デマンドレスポンスとは、電気の需要(消費)と供給(発電)のバランスをとるために、需要家側の電力を制御することです。日本語では「需要応答」といいます。デマンドレスポンス(Demand Response)を略して「DR」と言われることもあります。

「供給」に「需要」をあわせるのがデマンドレスポンス

電気は生産(発電)と消費が同時に行われ、基本的に貯めることができません。
刻々と変動している電力消費量に合わせて供給する電力量を常に一致させ続ける必要があります。
これを「同時同量」といいます。

これまでは、電力会社が予測される需要に合わせて発電所の稼働や出力を調整する「需要量に供給量を合わせる」調整が行われてきました。
ディマンドリスポンス推進協議会によると、電力システムのコストのうち約10%が、時間割合では1%に満たないピーク需要のために費やされているとのこと。
「需要量に供給量を合わせる」ためには、短期間のピーク時用の「ほとんど利用されない設備」が必要となるのです。

これに対しデマンドレスポンスは「供給量に需要量を合わせる」手法です。
おもに電力会社からの要請があるときに電力消費を抑える「下げDR」と、電力消費を増やす「上げDR」の2種類がありますが、デマンドレスポンスといえば一般的に「下げDR」を指すことが多いようです。

下げDR
需要が多く電力不足のおそれがあるときに、要請によって需要家が消費を抑えるデマンドレスポンス。
たとえば猛暑で需給逼迫の恐れがあるときに、要請を受けた需要家が電力消費を削減するといった手法です。
上げDR
需要に比べて供給が多いときに、要請によって電力の消費を増やすデマンドレスポンス。
たとえば晴天で太陽光発電がよく発電していて供給過多の恐れがあるときに、蓄電池に充電するよう要請する、などの手法です。

デマンドレスポンスの種類

デマンドレスポンスには、おもに以下の2つの種類があります。
現在実施されている下げDRを中心に説明します。

電気料金型デマンドレスポンス

「時間帯別料金」「ピーク時料金」など、電力需要ピーク時の料金を割高にし、家庭や会社で電力消費を抑制するよう促すしくみです。
比較的簡単に大多数に適用できるメリットがある反面、その時々の需要家の反応はまちまちであり、効果が不確実というデメリットもあります。

インセンティブ型デマンドレスポンス

あらかじめ電力会社と契約を結んだ需要家が、電力需給逼迫時に電力会社からの要請に応じて節電し、その節電量に応じてインセンティブが得られるしくみです。
契約を結んで行うため確実な効果が期待できますが、電気料金型と比べ手間がかかり、大多数に適用するのは難しい手法です。

デマンドレスポンスのしくみ

実際にはじまっているインセンティブ型デマンドレスポンスのおおまかなしくみをご紹介します。

電力会社と需要家(電気の消費者)のほかに、アグリゲーターという事業者が存在します。
多数の需要家をまとめる存在で、デマンドレスポンスに参加する需要家はアグリゲーターと契約するのが一般的です。
その場合、節電指令や報酬はアグリゲーターから受け取ります。


1.電力会社から節電指令を受けたアグリゲーターが、契約している需要家へ節電指令
2.アグリゲーターから需要家へ節電指令
3.需要家が節電を実施。
4.アグリゲーターが節電量を電力会社へ報告
5.節電料に応じた報酬を電力会社からアグリゲーターへ支払う
6.節電料に応じた報酬をアグリゲーターから需要家へ支払う

デマンドレスポンスのメリット

下げDRのメリットとして、ピーク時の消費電力量を抑えることが挙げられます。
ピーク時にコストの高い電源で焚き増しを行わずにすむことで、コストが押さえられる可能性があります。
また1年のわずかな時間だけ発生するピーク需要を満たすためだけの電源設備を削減することも考えられ、設備投資や維持費の削減にもつながります。

需要家としても、節電することが省エネや善意だけでなく、経済的なメリットを受けられ、ビジネス目的に取り組むことも可能です。節電して余った電力を発電と同等に扱うという考え方を「ネガワット」といいます。
※ネガワットについて詳しくは以下の記事をご参照ください。
ネガワット取引とは?注目キーワードを解説

上げDRのメリットとして、ピークシフト(電力を消費する時間帯をずらすこと)により電力需要の平準化が見込めます。
とくに再生可能エネルギー電源の出力変動の吸収が期待されます。
たとえばゴールデンウィークは、晴天が続き太陽光発電による発電量が1年を通して最も高くなる時期ですが、休業している事業者が多く電力需要が落ち込む時期でもあります。
供給過多の恐れがあり、一部の太陽光発電では出力制御が行われていますが、このような発電できるのに無駄にしてしまう電力も、上げDRによって活用できる道が開けます。

自動化の実証実験が進むデマンドレスポンス

電力会社から指令を受けたアグリゲーターが需要家へメールなどで連絡し、需要家が手動で需要を制御する、といった
方法では、対応時間が長くなったり、デマンドレスポンスの効果が不確実となるおそれがあります。

需要の制御を自動化し、たとえば電力消費を抑える要請があれば、自動的に空調や照明機器の出力を下げられれば、対応時間も短縮でき、効果の確実性も高まります。

こうした自動デマンドレスポンス(ADR:Automated Demand Response)の実証実験が進んでいます。

自動デマンドレスポンスは、たとえば以下のような流れとなります。
1.電力会社またはアグリゲータから「12時〜13時の間、電力消費を2kW下げる」などのDR信号を送る。
2.対象の需要家の機器でDR信号を受信し、信号の内容に基づいてHEMSやBEMS、FEMSといった電力マネジメントシステムに接続された機器(照明や空調など)の出力を抑える制御を自動的に行う。
3.デマンドレスポンスの実績がサーバに集められ自動的に集計される。
4.電力会社またはアグリゲータへ自動的にレポートが届く。

自動デマンドレスポンスの国際標準規格、OpenADR 2.0b

電力会社やアグリゲータ、需要家といったさまざまなプレイヤーが存在し、使用している電気製品も様々ですので、共通の規格が必要となります。

自動デマンドレスポンスの国際標準規格に「OpenADR 2.0b」というプロトコルがあります。
(プロトコルとは機械同士が通信する際の手順や規約のことで、いわばネットワーク上でコンピュータが使う言語のようなものです。)
共通のプロトコルを使うことでデマンドレスポンスの信号をやりとりすることができるというわけです。

標準規格の整備やIoT技術の進歩により、デマンドレスポンスの自動化の実証が進んできています。
より効果的なデマンドレスポンスが実用化されるのも、そんなに先ではないでしょう。
電力の安定的な供給と、無駄の削減につながるデマンドレスポンスに引き続き注目していきましょう。