事業認定取得後や運転開始後に、蓄電池を併設することについてのルールが変わります。
過積載のピークカット分を無駄にしないよう蓄電池を増設したいとお考えの方は、買取価格の変更されるかもしれませんので、注意が必要です。

蓄電池増設にまつわる改正が行われる背景

過積載が常態化

10kW以上の太陽光発電では、太陽光パネルをパワコンの出力よりも大きくする「過積載」が一般的になっています。

しかし認定取得後にパネルの価格が下がってから増設し、高い買取価格を保持して売電を行うのは、不当に国民負担を増やすとして問題視され、2017年8月に制度改正が行われました。(参考記事:増設過積載で買取価格が変更?
改正の概要としては、一定規模以上の増設を行う場合は、(増設分だけでなく)設備全体の買取価格を最新のFIT価格に変更する、というものです。
稼働後にパネルの価格が下がってから増設しても“うまみ”がなくなったため、今ではあまり行われないかと思います。
認定を取得する時点か過積載にしておくことは問題ないため、これから建設する設備は(土地面積などの事情が許せば)過積載が行われるのが一般的になっていると思われます。

出典:既認定案件による国民負担の抑制に向けた対応(資源エネルギー庁)

ピークカットがもったいない

過積載を行っていると、発電条件がよいときはピークカットされ、いわば発電した電気が捨てられていました。
蓄電池の価格も下がりつつあり、ピークカット分を蓄電池に貯め、夕方以降に放電・売電を行えばいいのではないか、と検討されはじめました。

出典:既認定案件による国民負担の抑制に向けた対応(資源エネルギー庁)

増設した蓄電池からの放電分を、高いFIT価格で売電することは認められない

安くなったパネルを積み増しして「増設・過積載」を行うと、不当に国民負担を増やす、と制度改正が行われましたが、これと同じ理由により事後に蓄電池を併設する(この記事では以降「増設・蓄電池」と呼ぶことにします)場合も高いFIT価格で売電を行うことは認められてはいません。
しかしこれまで「増設・蓄電池」の扱いについての明確な周知もなかったため、発電事業者側からするとあいまいなところです。

蓄電池にためた電気を夕方以降に放電するのは、系統の安定に役立つ

国民負担を増やすという意味では増設・蓄電池は不当と見られていますが、
時間帯や天候によって不安定となる太陽光発電からの電力を平準化するのに役立ちます。
とくに太陽光発電が増えたときに問題となるのが、「ダックカーブ」というわれる現象です。
日中は太陽光が発電するため実質的な電力需要がとても少なくなります。
夕方になると一気に太陽光発電からの電力がなくなるため、実質的な電力需要が急激に増加します。
実質電力需要のグラフが、日中はアヒルの腹で、夕方以降にアヒルの首のように急激な上昇線を描くことから「ダックカーブ」と呼ばれています。

出典:California Independent System Operator

過積載の太陽光発電設備に増設・蓄電池を設置し、夕方以降に蓄電池から放電することは、ダックカーブの解消に役立ちます。
条件を定めた上で、増設・蓄電池も認めていこうということになりました。

以降、改正される内容を紹介していきます。

蓄電池を増設したら買取価格が変わるケースも

ケース1:
蓄電池をPCSより太陽電池側に設置する場合で、区分計量ができない場合
→増設時点の買取価格に変更
区分計量ができない場合は、事業全体の買取価格が増設時点の最新の買取価格に変更されます。
区分計量ができない蓄電池の設置方法

ケース2:
蓄電池をPCSより太陽電池側に設置する場合で、区分計量ができる場合
→蓄電池から放電・逆量流する売電分を「FIT外」で売電する場合は、
蓄電池を経由しない売電分はこれまで通りの買取価格でFIT売電できます。

※FIT外の売電先は(現時点では)FIT売電部分と同一であることが必要です。
区分計量ができる蓄電池の設置方法

ケース3:
蓄電池をPCSより系統側に設置する場合
→買取価格に変更ありません。今回の改正の影響を受けません。
※このケースではピークカット分を蓄電することができない。
系統側に蓄電池を設置する場合

2017年の8月までは、買取価格を変えずに増設過積載ができていましたので、40円や36円など高い買取単価で過積載にしておられる太陽光発電事業もあるかもしれませんが、蓄電池にピークカット分を充電しても、40円や36円のまま売る道は残念ながらないようです。
FIT外の売電がどの程度の価格かは分かりませんが、卸売市場価格を見ると10円/kWh程度のようですので、そのくらいになるのではないかと思われます。

現在は「FIT売電」と「FIT外売電」を同一の事業者が買い取る必要があるとのことですので、実際に蓄電池を増設し区分計量する場合は、すでにFIT売電を行っている東京電力や関西電力などの電力会社に確認することになるでしょう。
また、この改正に関する意見募集の際には「非FITによる蓄電池逆潮流分の売電先は、FITの売電先と必ずしも同一にする必要がないのではないか。」の意見に対し、以下のような回答がされているので、今後は別の事業者への売電できるようになる可能性もあります。

ご指摘の売電方法については、現状においては、買取者は同一であることが必要です。 現在、ビジネス環境の変化を踏まえた電気計量制度・運用の今後のあり方について、「電力・ガス基本政策小委員会」の場を中心に、検討を行っています。ご指摘の内容につきましても、正確な計量が担保されるかどうか等の検討を行い、今後のあり方を検討してまいります。

低圧でも“電気主任技術者の選任”が必要に

蓄電池の増設というところから少し話がそれるかもしれませんが、事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)の改正案に以下の記載が追加されています。

なお、PCS の出力が 50kW 未満である場合であっても、(ⅰ)太陽電池の合計出力が 50kW以上であって、蓄電池を PCS よりも太陽電池側に設置する場合、(中略)電気主任技術者の選任が必要となる。

「低圧は電気主任技術者の選任の必要がない」との認識のまま進めると、蓄電池の増設の際に思わぬコスト増をまねくかもしれません。ご注意ください。

参考:
パブリックコメント:事業計画策定ガイドライン改正案に関する意見公募について | e-Gov
既認定案件による国民負担の抑制に向けた対応 | 資源エネルギー庁
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等の概要」に関する意見公募の実施結果について