スペインの再生可能エネルギー

近年、世界の各国において、風力・太陽光等の再生可能エネルギーの普及に力が注がれています。その中でも、特に積極的なのは、ヨーロッパの国々です。
そこで今回は、年間電力消費のうち4割近くを再生可能エネルギーでまかなうスペインの再エネの現状をご紹介します。

風力発電が全体の20%近くを占めるスペイン

まず、具体的なスペインの再生可能エネルギーの比率について見ていきましょう。
スペイン唯一の送電会社「REE」社の2015年の発電量の見込値の発表によると、スペインの再エネで最も割合が高いのは「風力発電」で、全体の19.1%にのぼります。

スペインの電力構成

出典:Red Electrica de Espana(REE)社
The Spanish Electricity System. Preliminary report 2015、The Spanish Electricity System 2014

風力発電の発電量は天候に左右されます。
供給が不安定な電源である風力発電を、スペインはどのような方法で、ここまでの比率へ高めることができたのでしょうか?

スペインが風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの比率を高めることができたポイントをご紹介していきます。

スペイン全土の電力を一元管理する唯一の送電会社「REE」社

まず、スペインが、全土にまたがる唯一の送電会社「REE」社(Red Electrica de Espana〈レッド・エレクトリカ・デ・エスパーニャ〉社)により、送電網を一元管理し、電気の需要と供給のバランスをとっているという点が挙げられます。

「REE」社は、国の資本が20%入っているとはいえ、スペイン国内の送電業務を一手に任されている民間会社で、国家の電力供給を保障する責任を持たされています。

マドリード郊外の「REE」社本社内にある中央制御室には、国内のどの系統でどんな電源がどの程度発電しているのかがリアルタイムでわかる巨大な表示盤があり、一目見ればわかるようになっているといいます。「REE」社は、スペイン国内電力の細かな需給予測を日々行い、その上で需給バランスを調整するために、火力と水力発電に関しては4秒ごとに出力調整を行っているのです。

風力発電所の発電量予測システム「SIPREÓLICO」

「REE」社が2001年に開発し、翌年から運用をはじめている「SIPREÓLICO」と呼ばれる「風力発電所の発電量予測システム」も、再エネの普及に深く関与しています。
この「SIPREÓLICO」は、48時間先までの電力量を1時間単位で予測することができ、予測値は15分ごとに更新されます。
そして、予測精度は年を追うごとに正確になっているそうです。
予測精度の高さが、天候に左右される風力発電の大量導入を可能にしたということですね。

再生可能エネルギーのコントロールセンター「CECRE」

2006年に開設された「REE」社内の再生可能エネルギーのコントロールセンター「CECRE」の存在も、とても大切な役割を果たしています。

「CECRE」の目的は、全国の系統を安定化させること。
変動する再生可能エネルギーを最大限に活用できるように、スペイン全土の電力システムと統合され、電力の需要と供給のバランスをとる機関が、この「CECRE」です。「CECRE」は、「SIPREÓLICO」の予測に基づき、水力発電やコンバインドサイクルガスタービン発電などの調整力を計算、系統のバランスを保つ能力と権限を備えています。

いざというときは風力発電の解列(系統からの切り離し)も行ってしまうというこの「CECRE」。2008年に、スペインは、全国の強風により風力発電の発電比率が1日のうちに一時的に40.8%まで高まったこともありましたが、「CECRE」の開設後であったことから、この危機も無事に乗り切ったといいます。

スペインから学ぶべきこと

「REE」社のシステム運営の責任者を務めるミゲール・ドゥビソン氏は次のように、語っています。

『30年前「REE」社ができる前は、スペインも各電力会社がバラバラに送電をしており、電力供給に不安定な面があった。けれども、発送電の分離が行われ、国主導で一元的に送電を管理する方針を打ち出したからこそ、今の姿がある』と。

かつて、国民に負担増を招いた高コストの再エネ導入政策が破綻し、日本でも導入されている固定価格買取制度(FIT)が2013年に廃止になるなど様々な経験を経て、今日の姿があるスペイン。

日本もスペインをはじめとする海外の様々な実績に学びながら、再エネの導入策を、官民一体となり、考える時期が近づいているのかもしれません。

参考: