太陽光を利用した発電方式は広く普及しています。しかし、太陽を利用した発電システムは何も光を対象にしたものだけではありません。
世界には太陽の熱を利用した「太陽熱発電」という発電方式があります。
今回は、太陽熱発電の概要とその仕組みや種類について紹介します。
太陽熱発電とは
太陽の光をレンズや反射鏡で集め、それによって生まれた“熱”で蒸気タービンを回し発電する方法を「太陽熱発電」といいます。
一般的な太陽“光”発電では、太陽光を直接電力に変換する必要があるため、夜間などの人々が電気を多く使うときに安定した電気供給ができないという難点がありました。
しかし、太陽“熱”発電は太陽光を熱に変換して蓄えておくことができるため、昼夜をとおして安定した電気供給が可能です。また、集光には反射鏡やレンズを使うので、ソーラーパネルを使う太陽光発電と比べて低コストで発電することができます。
太陽熱発電の種類
太陽熱発電のシステムにはいくつか種類があります。
パラボラ・トラフ型
パラボラ・トラフ型(以下、トラフ型)は放射線形状の曲面反射鏡を利用して集光・蓄熱・発電するシステムのことです。
反射鏡の前に、オイルなどの液体が流れるパイプを設置し、太陽光をそのパイプに集めることで加熱します。加熱されたオイルが熱交換器に送られて蒸気を発生させることで発電させる形式です。
構造が単純で高度な集光技術も必要ないので、システム価格が比較的安いという特徴があります。また、反射鏡を単純に並べることができるので、大規模な発電施設の建設が容易であるというのも特徴のひとつと言えるでしょう。
リニア・フレネル型
上記のトラフ型と技術が似ているリニア・フレネル型(以下、フレネル型)というものがあります。
フレネル型は、反射鏡の数メートル上方にある集熱管に光を集めることで蒸気を生成し発電するシステムです。
凹面の細長い集光用反射鏡をいくつか、少しずつ角度をずらして並べ、集熱管はポールなどで固定しています。
トラフ型と比べると集光効率が劣りますが、反射鏡がトラフ型よりも安価であったり、反射鏡が強い風圧や風速に耐えられたりするという利点があります。
タワー型
周囲に平面鏡(追尾式を使うこともある)を設置し、中央に立っている集熱器つきのタワーに光を集めることで発電するシステムです。
数メートル四方の大きな反射鏡を数百枚から数千枚用いて、光を一か所に集中させるため、高温の蒸気を発生させることができます。発電効率がいいシステムと言えるでしょう。
しかし、光を一点集中させるには正確に反射鏡を動かしたり、障害物をなくすためにタワーを高くしたりする必要があり、設備費が高額になりやすいです。
ディッシュ型
反射鏡の前方に設置されたスターリングエンジンなどに、放物曲線状の反射鏡を用いて集光することで発電するシステムです。
電力変換部分と反射鏡が一体化しており、サイズが5~15メートルと比較的小規模ですが、発電効力は高く、冷却時に水が必要ではないというメリットがあります。
しかし導入実績が少なく、技術改良が必要だと言われているシステムです。
日本における太陽熱発電は?
世界で太陽熱発電を利用している主な地域は日射量に大きく依存しています。
なので、必然的に北緯37度以南に広がる日照量の多い「サンベルト地帯」と呼ばれるエリアが主要地域となります。
また装置の構造上、湿気や砂嵐、曇天などの少ないエリアが好まれ、発電方法によっては、スケール(発電所敷地の広さ)が求められます。
以上の条件を加味すると、多湿で比較的日差しが弱く、天候の悪い日も比較的多く、国土の狭い日本では太陽熱発電に向いている場所がほとんどありません。
しかし、今後さらに集光技術の向上や、湿気に強い設備の構造が開発されれば、日本においても普及する可能性は高まっていくと考えられます。
太陽をエネルギー源にした発電方式は、太陽光発電だけではありません。太陽熱発電のシステムを利用すれば資源を節約できる上に、これまで以上に安定した電気供給が可能になると言えるでしょう。