東日本大震災を契機に、日本では、電気事業の仕組みを大きく見直す「電力システム改革」が進められています。今年4月1日から始まる電力全面自由化も、「電力システム改革」の一部として位置づけられています。
そこで、3年前の4月に定められた「電力システム改革」について、見ていきましょう。
電力システム改革、検討のきっかけは?
2011年1月、東日本大震災に伴う原子力事故が起こります。
この事故を契機に、電気料金の値上げ、ひっ迫した状況の下での需給調整、多様な電源の活用の必要性が増すと共に、従来の電力システムの抱える様々な限界が明らかになりました。
そこで、政府は、これまでのエネルギー政策をゼロベースで見直し、安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、 そして、家庭をはじめとする需要家の選択肢や企業の事業機会の拡大を目指します。現在及び将来の国民生活に責任あるエネルギー政策を構築していく一環として、再生可能エネルギーの導入等を進めるとともに、電力システム改革に取り組むことを発表しました。
では、電力システム改革とは、一体どのようなものなのでしょう。そして、どんなスケジュールで計画されているのでしょうか。
改革の内容とスケジュールは?
電力システム改革は、3段階のプログラムにて、2020年を目指し、進んでいる渦中です。
プログラムの第1段階は電力広域的運営推進機関の設立、そして第2段階は小売の全面自由化、第3段階が送配電部門の法的分離です。
第1段階:電力広域的運営推進機関の設立
上の図から読み取れるように、まず、電力システムに関する改革方針が発表された約1年半後の2015年4月1日に、初めの電力システム改革として、「電力広域的運営推進機関 」が設立されました。この機関を司令塔とし、エリアを超え電気の需給を調整することで、地域を越えた電気のやりとりが容易になります。例えば、災害などによって電力が不足した時、地域を越え電力の融通をこの機関が指示することで、停電が起こりにくくしたりすることができます。
参考:電力広域的運営推進機関とは?注目キーワードを解説
第2段階:小売の全面自由化
そして第2の改革が、今年の4月からスタートする「小売の全面自由化」です。一般家庭向けの電気の小売業への新規参入が可能となり、家庭も含む全ての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになります。
参考:全面自由化まであと1年!今さら聞けない電力自由化
ただし、特定の利用者が不利益を被ることのないよう、一定期間において旧・一般電気事業者の小売部門が、政府が認可する規制料金で供給できる経過措置期間が設けられています。経過措置は、次に紹介する「送配電部門の法的分離」が行われる2020年以降、競争の進展状況を確認して解除される予定です。
第3段階:送配電部門の法的分離
最後の段階が、「送配電部門の法的分離」です。
発電した電気を送り届けるために欠かせないのが、送配電ネットワークです。この送配電ネットワーク部門が中立化されないと、発電事業者や小売電気事業者が新規参入しても、活発な競争が実現できません。
そこで、電力会社の送配電部門を別の会社に分社化し、このネットワークを様々な事業者が利用しやすくし、競争を促します。
主要な先進国においても全面自由化の際には発送電分離をしているのが通例であり、全面自由化と発送電分離を車の両輪として、一体で進める必要があります。分社化を円滑に行うには様々な事前準備が必要なため、法的分離は原則として小売の全面自由化から4年後の、2020年4月に行われる予定です。
その後電力市場の競争状況が確認されると、経過措置が解除、規制料金の撤廃が行われ、小売業への参入の全面自由化だけでなく、電気の小売料金の全面自由化が実現されます。
まとめ
各小売事業者のニュースや広告をよく見かけるようになり、4月の小売全面自由化が注目されていますが、3つの段階で行われる大きな改革の1つの段階です。
小売全面自由化後も「安定供給の確保」「電気料金の最大限の抑制」「需要家の選択肢や企業の事業機会の拡大」という目的に向けて、引き続き整備や変更が進められます。
参考: