2016年4月の電力小売り全面自由化が近づくにつれて、
「◯◯◯◯が電力小売り参入」
「△△電力が□□と提携し、電気と通信セット販売」
といったニュースが頻繁に見受けられるようになりました。
そんななか、2015年9月1日に、電力取引監視等委員会が新しく設立されました。
電力小売全面自由化に向けて設けられたもので、自由化後に電力取引が適正に行われているかなどのチェックを行う経済産業大臣直属の8条委員会※1です。
※1 国家行政組織法第8条に基づいて省庁内部に設置される第三者組織。
電力取引監視等委員会の役割
電力取引監視等委員会の具体的な業務は、
- 電力取引の適切な監視
- 送配電部門の中立性確保のための厳格な行為規制の実施
となります。
電力取引の監視
まず、電力市場の健全性を害する行為が行われていないかを監視します。
例えば、規模の大きい発電事業者がグループの小売部門に対して不当に安価で電気を卸していないか、といったことが監視されます。
消費者保護の観点で、契約の際に小売電気事業者が消費者への説明を十分に行っているか、などもチェックされます。
また、「小売市場における新電力のシェアは拡大しているか?」「電気料金が抑制傾向にあるか?」といった卸・小売り市場が健全な競争状態にあるかも監視することになります。
送配電部門の中立性確保
送配電部門の中立性を確保するため、監視し、厳格な行為規制を実施します。
例えば、送配電事業者とグループ会社との共同での営業や広告宣伝を行うことでグループ会社の発電・小売事業者が競争分野において有利になっていないかなど、送配電事業を行っていることがグループ内の小売電気事業者が不当に有利にならないよう監視することが必要となってきます。
また、送配電事業者の意思決定に関する取締役等が、自社グループ内の発電・小売事業者の取締役を兼任することは禁止されています。
電力取引監視等委員会に期待されること
日本に先行して自由化されたアメリカやヨーロッパの国々でも、残念ながらまだ自由化が成功しているとは言えない状況です。
1998年に自由化したドイツでは、規制の実効性が低かったため、既存の事業者が高い託送料金を設定したことが原因で、新規参入者はほぼすべて撤退し、電力価格は2000年には上昇し始めたそうです。また大規模な新電力が倒産し、消費者の新電力に対する不信感が大きくなっています。
アメリカでは1990年代に州単位で全面小売り自由化がされましたが、電力会社が十分に電力を確保できず大規模な停電が発生するところもありました。
先行する諸外国の事例をふまえ、全面小売り自由化する日本。
電力市場の健全な競争の確保や監視・改善勧告、そして消費者保護観点の監視など、まずは市場の環境を整えることが望まれます。
安定して電気が使えることが第一ですが、その上で電気料金の抑制や産業の競争力を高めることなど、電力自由化のメリットが創出されるよう期待されます。
参考:
総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力システム改革小委員会 制度設計ワーキンググループ|経済産業省