太陽光発電事業者さまや販売店さまは、「系統の空きがなくて接続ができない」事態を経験されている方が少なからずおられると思います。
系統の容量や空容量について、あらためてご紹介します。
系統とは?
系統とは、
・発電(火力発電所や太陽光発電所など)
・変電(変電所など)
・送電(送電線など)
・配電(配電線や引込線など)
という発電から消費までの一式の設備をさします。
この系統へ各発電設備からの電力を送ることができるように接続することを「系統連系」といいます。
大規模な発電所からは超高電圧で電気を送り出します。超高電圧にするのは送電ロスを少なくするためです。変電所で段階的に電圧が下げられ、消費されるところ(工場や家庭)へと送られます。
電気の伝わるスピードはとても速く、発電した電力はすぐに消費する場所に届きます。
現在は電気を大量に貯蔵することはできないので、需要(消費)と供給(発電)のバランスをとる必要があり、消費される量に合わせた電力を作る必要があります。
系統の「容量」とは?
1.送電線、変電設備の容量
送電線や変電設備の容量には限度あり、その容量は接続したい地域の送電線や変電所によって異なります。
また容量いっぱいまで使えるわけではありません。停電を防ぐために利用率は50%(2回線の場合)とされていますので、送電線の容量の50%が運用に使える上限となります。
なぜ50%しか使えないのかというと、「N−1(えぬ・まいなす・いち)基準」という国際的な運用ルールに則っているためで、故障したときに予備の容量を確保しているのです。
「N−1基準」について詳しくは、以下の記事で紹介していますので、ご参考になさってください。
参考:日本版コネクト&マネージとは?
2.空容量の範囲内で先着順に接続受け入れ
接続契約をした順番に系統の容量が確保されます。
接続申し込みは済んでいるが実際にはまだ運転を開始していない状態でも、容量が押さえられています。
空けておく必要がある50%を引いた50%のうち、接続済み、接続申込済みの容量を除いた残りが空容量ということになります。
実際に空きはどれくらいあるのか?
どこにどれくらいの空容量があるのでしょうか。
各電力会社が系統の空き容量を公開しています。
地図上にマッピングしたリンク集を作りましたので、ご参考になさってください。
系統連系空容量マップ
より多くの再エネを接続するには
1.系統運用ルールの変更
系統の空容量がないエリアも多くありますが、実際に送電設備が常に利用されているというわけではありません。
そこですでにある系統を効率的に利用するための運用ルールの検討が進んでいて、「日本版コネクト&マネージ」と呼ばれています。まず接続(コネクト)し、管理(マネージ)するという方法です。
2.地域間連系線の増強
南北に長い日本では、北海道・東北・東京・北陸・中部・関西・中国・四国・九州・沖縄とエリアごとに系統が管理されていますが、沖縄を除き各エリア間で連系されています。
例えば九州でよく晴れて太陽光発電の発電量が多く、需給のバランスがとれないときに中国エリアへ電力を送るということが可能で、実際に「域外送電」が行われ、需給バランス調整にも役立てられています。
しかし送ることができる電力量は限られており、吸収しきれないのが現状です。
このエリア間の送電できる量を増やすとりくみも行われていて、
- 北海道本州間連系設備の容量を2019年3月末までに、60万kWから90万kWに増強
- 東北東京間連系線を2027年11月目標に、1,262万kWから450万kW以上増強
- 東京中部間連系設備を2027年度末目標に、120万kWから300万kWに増強
と増強計画が建てられています。
3.出力制御対応
電力の供給が需要を上回った場合、発電所の種別ごとにその出力を抑制する順番を定めた「優先給電ルール」が定められています。
需要に対して供給が多すぎる場合、まずは揚水運転(揚水発電所で電力を使って水を上げる)を行って需要側を増やすとりくみを行い、次に火力発電所の出力制御を行い供給を減らします。その次に域外へ送電することにより需要側を増やし…と需給バランスをとるための順番が決まっているのです。
参考:優先給電ルールとは?
そうしたとりくみを行ってもなお供給過多になる場合は、再生可能エネルギーの発電量を抑えることが必要になるのです。
天候で左右される太陽光や風力の発電量も、供給過多になった時に遠隔で自動的に出力制御できれば多くの発電設備が系統につなげるというわけです。
参考:今さら聞けない「出力制御」〜なぜ出力制御が必要なのか?〜