出力制御の対応が必要な太陽光発電設備は、出力制御対応のパワコンに加えて、出力制御ユニットや通信機器・回線が必要です。(出力制御の詳細や、出力制御ユニットの詳細は過去の記事を参考にしてください。)
それに加えて、遠隔地からパソコンやスマートフォンで発電量などをいつでも確認できる「遠隔監視・遠隔モニタリング」が、出力制御対象設備には欠かせません。
法律で義務づけられているわけでも、電力会社との契約に必要なわけでもありませんが、出力制御対象設備で遠隔監視を導入しないと、売電が著しく減少する恐れがあるのです。
今回は出力制御対象の設備には遠隔監視を導入すべき理由をご紹介します。
出力制御ユニットの異常を検知できる遠隔監視の必要性
出力制御ユニットの異常、出力制御ユニットと狭義PCSの通信の異常に気付けないとどうなるかをご説明します。
狭義PCS(パワーコンディショナー)と出力制御ユニットの関係
まずは平常時に出力制御ユニットが狭義PCSに対してどのように働くのかを見ていきましょう。
狭義PCSの出力を制御するのが出力制御ユニットです。
電力会社からのスケジュールで制御量を受け取って、上限値まで出力するように制御します。
出力制御しなくていいときは、出力の上限は100%です。
40%の制御が必要なときは、出力の上限は60%です。
この60%というのは、PCS容量に対する割合です。
分かりやすく10kWの容量のPCSを使っていると仮定すると、出力の上限は6kWとなります。
出力制御ユニットが機能しなかったらどうなる?
出力制御ユニットからの指示がなければ、
例えば出力制御ユニットが壊れてしまった場合や、出力制御ユニットと狭義PCSの間の通信が途切れてしまった場合、狭義PCSの出力はどうなるでしょうか。
この場合、出力は0%、出力ができない仕様となっています。
出力制御ユニットからの指示が途絶えると、5分以内に狭義PCSの出力は停止します。
これは、日本電機工業会、電気事業連合会、太陽光発電協会でまとめられた「出力制御付きパワーコンディショナ(PCS)の技術仕様について」で説明されており、各メーカーはこの仕様に基いて出力制御ユニットをつくっています。
「出力制御ユニットの故障」と「出力制御ユニットと狭義PCSの間の通信途絶」にすぐに気付けないと、不要な売電損失が増大することがお分かりいただけると思います。
出力制御ユニット自体のトラブルや狭義PCSとの通信途絶に気付ける遠隔監視サービスがあると安心というわけです。
通信(インターネット接続)の異常を検知できる遠隔監視の必要性
出力制御ユニットの異常の他にも、インターネット接続トラブルも早期発見しないと売電損失が増大します。
これは「更新スケジュール」「固定スケジュール」について知っていただく必要があり、まずは両者の違いなどについて説明します。
更新スケジュールと固定スケジュールのキホン
出力制御は電力会社が決めたスケジュールによって行われます。
スケジュールでは、実施日時、出力制御量などが指定されます。
「更新スケジュール」と「固定スケジュール」の2種類があります。
インターネット回線を準備して、電力会社のサーバから自動的に最新のスケジュールを受信して出力制御を行うものが「更新スケジュール」です。
年に1回以上電力会社のサーバから手動でスケジュールを取得、USBメモリなどに保存して発電設備へ持参し、出力制御ユニットへスケジュールを登録するのが「固定スケジュール」です。
1年間分まとめて指定する必要があるため、需要が少ないと思われる日に総じて出力制御するようなスケジュールで、売電損失が大きくなると言われています。
更新スケジュールのメリット
出力制御を行うかどうかは、前日に天気予報などから需給バランスを予測して判断されます。
「更新スケジュール」も「固定スケジュール」と同様に、需要が少ないと想定される日に全て出力制御されるスケジュールがベースとして入っていて、直前の天候情報や電力需要予測などから「翌日は出力制御不要」や「翌日の出力制御量は少量でOK」と判断されると最新のスケジュールとして配信し、各設備の出力制御ユニット内のスケジュールが上書きされるのです。
しかし固定スケジュールでは、随時更新することができないため、出力制御量の多いスケジュールで運用せざるを得ず、売電損失が大きくなります。
毎年現地へ設定しにいくコストも、20年間続けると大きなコストとなるでしょう。
山間部などインターネット敷設が不可能など、やむを得ない場合を除き更新スケジュールをお選びください。
インターネット通信が途絶えたらどうなる?
電力会社からの最新スケジュールを取得するためのインターネット通信が途切れた場合はどうなるでしょうか。
最新のスケジュールが取得できなくても、出力制御ユニット内に保存されているスケジュールで運用が行われるため売電は可能です。
通信の停止している状態が続くと、最新のスケジュール情報が取得できず、固定スケジュールと同様に出力制御される日時が多いスケジュールで出力制御が行われます。
早期に気付かないともったいないポイントです。
売電がまったくできなくなるわけではないため、通信が途絶えていることに気が付かないことも考えられます。
スケジュールには1年間分程度の制御情報が入っていますが、取得済みスケジュールの期間が終わっても通信の途絶が解消しなかったら、どうなるでしょう。
例えば、3月31日までのスケジュールが出力制御ユニット内に保存されていたとします。
1月15日にインターネット通信が途絶えた場合、ここからは固定スケジュールと同様の出力制御の多いスケジュールで運用されます。
インターネット通信が途絶えていることに気づかずに4月1日を迎えると、スケジュールが存在しない状況となります。
この場合、出力制御ユニットは狭義PCSへ何%出力していいか指示を出せず、出力0%の状態に陥り、売電はできなくなります。
インターネット回線を敷設しても、通信が途絶えたことに気付けなければ売電損失が増大するのです。
通信機器のトラブルや、通信回線の異常など、通信の途絶もありえるため、予め想定して気付けるようにしておくことが大切です。
ご自身で気がつかなくても、アラートメールなどで異常を知らせてくれるような遠隔監視サービスが必要となるのです。
どれくらいの金額的損失になるか
ゴールデンウィークがあって需要が落ち込むとともに、最も発電量が多く、出力制御が実施される可能性の高い5月で計算してみましょう。
下記は、熊本県の49.9kWの太陽光発電設備の2017年5月のエコめがね発電量グラフです。
この月の合計発電量は7,014.4kWhでした。
仮に土曜日・日曜日・祝日の晴れた日に、終日出力制御されたと想定すると、
出力制御を仮定した日の発電量の合計は1,682kWh。(5月は発電効率がいいだけに影響が大きくなりますね…)
売電単価を27円(税込29.16円)と仮定します。
・設備の故障やトラブルがなかった場合
売電電力量:5,107kWh
売電:137,890円(税込148,921円)
出力制御分:51,500円(税込55,620円)
・5台のうち1台のPCSが故障していた場合
売電電力量:4,086kWh(故障がなかったときの80%と想定)
売電:110,312円(税込119,137円)
故障に気付けなかったことによる損失:27,578円(税込29,784円)
・故障に気づかず売電がストップしていた場合
売電:0円
故障に気付けなかったことによる損失:137,890円(税込148,921円)
出力制御が実際に始まったらその分売電が減少してしまいますが、トラブルに気付かないとそれ以上に大きな売電損失が出ることがお分かりいただけたでしょうか。
出力制御対象設備では、それ以外の設備とくらべてトラブルに早期に気付くことが一層大切なのです。
出力制御対応には通信回線や機器が必要となるため、一緒に遠隔監視の導入をご検討ください。