急激に導入が進んだ太陽光発電。十数年後には使用済み太陽光パネルが大量に排出されるとして制度の整備などの対策が進んでいます。
来春に実施される変更と、なぜ今から対策する必要があるのか、何が懸念されているのかなどをご紹介します。

2024年春に実施される変更

2024年春に行われる変更により、FIT・FIPの新規認定申請時などには、含有物質情報が登録された型式の太陽光パネルのみが使用が許可されることとなります。
このため、省令の改正を経て、メーカーは含有物質情報を登録するためのシステム変更などが実施されます。

背景

FIT開始以降、太陽光発電の普及が進んでいますが、太陽光パネルには鉛、セレン、カドミウム、ヒ素などの有害物質が含まれる可能性があり、これにより将来的な廃棄に対する懸念が高まっています。

主な太陽光パネルの種類と含有物質

シリコン系(単結晶・多結晶・アモルファスシリコンなど) 配線部分のはんだに鉛を含むものがある。
カバーガラスに清澄剤として一部ヒ素を含むものがある。
CIS系 銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)からなる化合物系の太陽電池であり、主原料としてセレンを含む。
カバーガラスに清澄剤として一部ヒ素を含むものがある。
CdTe系 カドミウム(Cd)、テルル(Te)からなるテルル化カドミウムを用いた化合物系の太陽電池であり、主原料としてカドミウムを含む。
カバーガラスに清澄剤として一部ヒ素を含むものがある。

使用済み太陽光パネルの排出量推計

廃棄量の正確な予測は難しいですが、2030年代後半には廃棄のピークを迎えると推計されており、法改正も含めた計画的な対応が求められます。

使用済み太陽光パネルの排出量推計(環境省推計)

(出典)太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)| 環境省

太陽光パネルの廃棄・リサイクルに係る課題

製造・輸入・販売〜運転~事業終了〜長期活用・リユース〜解体・撤去、収集運搬〜リサイクル〜最終処分とさまざまな段階で課題があり、太陽光発電設備のライフサイクル全体にわたる横断的な対応が求められています。

事業段階 課題の例
製造・輸入・販売 太陽光パネルの含有物質情報の提供が不十分な場合がある。
運転~事業終了 非FIT/非FIPの事業の把握が不十分。
事業終了後に太陽光パネルが放置されない仕組みが必要。
火事や感電等の対策、関係法令の適用関係の整理等が必要。
長期活用・リユース 使用可能なパネルが廃棄されずに、発電事業者によって長期活用されることが必要。
解体・撤去、収集運搬 解体手順や注意事項等の周知徹底が必要。 安全を確保しつつ、リユース・リサイクルが可能な状態での取外しが必要。
リサイクル ガラス等の再資源化技術の開発が必要。 排出のピークに向けて再生資源の市場形成が必要。
最終処分 最終処分量を削減することが必要。

今後も継続して廃棄・リサイクルのあり方が検討される

ライフサイクル全体の各プレイヤーが、再エネ発電設備を適切に処理できるよう、必要な「費用」と「情報」が円滑に流通する仕組みの構築が不可欠です。
さまざまな取り組みが検討されている中、速やかに実施することとして今回の変更が実施されます。
今後も、リユース・リサイクル・適正処理に必要な情報を把握する仕組みの構築や、各関係事業者間で、使用済太陽光パネルの引渡し及び引取りが確実に実施されるための仕組みの構築などの検討が進められます。

参考ページ
再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会 | 経済産業省

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