太陽光発電のオンライン化とは、出力制御を遠隔地からオンラインで実施できる「オンライン発電所」へ環境を整えることです。
本記事では、出力制御の要請を受けた際に、「オフライン発電所」が「オンライン発電所」と⽐較して制御を多く受け、損失が大きくなる課題の背景について解説します。
オンライン化とはどのようなことか、2022年度から始まったオンライン代理制御とはなにか、また、オフライン発電所の具体的な損失などを分かりやすく解説していきます。

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1. 「オンライン発電所」と「オフライン発電所」の違いとは?

名称 概要 制御方法の呼称 所有者の呼称
オンライン発電所 遠隔地からオンラインで出力制御ができる
太陽光発電所です。
オンライン制御 オンライン事業者
オフライン発電所 オンライン制御ができず、出力制御の際には
現地で手動で操作する必要がある発電所です。
オフライン制御 オフライン事業者
→オフライン発電所が出力制御の要請を受けるたびに、発電所へ行き運転停止と再起動を行うのは時間や手間といったコストがかかってしまいます。
そこで考えられたのが「オンライン代理制御」という仕組みです。

2. 「オンライン代理制御」とはなにか?

概要

オンライン代理制御は「経済的出力制御」とも呼ばれ、本来オフライン事業者が行うべき出力制御を、オンライン事業者が代わりに実施し、その対価を受け取る仕組みです。
オフライン事業者は、電力会社から出力制御の要請に応じるために、直接発電所まで行き、運転停止と再起動を行う事は現実的ではございません。
オンライン代理制御が実施されることで、
オフライン事業者は、現地へ行く手間が省けますが、オンライン発電所に請け負ってもらった出力制御分を、約2カ月後に代理制御分の精算として「代理制御調整金」として支払うことになります。
反対に、代理制御を請け負ったオンライン事業者は、その調整金を受け取ります。

出力制御のフロー

①オフライン発電所の出力制御は、オンライン発電所が代わりに実施します。←これを代理制御と言います。
②オンライン発電所は、自身の発電所の出力制御に加えて、代理制御分も併せて実施することになります。
③オフライン発電所は、出力制御から約2か月後にオンライン発電所が代行した制御分の売電金額を支払うことで調整されます。

オンライン事業者の売電金額への影響

オフライン事業者の代わりに制御した時間帯に発電していたであろう「みなし発電量」に、FIT買取価格を乗じた金額が、代理制御の対価として支払われます。

オフライン事業者の売電金額への影響

オンライン事業者に代わりに制御をしてもらうことから、本来出力制御されるはずであった時間帯の発電量について、電力会社から対価が支払われないこととなります。

→オンライン代理制御の仕組みを理解できたかと思いますが、結果的に、出力制御量はオフライン発電所のほうが割高になってしまいます。

関連記事:出力制御のオンライン、オフラインについてはこちら

3. 「代理制御調整金」はどのように計算される?

代理制御調整金は、オンライン代理制御の精算時に、本来の出力制御と同様の状態に調整するためのお金です。
代理制御を実行したオンライン発電所はプラスでの計上となり、代理制御を請け負ってもらったオフライン発電所はマイナスの計上となります。

計算式:売電電力量(kWh) × 精算比率(%) × FIT単価(円)

各項目の詳細
項目 内容
売電電力量 (kWh) 代理制御が行われた月の総売電量。
精算比率 (%) その月の総売電量に占める、代理で制御された(代理で制御してもらった)電力量の割合。
各月ごとに、各電力会社によって公開されます。
FIT単価 (円) ご自身の発電所に適用されるFIT(固定価格買取制度)の単価を使用します。
※代理制御を請け負った(してもらった)発電所の単価ではありません。

代理制御調整金の計算例

<2025年4月発電時(東北電力エリアの場合)>

■オンライン発電所
・発電電力:5,000kWh
・精算比率:1.87%
■オフライン発電所
・発電電力:5,000kWh
・精算比率:23.43%
■FIT価格
・32円+税(税込み 35.2円)

→オンラインの代理出力制御:5,000kWh×1.87%=94kWh
 オフラインの出力制御:5,000kWh×23.43%=1,172kWh

<6月の精算時>
・オンライン:94kWh×35.2円=3,308円

・オフライン:1,172kWh×35.2円=41,254円

→オンライン発電所は「3,308円(94kWh)」の調整金を受け取る一方、オフライン発電所は「41,254円(1,172kWh)」分の支払いが発生します

出典:オンライン代理制御(経済的出力制御)の実施に伴う精算比率の公表について(東北電力ネットワーク株式会社)

4. オフライン発電所の負担が大きくなる理由とは?

オンライン制御は、電力の需給状況に応じて、電力会社から指示された出力制御が必要な時間帯のみの制御ができます。
一方、オフライン制御は、原則として「8:00~16:00」の間、一律で停止する運用が基本です。
オンライン代理制御は、このオフラインの「8:00〜16:00停止」というルールを基に制御量が計算されるため、必要量だけ制御されるオンライン発電所に比べて制御時間が長くなり、結果としてより多くの代理制御調整金を支払うことになります。

5. 各エリアの出力制御率について

年間を通じた出力制御率は、各月のオンラインとオフラインの精算比率に大きく影響します。
以下、年間を通じた出力制御率について過去3年間分、4エリアをまとめました。
九州、東北エリアに大きく差があることが分かります。この出力制御率の差は年間の収入に影響します。

エリア カテゴリ 2023年度 2024年度 2025年度
九州 旧ルール* オフライン 11.80% 11.30% 11.70%
旧ルール オンライン 7.40% 7.20% 7.00%
出力制御率の差 4.40% 4.10% 4.70%
中国 旧ルール オフライン 7.52% 8.28% 6.35%
旧ルール オンライン 4.07% 4.18% 3.16%
出力制御率の差 3.45% 4.10% 3.19%
四国 旧ルール オフライン 6.43% 7.94% 5.61%
旧ルール オンライン 3.50% 4.96% 2.88%
出力制御率の差 2.93% 2.98% 2.73%
東北 旧ルール オフライン 2.06% 6.99% 7.63%
旧ルール オンライン 0.33% 0.66% 0.50%
出力制御率の差 1.73% 6.33% 7.13%

出典:第1回 次世代電力系統ワーキンググループ第52回 総合資源エネルギー調査会第47回 総合資源エネルギー調査会 
*「低圧太陽光発電所の旧ルール対象者」とは、主に2012年の固定価格買取制度(FIT)導入当初〜2015年頃までに、旧制度の下で認定を受けた、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備(低圧連系)を保有・運用する事業者を指します。

6. オフライン発電所の損失を改善するためには?

オンライン出力制御に対応したパワーコンディショナに交換し、出力制御機器を取り付け「オンライン発電所」へ変えることで、オフライン発電所の負担は軽減されます。
では、オンライン化がどれくらい進んでいるのか?
下記の表をご覧ください。以下、対象エリアのオンライン化は進んでおらず、東北における低圧の旧ルールのオンライン化率は1%にも満たない割合です。

出典:各電力会社公表資料からNSE作成(東北中国四国九州

7. オンライン化の効果はどれくらいか?

以下、オンライン化による削減割合の算出方法の例です。

・発電量:81,701kWh
・FIT単価:35.2円(税込)

■想定設備概要
FIT単価:35.2円(税込) 過積載率:131%
運転開始:2015年 年間発電量:81,701kWh
認定容量:49.5kW 1kW発電量/年:1260kWh
PV容量:64.8kW 設備稼働率:14.38%
エリア 出力制御率 (旧ルール) 収入
オフライン オンライン オフライン
(年間)
オンライン
(年間)

(年間)
10年間
九州 11.70% 7.00% 4.70% 254万円 267万円 14万円 135万円
四国 5.61% 2.88% 2.73% 271万円 279万円 8万円 79万円
中国 6.35% 3.16% 3.19% 269万円 278万円 9万円 92万円
東北 7.63% 0.50% 7.13% 266万円 286万円 21万円 205万円

出典:第1回 次世代電力系統ワーキンググループ第52回 総合資源エネルギー調査会第47回 総合資源エネルギー調査会

8. まとめ

2022年度から始まったオンライン代理制御は、オフライン発電所の事業者が現地へ行く手間を省く仕組みですが、経済的な負担はオンライン発電所より大きくなります。
また、自身がより多くの出力制御の負担を受けていることに気づいていない事業者が多いです。

ご自身のオフライン発電所はどれくらい負担が多いのか気になりませんか?
今回先着50名様に無料でシミュレーションを行います。
対象は九州/中国/四国/東北エリアの旧ルールの発電事業者様です。
具体的には、
・FIT単価が40円~32円(税抜き)
・6月と7月の売電収入が減っている
・遠隔監視装置がついていない
・発電開始から10年近い
どれか一つでも当てはまれば、登録フォームからお申込みください。
※シミュレーション結果は、8月20日(水)以降、順次回答いたします。
※申込締切:8月22日(金)

<参考サイト>

第1回 次世代電力系統ワーキンググループ
各電力会社公表資料(東北中国四国九州
2024年度出力制御見通しについて(九州電力送配電)
2023年度出力制御見通し他について(九州電力送配電)
2024年度の再エネ出力制御の見通しについて(中国電力ネットワーク)
2023年度出⼒制御⾒通しについて(中国電力ネットワーク)
2024年度出力制御見通しについて(四国電力送配電)
2023年度出力制御見通しについて(四国電力送配電)
2024年度出力制御見通しについて(東北電力ネットワーク)
2023年度出力制御見通しについて(東北電力ネットワーク)

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