四方を海に囲まれた日本では、海岸沿いで太陽光発電をするということも少なくありません。海岸沿いは日当たりを遮る障害物が少なく、効率よく発電ができるというメリットがある一方で、塩害を受けやすいというデメリットがあります。塩害は太陽光発電装置の故障の原因にもなりますので、海岸沿いで太陽光発電をするのであれば注意が必要です。
沿岸部からの距離によって塩害の度合いも変わりますので、それぞれの距離に見合った塩害対策をとらなくてはいけません。また、メーカーによっては塩害に強い太陽光発電装置が販売されていますので、設置する地域と見合わせて選ぶといいでしょう。
ここでは、太陽光発電をするのであれば知っておきたい塩害についてご紹介します。

塩害とは

塩害は、海中に含まれる塩が風などに乗って空気中を運ばれることで引き起こされます。沿岸部においては、住宅や農作物、電気設備や鉄、コンクリート構造の施設などが塩分によって大きな被害を受けることがあり、そのような塩分による被害の総称が塩害となります。
このような塩害を受ける地域のことを塩害地域と呼び、沿岸部からの距離によって分類されています。分類するための距離の基準は設置する都道府県によって異なりますが、一般的に以下のように分類されていますので、把握しておきましょう。

塩害地域

地域ごとに海岸からの距離によって塩害地域となります。
沖縄・離島…500m〜7km以上
北海道・東北日本海側…500m〜7km
その他…500m〜2km

重塩害地域

海岸からの距離が500m以内

岩礁隣接地域

直接波しぶきが当たる場所

地域 海岸からの距離
波飛沫を受ける 〜500m 500〜2km 2〜7km 7km以上
沖縄・離島 岩礁隣接
地域
重塩害
地域
塩害地域
北海道・東北日本海側 塩害地域 一般地域
その他 塩害地域 一般地域

地域によって塩が飛来する距離には差があり、実際に飛来する塩分量も一概に同じとはいえません。また、海岸線の形状や風向き、海抜の高さなどさまざまな条件によって変わりますので、ここで紹介した距離はひとつの目安であると考えておきましょう。

塩害でどのような害を受けるのか

塩害は住宅設備の劣化や、鉄部分のサビ、電気機器の故障などを引き起こします。雨水のかかる場所は塩分が洗い流されやすいですが、雨水を浴びにくい部分は劣化が早いです。
雨水で洗い流される部分においても塩害の影響は起こります。当然、太陽光発電設備も例外ではありません。
塩害地域に設置されている太陽光発電装置では、太陽光パネルはもちろん、架台や固定具、接続箱、パワーコンディショナーなど、さまざまな部位に影響が及びます。

例えば、塩害対策されていない太陽光パネルを塩害地域に長期間設置しておいた場合、金属部分がサビたり(腐食したり)、樹脂部材が劣化したりします。
太陽光パネル(モジュール)はほとんどのメーカーで塩害地域(岩礁隣接地域を除く)でも設置できる製品が販売されています。メーカー等によって塩害に対する保証内容が異なるので、確認の上選択することが必要です。

また、架台や固定具は金属を部材にしていることが多く、塩害による腐食や劣化の影響を受けやすいため、耐久性が悪くなりがちです。接続部などは塩が蓄積しやすく、ボルトやナットなども含めて全ての部品を塩害対策されたものを用いる必要があります。

自分でできる塩害対策と各メーカーの塩害対策

塩害地域で太陽光発電をするのであれば、塩がたまる前に塩分を払いのけるなど、日ごろからのメンテナンスが重要になります。
また、耐塩碍子を使用したり表面にシリコンパウンドを塗布したりするなどして、絶縁部を強化することも塩害対策のひとつです。ほかにも、機器表面の防サビ性能を高くしたり、溶融亜鉛メッキを施したり、金属部分には耐塩性の高い塗装をしたりなども有効な塩害対策になるでしょう。パワーコンディショナーなど、室内にも設置できるものは室内に入れ、塩分から遮蔽するというのも、塩害対策になります。

メンテナンスや対策も重要ですが、それに先駆けて、塩害対応した機器を選ぶというのもの大切です。
各メーカーから塩害に強い機器が販売されています。例として、シャープ、三菱電機、京セラの塩害対策の状況を見てみましょう。

シャープ

塩害地域専用のモジュール、架台(屋根に固定する金具)が用意されています。瓦型の製品を除いたほとんどの製品が重塩害地域にも対応しています。

三菱電機

耐候性、耐湿性、密封性に優れている3層構造バックフィルムを採用したモジュールになっており、またフレームやネジ類には耐蝕性メッキを使用しています。
架台には酸化皮膜をつくるアルミニウムやクリアコートが使われ、腐食や塩害を防止します。

京セラ

受光面に白板熱処理ガラスと呼ばれる強化ガラスを利用し、裏面には耐候性に優れた複数積層のバックシートを用いたモジュールになっています。
ラックシステムにも溶融亜鉛メッキ銅材などを用いており、塩害に強くなっています。

海に囲まれた日本では沿岸部で太陽光発電をすることが多いです。沿岸部での太陽光発電はメリットが多い反面、ここで紹介したように塩害の影響を受けやすく、せっかくのメリットを帳消しにしてしまうことがあります。
沿岸部に太陽光発電をする際には、塩害の状況をしっかり見定めて、それに対応した機器や状態で設備を設置し、日ごろからのメンテナンスが重要になります。

※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください。