数年前から検討されていた発電側課金が、2024年4月から始まります。これまで小売事業者が電力系統の費用を全て負担していましたが、発電事業者も一部の費用を負担することになります。太陽光発電に影響が大きい部分を中心に説明します。
※まだ審議中の事柄も含まれており、今後変更される可能性があります。2024年1月時点の参考情報としてご紹介します。

発電側課金とは

電力系統の維持・拡充に必要な費用は、これまで小売事業者(すなわち電気料金を支払う需要家)が全て負担してきましたが、発電事業者も送配電網を利用しているため一部の費用を負担させる、というのが発電側課金です。

出典:発電側課金の導入について中間とりまとめ(案)| 電力・ガス取引監視等委員会

どのような発電事業者が課金されるか

系統に接続し、かつ、系統側に逆潮させている電源全てが対象です。
ただし、以下の発電事業は対象外です。
・系統側への逆潮が10kW未満
・既認定・調達期間中のFIT/FIP
※FIT/FIP期間終了後、継続して事業を行う場合に発電側課金の対象となります。
※これから認定を受けるFIT/FIPは発電側課金の対象です。

どのように課金されるか

発電側課金は「kW課金(固定料金)」と「kWh課金(従量料金)」の2つの方法で実施されます。

kW課金(固定料金)

系統接続時に決定する「最大受電電力(kW)」を用いて算定されます。
自家消費型太陽光発電のように需要と発電が同一地点にある場合、発電側の逆潮kWが需用側の託送契約kWを上回る分が課金対象です。不使用(逆潮しなかった)月は課金額が半額になります。

出典:発電側課金の導入について中間とりまとめ(案)| 電力・ガス取引監視等委員会

kWh課金(従量料金)

メーター計測値で算定されます。
自家消費がある場合は除外されます。また揚水発電や蓄電池のkWh課金は免除されます。

出典:発電側課金の導入について中間とりまとめ(案)| 電力・ガス取引監視等委員会

10kW以上の場合はオンライン代理制御が実施されており、メーター計測値と買取対象となる電力量が異なります。発電側課金は代理制御分が加味された買取対象の発電電力量が対象です。
オンライン代理制御の精算と同様、kWh課金はいったん計量値で請求され、買取対象電力量の判明後に代理制御分を加味した精算が行われます。

オンライン代理制御について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
経済的出力制御(オンライン代理制御)とは?出力制御対象も拡大?

どのように支払うのか

発電側課金は、発電量調整供給契約のしくみを活用して課金・回収されます。
逆潮する発電設備は、自らあるいは発電BGが一般送配電事業者との間で締結する発電量調整供給契約の枠組みに参加しているため、このしくみが活用されます。

発電量調整供給契約とは

発電した電力を送り届けるために利用する一般送配電事業者が提供する「電力小売託送サービス」のひとつで、発電事業者が通知した発電計画と実際の発電電力量の過不足を一般送配電事業者が調整して供給します。FIT認定を受けた発電事業の場合は同時同量への対応が不要ですが、FIT以外で逆潮する場合は送配電との発電量調整供給契約の締結が必要です。

発電量調整供給契約について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
非FIT太陽光発電を連系するときに必要な「発電量調整供給契約」

課金単価はどう決まるか

基本的な考え方

発電側・需要側の両が利用している電力系統設備の固定費を、発電側・需要側の両方で負担するという趣旨のもので、エリアなどにより必要な費用は異なります。
送配電事業者ごとに算定されるため、全国一律ではありません。

単価算定STEP1 発電側負担の割合を算出

上位系統の固定費のうち、発電側負担の原価の割合を算出します。発電側と需要側の課金対象kWで按分します。

出典:発電側課金の導入について中間とりまとめ(案)| 電力・ガス取引監視等委員会

単価算定STEP2 発電側負担分をkWとkWhの1:1で按分

kW課金:kWh課金の比率は1:1で、発電側で負担する対象原価を1:1で按分し、kW課金単価とkWh課金単価を算出します。

出典:発電側課金の導入について中間とりまとめ(案)| 電力・ガス取引監視等委員会

発電側課金単価は5年で見直し

レベニューキャップ期間と同じ5年間で単価を見直します。
2023年からレベニューキャップ制度が始まり、2023年度から2027年度が第1規制期間です。そのため、発電側課金の第1期間は2024年度から2027年度の4年間となります。

レベニューキャップ制度とは

2023年度から始まった「託送料金」を決めるための制度で、送配電網の投資やコストの効率化を目指しています。

レベニューキャップ制度について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
2023年度から導入される新託送料金制度「レベニューキャップ制度」とは

割引制度

割引制度の意図

立地によって送配電設備の整備費用へ与える影響は異なります。この影響を割引きにより課金額に反映させることで、送配電網の追加増強コストが小さい地域への導入を誘導します。

送配電関連費用に与える影響に応じたインセンティブ設計のイメージ

出典:発電側課金の導入について中間とりまとめ(案)| 電力・ガス取引監視等委員会

割引制度の概要

kW課金部分を対象に割引があります(kWh課金は割引されません)。系統への影響により、AとBの2つの割引があります。立地によってAとBの両方が適用される場合もあります。割引Aは基幹系統の将来的な投資を効率化し、送電ロスを削減する効果のある電源を対象とし、割引Bは特別高圧系統の将来的な投資を効率化する効果のある電源を対象とします。

割引エリア

各送配電事業者が割引エリアを公表しています。
発電側課金の導入に伴う割引エリアの公表・割引区分の通知について | 送配電網協議会

まだ未認可のため変更の可能性があります。確定情報は認可後に送配電事業者から該当の発電事業者へ通知されますので、現時点では参考情報としてご活用ください。

課金単価・割引単価はいくらか

各一般送配電事業者が「託送供給等約款」の変更認可を申請しており、認可前の情報であり変更の可能性がありますが、2024年1月時点の参考情報としてご紹介します。

北海道電力ネットワークの申請内容

系統連系受電サービス料金(本土)
  課金単価
kW単価(基本料金) 110.0円/kW
kWh単価(従量料金) 0.35円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 10万ボルト超 59.4円/kW
上記以外 59.4円/kW
A-2 10万ボルト超 9.9円/kW
上記以外 19.8円/kW
A-3 10万ボルト超 4.95円/kW
上記以外 9.9円/kW
B-1 42.9円/kW
B-1 13.2円/kW

2023年12月5日の北海道電力ネットワーク株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

東北電力ネットワークの申請内容

系統連系受電サービス料金(本土)
  課金単価
kW単価(基本料金) 93.04円/kW
kWh単価(従量料金) 0.29円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 14万ボルト超 34.02円/kW
上記以外 34.02円/kW
A-2 14万ボルト超 6.86円/kW
上記以外 13.73円/kW
A-3 14万ボルト超 3.43円/kW
上記以外 6.86円/kW
B-1 46.77円/kW
B-1 18.92円/kW

2023年12月1日の東北電力ネットワーク株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

東京電力パワーグリッドの申請内容

系統連系受電サービス料金(離島を除く)
  課金単価
kW単価(基本料金) 87.01円/kW
kWh単価(従量料金) 0.28円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 14万ボルト超 30.86円/kW
上記以外 30.86円/kW
A-2 14万ボルト超 5.72円/kW
上記以外 11.44円/kW
A-3 14万ボルト超 2.86円/kW
上記以外 5.72円/kW
B-1 48.99円/kW
B-1 17.80円/kW

2023年12月1日の東京電力パワーグリッド株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

中部電力パワーグリッドの申請内容

系統連系受電サービス料金
  課金単価
kW単価(基本料金) 80.42円/kW
kWh単価(従量料金) 0.26円/kWh

2023年12月1日の中部電力パワーグリッド株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 14万ボルト超 42.25円/kW
上記以外 42.25円/kW
A-2 14万ボルト超 8.80円/kW
上記以外 17.60円/kW
A-3 14万ボルト超 4.40円/kW
上記以外 8.80円/kW
B-1 33.36円/kW
B-1 13.66円/kW

北陸電力送配電の申請内容

系統連系受電サービス料金
  課金単価
kW単価(基本料金) 93.47円/kW
kWh単価(従量料金) 0.28円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 14万ボルト超 27.73円/kW
上記以外 27.73円/kW
A-2 14万ボルト超 4.92円/kW
上記以外 9.82円/kW
A-3 14万ボルト超 2.45円/kW
上記以外 4.92円/kW
B-1 60.95円/kW
B-1 21.54円/kW

2023年12月1日の北陸電力送配電株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

関西電力送配電の申請内容

系統連系受電サービス料金
  課金単価
kW単価(基本料金) 97.98円/kW
kWh単価(従量料金) 0.32円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 14万ボルト超 32.19円/kW
上記以外 32.19円/kW
A-2 14万ボルト超 5.78円/kW
上記以外 11.55円/kW
A-3 14万ボルト超 2.89円/kW
上記以外 5.78円/kW
B-1 60.35円/kW
B-1 21.92円/kW

2023年12月1日の関西電力送配電株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

中国電力ネットワークの申請内容

系統連系受電サービス料金(本土)
  課金単価
kW単価(基本料金) 85.02円/kW
kWh単価(従量料金) 0.28円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 基幹系統 37.24円/kW
上記以外 37.24円/kW
A-2 基幹系統 6.79円/kW
上記以外 13.56円/kW
A-3 基幹系統 3.39円/kW
上記以外 6.79円/kW
B-1 39.69円/kW
B-1 14.47円/kW

2023年12月1日の中国電力ネットワーク株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

四国電力送配電の申請内容

系統連系受電サービス料金
  課金単価
kW単価(基本料金) 92.73円/kW
kWh単価(従量料金) 0.25円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 10万ボルト超 46.92円/kW
上記以外 46.92円/kW
A-2 10万ボルト超 7.34円/kW
上記以外 14.66円/kW
A-3 10万ボルト超 3.66円/kW
上記以外 7.34円/kW
B-1 39.97円/kW
B-1 10.40円/kW

2023年12月1日の四国電力送配電株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

九州電力送配電の申請内容

系統連系受電サービス料金(本土)
  課金単価
kW単価(基本料金) 85.10円/kW
kWh単価(従量料金) 0.23円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 14万ボルト超 38.56円/kW
上記以外 38.56円/kW
A-2 14万ボルト超 7.93円/kW
上記以外 15.86円/kW
A-3 14万ボルト超 3.97円/kW
上記以外 7.93円/kW
B-1 39.74円/kW
B-1 16.36円/kW

2023年12月1日の九州電力送配電株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

沖縄電力の申請内容

系統連系受電サービス料金(沖縄本島)
  課金単価
kW単価(基本料金) 69.95円/kW
kWh単価(従量料金) 0.24円/kWh
系統設備効率化割引(kW単価の割引)
区分 受電電圧 割引単価
A-1 6万ボルト超 16.50円/kW
上記以外 16.50円/kW
A-2 6万ボルト超 4.26円/kW
上記以外 8.51円/kW
A-3 6万ボルト超 2.13円/kW
上記以外 4.26円/kW
B-1 51.07円/kW
B-1 26.19円/kW

2023年12月1日の沖縄電力株式会社の申請内容より作成。今後変更される可能性があります。

【参考】発電側課金額想定

容量49.5kW、発電量5,000kWh/月の場合の発電側課金額
  kW単価 kWh単価 基本料金 従量料金 合計
北海道電力ネットワーク 110.0 0.35 5,445 1,750 7,195
東北電力ネットワーク 93.04 0.29 4,605 1,450 6,.055
東京電力パワーグリッド 87.01 0.28 4,307 1,400 5,707
中部電力パワーグリッド 80.42 0.26 3,981 1,300 5,281
北陸電力送配電 93.47 0.28 4,627 1,400 6,027
関西電力送配電 97.98 0.32 4,850 1,600 6,450
中国電力ネットワーク 85.02 0.28 4,208 1,400 5,608
四国電力送配電 92.73 0.25 4,590 1,250 5,840
九州電力送配電 85.1 0.23 4,212 1,150 5,362
沖縄電力 69.95 0.24 3,463 1,200 4,663

参考:一般送配電事業者10社から託送供給等約款の変更認可申請を受理しました | 経済産業省

まとめ

「10kW以上逆潮する」かつ「既認定・調達期間中のFIT/FIP以外」の発電所は2024年4月から発電側課金が課されます。

  • kW課金(固定)、kWh課金(従量)で課金されます。
  • 系統への影響度により割引制度があります。
  • 単価は立地により異なります。

参考:

解説動画

本記事を分かりやすく動画で説明します。

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