ニュースでも頻繁に取り挙げられ、今年4月からはじまる「電力の小売り自由化」。
いよいよ、4月1日以降は、家庭や商店も含む全ての消費者が、電気の売り手やサービスを自由に選べるようになります。
その全面自由化に向け、新規参入する各事業者が相次ぎサービスプランを発表しています。
資源エネルギー庁では、昨年の8月3日から小売電気事業を営もうとする事業者の事前登録の申請受付を開始しましたが、2016年1月28日の登録分で、電力取引監視等委員会の審査結果を踏まえ、148社の小売電気事業者が登録されました。
では、実際、どの地域へ向け新たな事業者が新規参入し、どのような電気の供給を始めるのでしょうか?
小売全面自由化で開放される市場規模
小売参入全面自由化によって、これまで各地域の電力会社が独占的に電気を供給していた約8兆円の電力市場が開放されます。全国で、約8,500万の家庭・小規模事業者が潜在的な顧客になり、企業にとって大きなビジネスチャンスとなります。
それでは、各電力会社毎に、見込まれる解放市場規模をみてみましょう。
まず、東京電力契約圏内の解放市場が28,275億円[契約数:2,922万件]と最も多く、次いで関西電力圏内が12,779億円[契約数:1,364万件]、中部電力圏内が10,162億円[契約数:約1,065万件]と続きます(2015年11月度資源エネルギー庁調べ)。
それに比べ、市場規模が最も少ない沖縄電力は1,453億円[契約数:89万件]であり、続いて少ない北陸電力は1,903億円[契約数:212万件]、四国電力は2,557億円[契約数:286万件]と、市場は首都圏に集中すると見込まれています。
自由化される電力市場規模・契約数
電力会社別 自由化される電力市場規模と契約数
新規参入事業者の事前登録の申請と登録が進んでいる最中の今日ですが、供給予定地域別にみると、その数はどうなっているのでしょうか。
供給予定都道府県別 新規参入小売電気事業者について
先にもふれたように、現時点において登録されている登録小売電気事業者は148社です。まだ一般家庭への販売の予定が検討中だったり、実際の供給地域が定まっていない登録会社が、かなり多い状況ではありますが、登録済の業者に関しほとんどの事業開始の予定年月は4月1日です。
これから、次々とサービスの内容の詳細が発表されていくことと思われますが、現時点で供給予定地域先が公表されている事業者のみを対象とし、47都道府県別に新規参入小売り事業者の数をまとめてみました。
供給予定都道府県別 登録小売電気事業者数
確かに事業者が供給を始める地域は、見込まれていた市場規模同様に東名阪の近郊圏が多いですが、本州の各地域においては、事業者の供給予定地域は、一点集中型とはいえないようです。
登録された148の事業者に加え、経済産業省では1月26日時点で登録申請があった269件の小売電気事業等に対し、今も電力取引監視等委員会による意見聴取を行っているといいます。一体、消費者は何をポイントに選択すればよいのでしょう?
増え続ける新電力、選択のポイントは?
今まで、家庭・小規模事業者は、地元の指定電力会社10社からしか電気を買うことができませんでしたが、エリアを超え自由に電気を買うことが可能になります。例えば、地方に住んでいる人が東京の電力会社から電気を買ったり、逆に首都圏の人が地方の電力会社から電気を買ったりすることもできます。
独占的に電気を供給していた10社に加え、ガス会社や石油会社、鉄道、携帯電話、住宅会社、自治体などが電力販売に参入しており、大手電力会社や新電力なども、より安い電気料金のプランを出してくることが予想されます。
そもそもの電力自由化の最大の狙いである電気料金の値下げは進み、消費者はより安い電力会社を選べるようになると言えるでしょう。
しかし、価格競争には地域格差が起こることも否めません。価格競争は人口の多い首都圏や関西圏で起こりがちです。沖縄、北海道、四国をはじめとする地方や離島への電力供給の問題は、今後の課題といえるかもしれません。
今回の自由化では、単なる電気料金の値下げではなく、別の部分で勝負しようという事業者の動きもあります。
ガス会社では、電気とガスをセットで販売したり、携帯電話会社では、電気と携帯電話の使用金額をセットにしたりというセットサービスを展開することで、1カ月に消費する電力量が少ない家庭へも総合的に家計の負担を少なくできるサービスをだすことが予定されています(注意:目安として、月に300kWh以上の電気を使っている家庭に対し、これまでより得をする料金プランを発表している事業者が多い傾向にあります)。
また、コンビニエンスストアや家電量販店では、窓口で電気を提供し価格だけでなく便利さ等も提供し始めます。他にも、再生可能エネルギーを中心とした電気の販売という価値を提供する事業者、自治体が地元企業と共同出資しエネルギーの地産地消を目指す事業者などもあります。
開始まで2ヶ月を切った電力全面自由化。消費者の選択ポイントは、消費者自身が情報をキャッチしつつも、多様な提供価値を正しく理解することなのかもしれません。
参考