電気代
電気料金明細書には「力率割引」または「力率割増」が表示されていることがあります。どういった条件で割引または割増されるのか、なぜ力率の違いによって料金が割引されたり割増されるのか、などをご紹介します。

力率とは?

流れている電力のうち、有効に活用される電力の割合を「力率」といいます。
ある電気機器が電源から送り出された100Vの電圧✕10Aの電流を使って使用されているとき、電力が100%が有効に使われていれば1,000Wの消費電力となるはずです。しかし実際に消費される電力が800Wの場合、80%だけが有効に活用されたことになり、このことを「力率80%」と言います。残り20%分の電力は消費されず、契約電力からは除外されます。

なぜ無効な電力が発生するのか?

私たちが普段コンセントから使用している交流の電気では、電圧が変化すると電流は少しずれて変化します。このずれにより消費電力が「電圧」✕「電流」の計算式どおりではなくなり、無効電力が発生します。
負荷がコイルを含む場合は電圧に比べて電流が遅れる「遅れの無効電力」が、負荷がコンデンサを含む場合は電圧に比べて電流が進む「進みの無効電力」が発生します。
例えば、モーターが入っている機器の場合、モーターはコイルを含みますので遅れの無効電力が発生することになります。

負荷がコイルの場合

負荷がコイルの場合

負荷がコイルの場合、電流が1/4周期遅れる

負荷がコンデンサの場合

負荷がコンデンサの場合

負荷がコンデンサの場合、電流が1/4周期進む

力率割引/割増はどの電力契約で適用されるのか?

高圧・特別高圧で受電する契約において力率割引/割増があります。
低圧の場合も低圧電力(動力契約)の場合には力率割引/割増があります。
主に一般家庭が利用する低圧電灯契約にはこの割引・割増はありません。
※北陸電力は低圧電力に力率割引/割増はありません。

力率割引/割増の条件

電力会社からすると力率が低いと無駄な電力が増え、多くの電流を流さなくてはならなくなります。
できるだけ高い力率で使ってもらえるよう、高い力率には割引を、低い力率には割増を基本料金に適用しています。
力率85%を境に上回れば割引、下回れば割増が適用されます。

低圧電力の場合

力率85%の場合…割引・割増なし
力率85%を上回る場合…基本料金を5%割引
力率85%を下回る場合…基本料金を5%割増

高圧・特別高圧の場合

力率85%の場合…割引・割増なし
力率85%を上回る場合…1%力率が上回るごとに、基本料金を1%割引
力率85%を下回る場合…1%力率が下回るごとに、基本料金を1%割増

基本料金はどれくらい変わるのか?

力率によってどれくらい基本料金が変わるのか、サンプルで比較していきましょう。

低圧電力の場合

以下の3つの条件は同じで、力率が80%と90%でどれだけ基本料金が違うかを比較してみます。

  • 電力会社:関西電力
  • 契約電力:8kW
  • 基本料金:1kWあたり1,078円(2020年12月時点)
1.力率80%(力率割増5%)、契約電力8kWの場合の1ヶ月の基本料金
1,078 ✕ 105% ✕ 8kW = 9,055.2円
2.力率90%(力率割引5%)、契約電力8kWの場合の1ヶ月の基本料金
1,078円 ✕ 95% ✕ 8kW = 8,192.8円

力率が80%から90%に向上すると、1ヶ月あたり863.2円、1年では10,358.4円、基本料金が安くなります。

高圧(500kW以上)の場合

以下の4つの条件は同じで、力率が80%と90%でどれだけ基本料金が違うかを比較してみます。

  • 電力会社:関西電力
  • 電力契約:高圧電力AS
  • 契約電力:500kW
  • 基本料金:1kWあたり1,765.5円(2020年12月時点)
1.力率80%(力率割増5%)、契約電力500kWの場合の1ヶ月の基本料金
1,765.5円 ✕ 105% ✕ 500kW = 926,887.5円
2.力率90%(力率割引5%)、契約電力500kWの場合の1ヶ月の基本料金
1,765.5円 ✕ 95% ✕ 500kW = 838,612.5円

力率が80%から90%に向上すると、1ヶ月あたり88,275円、1年では1,059,300円、基本料金が安くなります。

特別高圧の場合

以下の4つの条件は同じで、力率が80%と90%でどれだけ基本料金が違うかを比較してみます。

  • 電力会社:関西電力
  • 電力契約:特別高圧電力A(20,000V供給)
  • 契約電力:2,000kW
  • 基本料金:1kWあたり1,721.5円(2020年12月時点)
1.力率80%(力率割増5%)、契約電力2,000kWの場合の1ヶ月の基本料金
1,721.5円 ✕ 105% ✕ 2,000kW = 3,615,150円
2.力率90(力率割引5%)%、契約電力2,000kWの場合の1ヶ月の基本料金
1,721.5円 ✕ 95% ✕ 2,000kW = 3,270,850円

力率が80%から90%に向上すると、1ヶ月あたり344,300円、1年では4,131,600円、基本料金が安くなります。

工場など電気をたくさん使うところでは、力率の差により基本料金が年間数百万円単位で変わるということになります。影響が大きいですね。

力率の改善はできるのか?

ここまで電気の契約容量が大きいほど、力率で基本料金が大きく異なることを見てきました。力率の改善が可能であれば、大きな経費削減が見込めるケースもあるでしょう。力率はどうやって改善するのでしょうか?

力率の改善のために「コンデンサ」を設置するのが一般的です。
力率悪化の要因として大きいのが、モータなどコイルを利用する機器で発生する遅れ無効電力であるため、進み無効電力を発生させるコンデンサを設置することで「遅れ」「進み」と打ち消し合って力率を改善させるのです。


高圧受電で契約電力が大きければ、力率により基本料金に大きな差が出ることをみてきました。
電気料金の削減を狙うのであれば、力率の改善ができないか検討してみましょう。基本料金が大きく削減できるかもしれませんので、まずは電気料金の明細を確認してみることをお勧めします。

電気料金明細イメージ
ご請求内訳
お客様番号 XXX-XXXXXXXXXX
ご契約お客様名 株式会社◯◯◯◯様
令和◯年◯月分 ご請求金額 ◯◯◯,◯◯◯円(消費税相当額 ◯◯,◯◯◯円)
ご契約種別 高圧電力
契約電力 ◯◯◯kW
力率 ◯◯%
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