固定価格買取制度(FIT制度)ができてから、急速に広がった太陽光発電。
これまでは認定を取り、発電設備を設置して売電するというのが太陽光発電で利回りを出すものでしたが、それに加え発電設備(発電所)や売電の権利を売買するセカンダリーマーケット(セカンダリー市場)が盛り上がりを見せ始めているのです。
ここでは、太陽光発電のセカンダリーマーケットがどのようなものか、それが盛り上がっている理由や、発電設備を売却するメリット・デメリットなどをご紹介します。
太陽光発電設備を売却する理由とは
2017年4月に施行された改正FIT法により、旧制度から新制度への移行条件として「電力会社との接続契約締結」に期限が設けられ、条件を満たさない場合は認定が取り消されました。
移行期間に、せっかく入手した認定を失効させてしまうのはもったいないという投資家たちが、発電所の設備や権利を売却するようになりました。
ほかにも、セカンダリーマーケットが盛り上がりを見せ始めたのには、以下のような理由があげられます。
保守・管理に手間・コストがかかる
「太陽光発電はメンテナンスフリー」と言われたこともありましたが、屋外に設置するので自然環境の影響も受けやすく、保守・メンテナンスは必要です。太陽光発電は固定価格買取制度が始まってから、投資として人気を集めましたが、保守・管理を想定せずに発電事業を始めた方も少なくないようです。
想定外の手間やコストを今後10年以上にわたってかけなくてはならないのであれば、設備を売却し、その分の費用を本業に回したいと考え始めた投資家が増えたのです。
キャッシュが必要になった
太陽光発電以外にも、小型風力発電など発電事業の選択肢が増えています。
他の投資先を検討するなどして、別の事業に使うための現金を準備するため売却する、というケースもあります。
減価償却費の計上を終えた
太陽光発電への投資を始める理由のひとつに、減価償却費の計上があります。このような目的で太陽光発電投資を始めた方は、そもそも長期の保有を想定しておらず、償却メリットを享受し終えたら、早期に現金化するというケースが多いです。目的を達成したら太陽光発電設備を売却したいという投資家が多いのも、セカンダリーマーケットが盛り上がっている理由のひとつです。
中古発電所のメリット・デメリット
投資家のほうに売却する理由があっても、売却をすることにメリットがなければ実際に売却に踏み出すことはできません。セカンダリーマーケット(市場)は、買い手がいなければ成立しないのです。
太陽光発電所を売却するというのには、安定した買い手が見つかりやすいというメリットがあります。中古の太陽光発電所は、買い手にとってもメリットがあることなのです。
太陽光発電を始めようと考える方が抱く大きな不安が「収益が出るのだろうか」というものです。最低でも初期費用を取り戻したいと考える方も多いでしょう。そのようなときに、中古の太陽光発電所は過去の実績を見ることができるので、収益が予想しやすいのです。また、発電設備を新設する新品とは違い、中古の発電所であればすぐに発電・売電を開始することができます。そして電気の買取価格は年々低下していますが、過去に設定されていたより高い買取価格で、電気の売買が行えるというメリットもあります。
リスクも大きな太陽光発電を収益の予想を立てて始められる中古発電設備に対する需要は大きく、安定した買い手を確保できるというのは、売却する側にとって大きなメリットであると言えます。そして売却することで、それまで行っていた設備点検や修繕などの心配から解放され、まとまった資金を一挙に得られることも、売却するメリットであると言えるでしょう。
しかし、中古発電所の購入には、それなりのデメリットもあるものです。中古である以上購入した後に安定して売電できる期間が短くなります。太陽光発電の固定買取期間は20年(発電能力が10kW以上。10kW未満は10年)ですが、中古発電所は過去に数年稼働していることになるので、購入した後に20年の固定買取がありません。また、中古であれば経年劣化があるもので、メンテナンスや修繕がより頻繁に必要になる可能性があることなどから、売却する商品によっては、買い手がなかなかつかないということもあります。
売却価格査定はどうやっている?
セカンダリーマーケットで太陽光発電設備を売却する際には、査定を受けて売却価格を決定します。
査定の際にチェックされるポイントは以下の通りです。
FIT価格
買取価格の設定が高ければ高いほど、設備の売却価格も高くなる傾向があります。
部材
設備に使われている部材が信頼性の高いメーカーのものであったり、付帯設備(監視カメラなど)があれば売却価格が高くなる傾向があります。
施工業者
実績がある施工業者による施工で、施工後のメンテナンスも請け負っている業者であるなど、施工業者も重要なポイントになります。
立地する環境
太陽光発電が充分に行える環境にあるかどうかも売却価格に影響します。
書類
経済産業省の認定書、電力会社との受給契約書、土地の権利書、設備等の保証書、発電実績がわかる資料などの書類がそろっているかどうかも売却価格に影響します。
現在、売り手と買い手の橋渡しをしてくれる会社も多数登場しており、太陽光発電のセカンダリーマーケットはますます活性化すると予想されています。
太陽光発電をしている方、またはこれから始めようと考えている方は、今後もしっかり太陽光発電のセカンダリーマーケットの動向に目を向けていく必要があると言えるでしょう。