電気を送る際の方法に、「三相(さんそう)」と「単相(たんそう)」の2種類があるのをご存知でしょうか。簡単に違いを説明すると、「三相」が「産業用の電気機器などのような大型電気製品に電気を送る際に利用する方法」、「単相」が「家電製品などのような比較的小さな電気製品に電気を送る際に利用する方法」となります。
ここでは「三相」と「単相」の違いを紹介した上で、三相パワーコンディショナーや単相パワーコンディショナー(以下、三相パワコン、単相パワコン)の違いなどを交えつつご紹介します。
三相と単相の違い
まずは単純な「三相」と「単相」の違いについてご説明します。
【単相】
単相は主に一般家庭で利用される電気交流のことを言います。単相交流のために利用する電線の数は2本です。一本が電気を受けるもの、そしてもう一方が電気を送るために利用するもので、交互に電気が行き来します。
配線の数が少ないため電圧が低く安全で、それほどの高電圧が必要ではない家庭の電気供給に利用されることが多いです。
100Vまたは200Vの単相があります。
【三相】
三相は単相と比べて少ない電流で同じ電力を得られるため、電気損失が少なく、多くの電気を使う工場などで利用されることが多い電気交流の方法です。三相という名前のとおり、3つの波形が常に流れているので、モーターを起動するときに配線を正しくつなげば、常に同じ方向にモーターを回転させることが可能です。ただし電力が大きくなるため、単相と比べて安全性の面では劣ります。
三相は200Vのものだけになります。
太陽光発電システムを電力系統に「単相」で接続するのか「三相」で接続するのかによって、採用するパワコンも変わります。
三相パワコンと単相パワコンのメリット・デメリット
三相パワコンと単相パワコンのそれぞれの特徴を以下にまとめておきます。
単相パワコン | 三相パワコン | |
電源 | 100V/200V 家庭用と同じ電源で利用できる |
200V 設置場所付近に動力電線しか来ていない場合も使える |
1台あたりの容量 | 1台あたりの容量が小さい | 1台あたりの容量が大きい |
1台あたりの価格 | 安い | 高い |
施工性 | 設置台数が増えるため、施工の手間が増える | 設置台数が少なくて済み、施工の手間が減らせる |
送電効率 | 低い | 高い 送電距離が長くなってもロスが少ない |
変換効率 | 比較的高い | やや低め |
絶縁トランスの要否 | 不要 | 必要 |
騒音 | 比較的静か | 単相と比較し、動作音が大きい場合が多い |
単相パワコンは家庭用の電源でも動かすことができ、配線も簡単で、比較的使いやすいと言えます。音も小さいため、住宅地にある発電設備では単相のパワコンを採用する場合が多いでしょう。
1台あたりの価格も安く、三相で必要な「絶縁トランス」という機器が不要なことから、建設時のコストカットが見込めます。
三相のパワコンは工場などにある200Vの動力電源などを利用して動かすので、設置場所に動力電線しかない場合は三相パワコンを選ぶことになります。また1台の容量が単相パワコンよりも大きく、設置する台数を減らせ、工事や管理が比較的楽です。
ただし、直流の電力が電力会社の電力系統に流れ込まないようにするための「絶縁トランス」と呼ばれる装置を設置する必要があります。この装置は単相パワコンでは必要ありません。そのためにコストがかかるというのを知っておきましょう。
過積載率で選ぶなら三相パワコン
単相と三相のパワコンを比較すると、単相パワコンのメリットが大きいように見えますが、低圧(10〜50kW未満)の太陽光発電において最近主流となっている「過積載」では、三相パワコンが有利といわれています。
※過積載について詳しくは「太陽光発電パネルの過積載とは?」をご参照ください。
パワコンの「最大入力電圧」が高いほうがより多くのパネルを接続することが可能です。単相パワコンと比較して三相パワコンの方が最大入力電圧が高いため、少しでも多く過積載をしたい場合は三相の方が有利ということになります。
以上が三相と単相の簡単な違いの説明です。ご紹介したメリット・デメリットを参考に検討を進めてください。