電力が自由化されて2年が経ちました。消費者は自由に電力会社を選べるようになり、より自分たちのライフスタイルに合った電力契約を結べるようになったと言えるでしょう。
自由化により、多くの電力会社が独自のプランを打ち出すようになり、家庭の電力切り替えも10%を超えました。そんな中、最近「地産地消」を目指した、地域密着型の新電力が増え始めています。「地域新電力」と呼ばれるこの新しい電力供給の形は、どうして増えているのでしょうか。
ここでは、地方自治体なども力を入れている地域新電力が増えている理由や、そのメリット、デメリットなどをご紹介します。

地域新電力が増えている理由

地域新電力というのは、電気の地産地消を目標にした地域密着型の電力小売業者のことを指します。東京電力、関西電力、中国電力などといった大規模な電力会社から電力の供給を受けるのではなく、より供給するエリアを絞った小さな事業者ということです。大手の電力会社はその地域の中で最大の都市に本社を置いていますが、地域新電力の小売事業者は供給する地域に本社を置いているのが特徴になります。
地域新電力の小売電気事業者として登録をしている事業者の中には、地方自治体が出資しているものもあります。自治体新電力と呼ばれ、こちらも地産地消を目標とし、地域経済の活性化を目指した事業者です。自治体では自然エネルギーやごみ焼却熱による発電など多くの発電が行われており、その電力を事業化することで自治体内でお金が循環する仕組みを構築しようと考えているのです。
自治体新電力を含む多くの小売事業者が地域の活性化を目標に電力供給に参入しており、そのことが、地域新電力が増加している理由であると考えられています。

地域新電力のメリット・デメリット

地域新電力にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

【地域新電力のメリット】

地域経済の活性化につながる

前述の通り、電力の地産地消による地域経済の活性化は、地域新電力が掲げる主な目標です。
大手の電力会社は本社を大都市に置いています。東京電力や関西電力といった会社から電力の供給を受けていると、そこに支払う電気代はすべてその会社の「売上」となります。つまり、地方から大都市にお金が出ていってしまうという構造があるということです。
地域新電力の小売業者は本社(会社)を地域に置いており、そこへ支払う電気代はすべて地元に落ちます。このように、地域新電力には、地域内でお金の循環を生み出すことができ、地域経済の活性化につながるというメリットがあるのです。

雇用が増加する

地域新電力を安定的に供給するには、発電所等のメンテナンスを行う人員が必要になります。地方に安定した雇用が生まれ、間接的に地域の消費を増やし、地域活性化につながるのです。また、地方に雇用が生まれれば、都会へ出ていく若者の数を減らし、人口減への対策にもつながります。

エコにつながる

地域新電力の多くが、地元の強みを生かした方法で発電を行っています。例えば日当たりがいい地域であれば太陽光発電、風がよく吹くのであれば風力発電、森林資源がふんだんにある地域ではバイオマス発電というように、地域の特徴を生かし、再生可能エネルギーの利用を行っているのです。そのため、地域新電力を使うことで、環境問題の対策につながると言われています。

【地域新電力のデメリット】

地域新電力の最大のデメリットと呼ばれているのは、価格競争が乏しく、電気代が高くなるという点です。大手の電気事業者や新規参入の一般的な電気事業者は、多くの契約を結ぶために電気代を安くするなどの戦略を立てています。しかし、地域新電力の場合は、地域に根付いた電力供給を行うため、いわゆるライバルというものが少ない傾向です。その結果、電気代が比較的高くなってしまいます。

どういった地域新電力があるのか

全国には数多くの地域新電力が存在します。代表的な地域新電力は以下のような電力会社です。

  • はりま電力(兵庫県)
  • 滋賀電力(滋賀県)
  • 奈良電力(奈良県)
  • 水戸電力(茨城県)
  • 湘南電力(神奈川県)
  • 鹿児島電力(鹿児島県)
  • 和歌山電力(和歌山県)

また、自治体が出資している自治体新電力には以下のようなものがあります。

  • いこま市民パワー(奈良県生駒市)
  • 泉佐野電力(大阪府泉佐野市)
  • とっとり市民電力(鳥取県)
  • 北上新電力(岩手県北上市)
  • やまがた新電力(山形県)
  • 浜松新電力(静岡県浜松市)
  • 中之条新電力(群馬県中之条町)
  • みやまスマートエネルギー(福岡県みやま市)

自治体新電力の例

【いこま市民パワー】

いこま市民パワーは、生駒市、大阪ガス、生駒商工会議所、南都銀行、市民エネルギー生駒(市民団体)の出資によって2016年に設立された地域新電力です。自治体と大手エネルギー会社による地域新電力の設立は全国初でした。
現在では主に公共施設に対し電力供給を行い、2019年以降に一般家庭向けの電力供給を開始する予定です。2021年度には5000戸に対する供給を目標にしており、12億円程度の売上確保を計画しています。

【みやまスマートエネルギー】

2015年に、福岡県みやま市と筑邦銀行が出資して創設したのが、みやまスマートエネルギーです。2016年度から一般家庭向けの販売も始めており、その年度中から約2000世帯への供給に達しています。家庭向けのプランには「オール電化プラン」「低圧電力プラン」などを用意しており、比較的多くのプランを選べるというのがみやまスマートエネルギーの強みです。

電力自由化により増え始めている地域新電力。消費者にとっては電気代が比較的高いという点は大きなデメリットになりますが、自分たちが住んでいる地域が活性化することは、やはり大きなメリットになると言えるでしょう。

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