「接続可能量」はその名の通り「接続が可能な量」だと思われますが、「2015年度算定値」と「30日等出力制御枠」の2つの「接続可能量」が存在します。
11月10日に行われた経産省・系統ワーキンググループ(第7回)で接続可能量の算定結果が示されましたが、太陽光発電の算定結果とともに、接続可能量についてまとめてご紹介します。
今さら聞けない「出力制御」〜なぜ出力制御が必要なのか?〜
太陽光発電の接続可能量(2015年度算定値)算定結果
11月10日に開催された経済産業省・系統ワーキンググループ(第7回)で、北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力から「接続可能量(2015年度算定値)」が示されました。
2015年度算定値
算定値 | 2014年度 | 2015年度 | 増減要因 |
---|---|---|---|
北海道 | 117万kW | 0万kW | 需要減少 |
東北 | 552万kW | 505万kW | 需要減少 |
北陸 | 110万kW | 101万kW | 需要減少等 |
中国 | 558万kW | 660万kW | 電源構成等 |
四国 | 257万kW | 230万kW | 需要減少 |
九州 | 817万kW | 849万kW | 電源構成等 |
沖縄 | 49.5万kW | 48.3万kW | 需要減少 |
中国電力は、島根原子力発電所1号機の廃止に伴い、2014年度算定値と比較して102万kW増加しました。
九州電力は、玄海原子力発電所1号機の廃止に伴い、2014年度算定値と比較して32万kW増加しました。
北海道電力、東北電力、北陸電力、四国電力、沖縄電力では、節電が進んだこと等により需要が減少していることから、2014年度算定値と比較して減少しました。
太陽光発電の接続可能量(30日等出力制御枠)見直し結果
「接続可能量(2015年度算定値)」算定結果をふまえて「接続可能量(30日等出力制御枠)」も一部見直されました。
中国電力は30日等出力制御枠も見直され、660万kWに拡大されました。
その他の電力会社は据え置きです。
九州電力は太陽光発電の2015年度算定値が増加しましたが、接続済+接続契約申込量が「30日等出力制御枠」を既に超えており、2014年度のまま据え置かれましたが、まだ接続可能量を超えていない風力発電が100万kWから180万kWへ大きく引き上げられました。
30日等出力制御枠
30日等出力制御枠 | 接続済+接続契約申込量 (7月末) |
|
---|---|---|
北海道 | 117万kW | 203万kW |
東北 | 552万kW | 753万kW |
北陸 | 110万kW | 85万kW |
中国 | 660万kW | 511万kW |
四国 | 257万kW | 251万kW |
九州 | 817万kW | 1,481万kW |
沖縄 | 49.5万kW | 37万kW |
接続可能量にまつわるこれまでの経緯
2014年10月
太陽光発電の大量申し込みにより接続保留問題が発生し(2014年9月)、系統ワーキンググループ(以下、系統WG)にて「接続可能量(2014年度算定値)」の算定について検討が開始されました。(第1回系統WG)
2014年12月
「接続可能量(2014年度算定値) 」の算定結果が公表されました。(第3回系統WG)
- 北海道電力:117万kW
- 東北電力:552万kW
- 北陸電力:110万kW
- 中国電力:558万kW
- 四国電力:257万kW
- 九州電力:827万kW
- 沖縄電力:49.5万kW
全国の10地域のうち、電力需要の大きい「東京」「中部」「関西」を除いた「北海道」「東北」「北陸」「中国」「四国」「九州」「沖縄」の電力会社において、系統に接続できる「接続可能量」が設けられました。
2015年3月
接続可能量(2014年度算定値)の算定結果をもとに出力制御見通しが策定されました。(第5回系統WG)
2015年10月
「接続可能量」の名称が、紛らわしく誤解が生じるとの理由で見直されました。
それまで「接続可能量」という1つの名称で用いられていたものを、「接続可能量(◯◯年度算定値)」「接続可能量(30日等出力制御枠)」の異なる表現を使うことになりました。
接続可能量(◯◯年度算定値)とは?
2014年12月に接続可能量(2014年度算定値)が算定されましたが、電力需要は気候や景気等の影響で毎年短期的に変動するため、直近の需要実績から毎年度算出するものが◯◯年度算定値とされるものです。
「接続可能量(◯◯年度算定値)」の算定方法に関する考え方
前年度の各社需要実績に、余剰買取による太陽光発電の自家消費分を考慮した実需要に対し、
火力や原子力、地熱、水力発電などの各電源の供給力、
揚水式水力の揚水運転の対応可否や、揚水可能量等をもとに接続可能量が算定されます。
① 太陽光・風力の出力が大きい状況では、火力電源を安定供給に必要な最低出力とする。・・(下図のA)
② その上で、電気の供給量が需要量を超過する場合、まずは揚水運転を実施し、できる限り余剰の再エネ電気を吸収。・・・(下図のB)
③ それでもなお、太陽光・風力の余剰電力が発生する場合は、年間30日、年間360時間(太陽光)、年間720時間(風力)を上限とする出力制御を実施。・・・(下図のC)
④ 1発電所当たりの再エネ電気の出力制御日数が年間30日、年間360時間(太陽光)、年間720時間(風力)まで達するまで、太陽光発電・風力発電を受入れることとし、「接続可能量」を算定。(下図のD)
接続可能量(30日等出力制御枠)とは?
出力制御ルールにおいて、『接続申込みが接続可能量を超えた場合…』と書かれている「接続可能量」は、この「30日等出力制御枠」のことです。
出力制御ルール詳細
経産省の資料では「FIT制度において、電力会社が30日、360時間(太陽光)、720時間(風力)の出力制御の上限を超えて出力制御を行わなければ追加的に受入不可能となる時の接続量」と説明されています。
固定価格買取制度で20年間買い取る「接続可能量」が短期的な観点から変動するのは適切ではないとされ、需要変動によっては見直されません。
ただし電源構成に大きな変化(発電所の新増設や廃止等)があった際に、接続申込量が「◯◯年度算定値」に達していなかった場合は、30日等出力制御枠も見直されます。
参考:
各社接続可能量(2015年度算定値)の算定結果|資源エネルギー庁(PDF)