的に同一の申請者」、「実質的に一つの場所」であるかどうかで判断されます。

実質的に同一の申請者

隣接又は近接する場所に、別の太陽光発電設備があり「発電事業者」「登記簿上の地権者」のいずれかが同じ場合は「実質的に同一の申請者」からの申請として、原則として分割案件と判断されます。

申請日から1年以内の地権者を確認し、同じ地権者であった場合、実質的に同じ申請者とみなされます。10〜50kW未満の低圧太陽光発電設備は、分割案件が多く存在していることもあり、最大2014年度まで遡及して確認が行われ、地権者が同じ場合は分割と判断される場合があります。
※地権者:その土地を所有・処分する権利を有する者

実質的に一つの場所

  • 私道等を意図的に設置し、分断していると認められる場合
  • 他事業者と共同して同事業者の連続を避けつつ複数の需要場所(複数の発電所)を施設する場合
  • 同一の事業者が交互に異なる種類の再生可能エネルギー発電設備を設置する場合

「特段の理由」とは

今回の改正で、
柵、塀その他の客観的な遮断物によって明確に区画された一の構内。ただし、特段の理由がないのに複数の発電設備を隣接した構内に設置する場合を除く。
と規定されましたが、「特段の理由」とは以下のケースを指します。

  1. 公道や河川等を元から挟んでおり、物理的に統合することが出来ない場合
  2. 農地などのように他用途への使用に制限が課されていることが客観的に認められる土地を挟む場合
  3. 住宅、工場、店舗(不動産登記法における建物の要件を満たしている建物)の屋根に設置されている設備と接する場合(出力が20kW以上で、太陽光パネルの一部を屋根に設置し、残りを地上に設置する場合を除く)
  4. 分割してもなお全ての案件が特別高圧(2,000kW以上)の場合
  5. 異なる種類の発電設備を設置する場合
  6. 2013年度までにFIT法の認定を受けた設備と接した場所に設置する場合
  7. 既に運転を開始している発電設備から電線路を引いて、発電設備を設置する場合(一の需要場所として扱う場合)

「分割案件」判断はケースバイケース

条件的に「分割案件」と該当する場合であっても、分割によって回避される法規制の有無、社会的非効率の発生の程度等を実質的に評価し、分割案件に該当しないと判断する場合もあるようです。
具体的に案件をお持ちで迷われる際は、都度一般送配電事業者さまへご確認ください。

参考

※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください。