再生可能エネルギーの利用や、化石燃料に依存しない電気自動車など、CO2を削減した「低炭素社会」実現のための技術開発が進んでいます。それらの技術開発の推進には、電気を貯める技術である「電気貯蔵技術」の存在が必要不可欠です。
電気貯蔵技術は、一度発電した電力を必要なときに利用できるように充電・放電を繰り返すことのできる技術のこと。利用することで無駄な電力ロスを減らし、エネルギーを有効活用できるようになります。
ここでは、電気を貯める方法にはどのような仕組みのものがあるのか、いくつかご紹介します。
二次電池
二次電池とは、化学反応を利用してエネルギーの貯蔵や放出をおこなう電池です。定置型、小型携帯用機器型などがあります。レドックスフロー電池、ナトリウム硫黄電池(NAS電池)、ニッケル水素電池などの種類があります。
【レドックスフロー電池】
レドックスフローとは、Reduction(還元)とOxidation(酸化)、Flow(流れ)を合わせ作られた合成語です。バナジウムを希硫酸に溶かした電解液が電池セルと電解液タンクの間を循環する際にバナジウムイオンの価数が変化することによって充電・放電がおこなわれる仕組みです。
【ナトリウム硫黄電池】
マイナス極に金属ナトリウム、プラス極に硫黄を配置し、固体電解質の中をナトリウムイオンが移動できる特性を持っています。大容量の蓄電が可能です。
【ニッケル水素電池】
急速充電がおこなえる電池です。ハイブリッドカーなどに利用されます。
蓄電池についてさらに詳しくは、蓄電池の種類と用途にはどんなのがあるの? をご参照ください。
フライホイール
フライホイールとは、円盤などのような回転体の運動エネルギーを利用してエネルギー貯蔵・放出する電池です。短時間のエネルギー貯蔵に向いているとされ、日本原子力研究開発機構(旧日本原子力研究所)で、世界最大規模のフライホイール付き発電機の稼働実績があり、ほかにも鉄道用や無停電電源用などで実用化されている技術です。
超電導電力貯蔵
超電導電力貯蔵は、SMES(Superconducting Magnetic Energy Storage)とも呼ばれる電気貯蔵技術です。電気抵抗がない(ゼロ)という特性を持った超電導コイルを用いて電磁エネルギーに変換することでエネルギーを貯蔵・放出します。エネルギー効率が高く、大きな出力を短い時間でおこなうことが可能です。
揚水発電
揚水発電は、電力需要が比較的少ない夜間に下部調整池の水を上部調整池へ揚水することで昼間に発電するものです。100年前から実用化されている古い技術ですが、太陽光発電や風力発電など、供給が不安定になりかねない新技術の開発推進のためには蓄電池の利用が不可欠であるため、最近再び見直され始めています。
現在、下部調整池の代わりに海水を利用する海水揚水発電の技術開発が進められています。
揚水発電についてさらに詳しくは、揚水発電 電力の需給バランスの調整を担う発電とは? をご参照ください。
圧縮空気電力貯蔵
圧縮空気電力貯蔵とは、コンプレッサーを用いて電気需要が比較的少ない夜間に空気を圧縮し地下空洞などに貯蔵しておいて、電気需要の高まる昼間に取り出しガスタービンによって発電をおこない電気を利用するという仕組みのものです。空気を圧縮することで、通常のガスタービンで必要な燃焼エネルギーが不要になるため、エネルギーロスが少ない、より効率のよい発電が可能になります。
ピークカットや停電対策としてだけではなく、再生可能エネルギー発電の平滑化としても電力を貯蔵するシステムが求められています。コストダウンや耐久性の向上、小型化などの課題を克服し、それぞれの電力貯蔵システムの特徴にあった活用が期待されます。