学校や公民館などの公共施設の屋根や屋上を借りて設置する太陽光発電が増えています。
「屋根貸し太陽光」や「第三者所有モデル」と呼ばれています。
屋根貸しをすることは、自治体にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは屋根貸しをする自治体や、そうすることで得られるメリット、また屋根を借りることで発電事業者が得られるメリットについてご紹介します。
屋根貸しのしくみ
学校や公民館などの建物の所有者である自治体が屋根・屋上を貸し出し、借り受けた発電事業者が太陽光発電設備を設置します。
太陽光発電設備の設置費用は発電事業者が負担し、発電した電力は発電事業者が電力会社へ売電、売電収入から自治体へ賃料を払う、というモデルです。
屋根貸しをする自治体
屋根貸しをしている自治体は複数あります。その一部をここで紹介します。
- 神奈川県
- 神奈川県は屋根貸しを早くから開始していた自治体のひとつです。神奈川県内の公共施設への設置を促進し、公共施設の屋根を借りて行う太陽光発電事業を「新たなビジネスモデル」として全国に発信していくことを目的としています。
- 大阪府
- 大阪府は、府が所有している建築物の屋根や土地を太陽光発電事業者に貸し付けることで、太陽光発電システムの活用の場を広げ、再生可能エネルギーの導入促進を目的としていて、屋根貸し事業に取り組んでいます。
- 浜松市
- 静岡県浜松市は、再生可能エネルギーの導入によるエネルギー自給率の向上を目的として、市内の小学校の屋根を太陽光発電事業者に貸し出す取り組みを行っています。
自治体が屋根貸しをするメリット
自治体が公共施設の屋根を貸し出すことで、屋根の使用料による収入が得られる、太陽光発電設備の増加による再生可能エネルギーの普及を促進できる、雇用創出による地域経済の活性化などのメリットがあります。しかし、屋根貸しによるメリットはそれだけではありません。
- 災害対策になる
- 地震などの災害が発生した際、避難所として利用される学校や公民館。
屋根に太陽光発電があれば、災害で停電したとしても、晴れて太陽光で発電している時間帯は電気を使うことができ、自立電源を確保できます。 - 賃料・償却資産税が得られる
- 未利用のスペースを貸すことで賃料収入が得られ、有効活用ができます。
また太陽光発電設備は発電事業者の所有ですが、これに対する固定資産税が発生し、自治体の税収増加につながります。 - 屋根、屋上の保護と、節電効果
- 屋上を太陽光パネルで覆うことにより、日光や風雨による経年劣化をおさえることができます。また遮熱効果により冷暖房コストが抑えられると言われています。
- 環境問題解決の一助になる
- 地球温暖化や化石燃料の枯渇といった問題への対策は世界規模で考えなければならない課題のひとつです。学校の屋根に太陽光発電設備が設置してあることで、再生可能エネルギーのことや環境問題のことが子どもたちにとってより身近な存在になります。子どものころからこういった事柄について意識させることで、未来の環境問題解決の一助となる可能性が高くなるのです。
- 初期投資やメンテナンスが不要
- 発電事業者によって設置・メンテナンスがされるため、自治体の金銭的な負担はありません。
学校の屋根への太陽光発電は、自治体の予算や人員不足によってなかなか普及が進みませんでしたが、屋根貸しによってハードルが下がったと言えるでしょう。
発電事業者が屋根借りをするメリット
貸し出す自治体にとってはメリットがある屋根貸しですが、屋根を借りる発電事業者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
- 安全な投資になる
- 公共施設の屋根を借りることで、初期費用を抑えた投資をすることができます。特別税制処置により特別償却50%、税額控除4%を受けることが可能で、株や不動産投資と比べてもリスクが低く、安定した収益を期待することができる投資になります。
- 災害リスクが少ない
- 学校や公民館などは、防災対策がしっかりしており、災害時の倒壊や破損のリスクが高くありません。また防犯面も強固なため、盗難の心配もそれほどしなくて済みます。また、学校の周囲には比較的背の高い建物がないので、日当たりが悪くなるという問題もないのです。
貸す側にも借りる側にもメリットがある屋根貸し事業。
屋根貸しはこれからも取り組む自治体が増えていくものと予想されます。
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