毎月送られてくる電気料金の内訳を見てみると「燃料費調整額」という項目が掲載されています。この額は燃料費調整制度のもと決定され、原料の価格が上がれば燃料費調整額も引き上げられ、逆に原料費が下がれば、燃料費調整額も引き下げられるという仕組みです。こうすることで、電力会社と利用者双方が原料費の変動によって損をしないようにしています。
ここでは調整額を出す燃料費調整制度の概要と調整額の算出方法、そして電力会社の売上への影響について紹介します。
燃料費調整制度
燃料費調整制度とは、火力発電のための燃料(原油、液化天然ガス、石炭)の価格変動に応じて毎月の電気料金を調整し、価格変動を電気代に反映させるための制度です。
燃料費調整制度により調整された額が「燃料費調整額」として、普段私たちが支払っている電気料金に含まれています。
毎月電力会社から送られてくる「電気ご使用のお知らせ(電気代の請求書)」にも、記載されていますね。
電気料金の内訳
- 基本料金
- 従量料金(電気量料金)
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金
- 燃料費調整額
では、燃料費調整額はどのように算出されているのでしょうか。
燃料費調整額の算出方法
電力会社は発電のためにかかるコストの基準になる「基準燃料価格」と、原材料のコストを計算するために使う「基準単価」というものを持っています。基準燃料価格が原料費を上回っていた場合、その差額を電気料金からマイナスして、下回っていた場合はプラスします。
しかし、燃料費調整額を出すには実際にかかった原料費(基準単価)の平均値である「平均燃料価格」を出さなくてはいけません。その平均値を基準燃料価格と比較するのです。
基準燃料価格 | 燃料の仕入れ価格の見込みで、料金設定の基準となり、各電力会社ごとに設定されている。 |
基準単価 | 平均燃料価格が1,000円/kl変動した場合の燃料費調整単価 |
平均燃料価格 | 貿易統計実績をもとに算定する燃料価格の3ヵ月間平均値 |
燃料費調整額の算出には、以下の計算式を使います。
プラス調整
(平均燃料価格-基準燃料価格)×基準単価÷1000
マイナス調整
(基準燃料価格-平均燃料価格)×基準単価÷1000
3か月ごとの平均値が毎月算出され、燃料費調整額が電気料金に反映されるのはだいたい2~4か月後になります。
例えば、4月の燃料価格が下がったとしましょう。その場合は、2月、3月、4月の燃料価格の平均と基準燃料価格を比較するのですが、料金への反映は早くて6月、遅くて8月になるのです。
売上への影響とは
電力会社の業績は燃料費の調整に大きく左右されます。燃料の輸入価格が下落すれば、請求電気料金も下がることになるのです。
前述のとおり燃料費調整額が電気料金に反映されるのは2~4か月後ですので、決算時期とのずれがあります。
東京電力の費用内訳を参考にしてみましょう。東京電力の2016年の4月から12月までの燃料費は、前年の同じ時期に比べると約4560億円の減少です。しかし、燃料費調整額の反映にタイムラグがあるため、燃料費調整額の減少と比較するとその額は1830億円少ないということになります。
このように、燃料費調整額は電力会社の業績や決算に大きな影響を与えると言えるのです。
普段何気なく支払っている電気料金は、燃料費調整制度によって変動します。難しい部分ではありますが、仕組みを理解すれば電気エネルギーの理解にもつながるでしょう。今回紹介したことをぜひ参考にしてみてください。