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水資源の豊富な日本において、水力発電は古くから利用されてきた再生可能エネルギーです。その中でも小規模な発電設備である小水力発電は環境に与える影響が少なく、小さな川や用水路でも発電でき、比較的安定した発電量の確保が可能であるため、エネルギー源として期待が持たれています。しかし、その期待とは裏腹に、実際の導入は太陽光発電に比べて圧倒的に少ない状況です。どのようなことが小水力発電導入の隘路となっているのでしょうか。

小水力発電とは

水力発電のなかで小規模なものを「小水力発電」や「マイクロ水力発電」と呼びます。日本においては1000kW以下の水力発電を小水力発電としています。小水力発電は横幅が1mほどの用水路でも取り付けることができるので、設置できる場所は数えきれないほどあります。設備利用率が高いので季節や時間帯を問わずに電力を安定供給できるのも大きな魅力です。例えば、太陽光発電の設備利用率が12%、風力発電が20~30%であるのに対して、少水力発電は平均して60%になると言われています。それなら一般家庭で太陽光パネルを設置するのと同じように、近くに流れている川に水力発電キットを設置すれば良いのではないか、などと思いつく方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そう簡単には始めることができないのが小水力発電です。

水利権の取得が煩雑である

小水力発電を導入する上で大きなハードルとなるのが法的な手続きです。河川法によって、河川水を利用する場合は河川管理者から水利使用の許可(水利権)を取得しなくてはならないと定められています。水を使用する際は利害関係が発生することが多く、例えば農業用水は農家や農業団体が水利権を持つなど、水利権を取得するための手続きが煩雑です。小さな水力発電設備の設置であっても、大規模水力発電所の設置と同じような手続きが必要になります。その一方で、太陽光発電や風力発電では利害関係はほとんどなく、小水力発電に比べて法的な規制や申請も少ないため、導入されやすい状況です。

採算性のリスク

小水力発電は50年以上稼働できると言われていますが、発電量自体が多くはないために初期費用を回収するまでには約20年の長い期間がかかります。そのため、気候変動などで降水量が減り水量が少なくなり、発電量が減少すると当初の採算を下回ってしまう可能性があります。現在は発電設備のコスト削減が進み、国や自治体からの補助金や支援制度を活用することで初期費用を抑えることも可能です。が、維持管理にかかる費用が大きくなることも小水力発電が難しい要因のひとつとなっています。

長期間の維持管理

小水力発電は維持管理に手間がかかります。河川や用水路などには木の枝や枯れ葉、ゴミが流れてくるので、そのままにしておくと発電設備に支障をきたします。稼働確認や障害物の除去は毎日行い、季節に応じてのメンテナンスも必要です。小水力発電設備の維持管理に必要な人員の確保も課題となります。

導入のハードルは高いが期待できるエネルギー源

古来より水車による粉ひきに利用したり、身近なエネルギーとして水力を利用してきました。昼夜問わず発電でき、水量が変わらなければ季節も問わず発電できるのも魅力です。

設備導入時に課題が多い小水力発電ですが、地球環境に配慮したエネルギー自給として潜在的に有益なエネルギー源です。日本国内で小水力発電の普及を促進させるには、水利権の取得などの規制緩和が必要であり、地域ぐるみで取り組みを進めていくための理解と協力が必要となるでしょう。

参考:

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