企業の環境貢献活動というと、“コスト”や“人手”をかけるといった犠牲を払って環境や地域に貢献することで、倫理観の高さをアピールするPR効果を狙って取り組む、という印象がありませんか?
しかしいま、脱炭素に取り組む企業が増えているのは、少し趣きが違うようです。
いま「企業が脱炭素に取り組む理由」をご説明します。
自家消費太陽光を求める企業のモチベーションの移り変わり
1.節税対策
中小企業経営強化税制、生産性向上特別措置法の活用など
2.経費削減
FIT価格の下落により、売電するより使う方がお得になった。
導入コストが下がってきたことにより、電気を作ることが経済的メリットが高くなった。
3.BCP対策
2019年、2020年と長期に渡る停電の事例が目立ち、レジリエンス(強靭化)の考え方が浸透してきた。
4.環境貢献
「環境」に配慮した投資のはじまり
「環境」への取り組みを重視した投資は、責任投資原則(PRI)がはじまりと言われています。
PRIとは?
PRIは「責任投資原則」、Principles for Responsible Investmentの略称です。
投資にあたっては、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス課題(Governance)への取り組み状況を配慮すべき、という世界共通のガイドラインで、2006年に当時国連事務総⻑であったコフィー・アナン⽒が提唱しました。
自然災害による経済損失が拡大しており、また短期的な利益追求で企業の不祥事が多発していたため、短期的な利益を求めて投資するのではなく、ESGを配慮し長期的に利益をもたらす投資をしていこうというものです。
国連国際防災戦略(UNISDR)による自然災害経済損失額調査結果を見てみますと、1998〜2017年の温暖化に起因する自然災害による経済損失は前の20年と比べて151%も増加しています。
出典:Disasters: UN report shows climate change causing ‘dramatic rise’ in economic losses | UN News
PRIの6原則
- 私たちは投資分析と意志決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。
- 私たちは活動的な(株式)所有者になり、(株式の)所有方針と(株式の)所有慣習にESG問題を組み入れます。
- 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。
- 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
- 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
- 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。
PRIへの署名
PRIの6原則に賛同した機関投資家が署名することにより、投資判断にESGを取り入れることを表明・約束しています。署名機関は3,000社を超え、その運用資産は103.4兆ドルにものぼります。
出典:About the PRI
ESGを重視した投資の拡大
2008年のリーマン・ショック
2008年9月、リーマン・ショックで、世界的な株価下落・金融危機が発生しました。ここから欧米では投資家の関心が短期的経営指標から長期的経営指標に変化し、「ESG投資」への関心が大きくなりました。
ESGに配慮しているかどうかは、倫理的な意義に加え、持続可能性が高く長期的に有利な投資先かどうかの判断材料になりました。
日本ではリーマン・ショックで経済が悪化した際に、コスト削減のため環境貢献や社会貢献活動を削るといった動きがあり、欧米に大きく出遅れることとなりました。
ESG投資の拡大
欧米から出遅れた日本のESG投資ですが、2015年に年金積立金管理運用独立法人(GPIF)がPRIに署名し、ESG投資が日本でも注目されはじめました。市場規模も2016年の57兆円が2018年には231兆円と大きく伸びました。
サプライチェーンも含めた脱炭素化の動き
サプライチェーンとは、直訳すると「供給連鎖」となりますが、製品を消費者へ供給するにいたるまで、原材料の仕入れから部品の加工や組み立て、配送など、いろいろな企業が関与しています。こうしたプロセス全体をさしてサプライチェーンといいます。
大手メーカー企業だけが脱炭素を進めるのではなく、部品を納める、加工するといった企業にも脱炭素化が求められる動きが始まっています。
RE100の取り組み拡大の影響は中小企業にも
事業活動で使用する電力を100%再エネでまかなうことを目標とする国際的な取り組み「RE100」。
参加対象企業は世界規模で事業を行う企業となりますが、中小規模の企業に関係がないわけではありません。
RE100に加盟しているAppleは、下請け企業に対してもApple製品の製造に使う電力の100%再エネ化を求めているといいます。
こうした動きは拡大しているため、再エネ化に出遅れるとビジネスの機会を逃すことにつながりかねない事態となっています。
カーボンニュートラルに向けて政策も動く
2020年10月26日「2050 カーボンニュートラル宣言」、2021年の4月22日「2030年度のCO2削減目標を2013年度比46%削減」と、ここ数年政府の野心的な目標が発表されてきました。
カーボンニュートラルを実現するのための具体的なアクションを起こすための施策が実施されていきます。
再エネ争奪戦へ
ここまで
- ESG投資の拡大
- サプライチェーンも含めた脱炭素化の動き
- 国全体でカーボンニュートラルを目指す
とご紹介してきました。
脱炭素化の波に乗り遅れることはビジネスチャンスを逃すことに繋がりかねず、脱炭素化、電力の再エネ化が進むことが想定されます。
再エネ電源も電力会社からいくらでも購入できるというわけでもなく、独自に再エネ確保に取り組む企業が増えてきました。
脱炭素化に取り組む企業が急に増えてきたと感じるのはこうした背景があるのです。