環境省の「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」にて、40MW以上の太陽光発電設備は環境アセスメントの対象とする検討が進んでいます。
「環境アセス」と聞いて、なんとなく分かる、なんとなくイメージできるものの、実際にどういうものなのか曖昧、という方が多いのではないでしょうか。
簡単にまとめます。
環境アセスメントとは?
環境アセスメントとは「環境影響調査」のことで、1997年(平成9年)6月に成立した「環境影響評価法(別名アセス法)」にて手続きなどが定められています。
大規模な開発事業を行う場合に、事前に環境への影響を調査・予測・評価を行い、深刻な公害や自然破壊を防ぐための制度です。
開発事業による重大な環境影響を防止するためには、事業の内容を決めるに当たって、事業の必要性や採算性だけでなく、環境の保全についてもあらかじめよく考えていくことが重要となります。
このような考え方から生まれたのが、環境アセスメント(環境影響評価)制度です。環境アセスメントとは、開発事業の内容を決めるに当たって、それが環境にどのような影響を及ぼすかについて、あらかじめ事業者自らが調査、予測、評価を行い、その結果を公表して一般の方々、地方公共団体などから意見を聴き、それらを踏まえて環境の保全の観点からよりよい事業計画を作り上げていこうという制度です。
引用元: 環境影響評価情報支援ネットワーク
環境アセスには2種類あります
- 法令アセス
- 国の法律にも基づく。2~3年かかる環境影響評価を行うもの。
- 条例アセス
- 自治体の制定した条例に基づく。
一般的に1年ほどかかる生活環境影響調査を行うもの。すでに多くの自治体で条例が制定されている。
この記事では、以降「法令アセス」を中心にご説明します。
環境アセスメントの対象となる事業
- 道路
- 河川(ダムなど)
- 鉄道
- 飛行場(空港)
- 発電所(水力、火力、地熱、原子力、風力。2019年1月時点では太陽光は対象外)
などの13事業において、開発規模が大きい事業が対象となります。
対象となる13事業は、環境影響評価情報支援ネットワークのホームページで確認できます。
※港湾計画は港湾環境アセスメントの対象
事業の規模や種類により、必ず環境アセスメントを行う「第一種事業」と、環境アセスメントが必要かどうかを個別に判断する「第二種事業」があります。
環境アセスメントの手続き
環境アセスメントの手続きは、大きく以下の5段階になります。
- 配慮書の手続き
- 方法書の手続き
- 準備書の手続き
- 評価書の手続き
- 報告書の手続き
それぞれの段階で、説明会を行ったり、住民の方々や、地方公共団体などの意見を取り入れたりといった手続きが定められています。
参考:環境アセスメントの手続 | 環境影響評価情報支援ネットワーク
環境アセスメントでの調査内容
環境アセスメントで検討する項目は一定ではなく、事業の内容や地域の特性を考慮し決まります。
大規模ソーラーが環境アセスメントの対象となった場合、具体的にどのような評価項目とするのかはまだ決まっていませんが、「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」で検討されている評価項目案から、調査が必要となりそうな項目を抜粋してご紹介します。
- 大気環境(大気質、騒音、振動)
- 工事に伴う建設機械の騒音や振動、粉塵。また稼働後のパワコンの稼働音、空調機の稼働音。
- 水環境(水質、底質、地下水)
- 土壌環境(地形・地質、地盤)
- 地形・地質の改変によって、周辺の河川流量の変化や、斜面設置の場合、土砂崩れ危険性への影響。
- 光害(反射光)
- 周辺住民への影響。
- 動物、植物、生態系
- 地形変化・造成などの施工による動物、植物、生態系への影響。また水上設置の場合、水面を覆うことによる動物、植物、生態系への影響
- 景観、人と自然との触れ合いの活動の場
- 眺望景観への影響や工事用資材の搬出入による影響
- 廃棄物等
- 樹木の伐採や建設残土の発生による環境影響。撤去に伴う廃棄物による環境影響。
工事の実施に伴う水の濁り。除草剤やパネル洗浄剤による水の汚れ。
参考
環境影響評価情報支援ネットワーク
太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会