2022年度に出力制御が大きく変わります。
ポイントは
- 経済的出⼒制御(オンライン代理制御)
- 出⼒制御対象事業者の拡⼤
の2点。
すでに稼働中の設備にも大きな影響が予想されます。太陽光発電設備の出力制御を中心に詳しく見ていきます。
【参考・出力制御基礎】出力制御ルールは3種類
変更点の説明には出力制御に関する用語が出てきますので、ここから少し用語解説をはさみます。
出力制御には
- 旧ルール
- 新ルール
- 指定ルール
の3種類があります。
ルールごとに「無補償での出力制御上限」や「出力制御機器の設置義務」に違いがあります。
旧ルール | 新ルール | 指定ルール | |
---|---|---|---|
無補償での 出力制御上限 |
年間30日 | 年間360時間 | 無制限 |
出力制御機器 設置義務 |
なし オフライン可 |
あり オンライン |
あり オンライン |
出力制御機器とは、インターネットを通じて電力会社からの指示を受け、遠隔出力制御を可能にする「出力制御対応パワコン」+「出力制御ユニット」+「インターネット接続機器」を指します。
遠隔出力制御を行う発電事業者を「オンライン事業者」と呼びます。
出力制御機器を設置していない旧ルールの事業者は、前日に電力会社から連絡を受け、当日手動で現地で制御する必要があります。こうした制御を行う発電事業者を「オフライン事業者」と呼びます。
旧ルール事業者は設置義務はありませんが、オンライン化が推奨されています。
どの事業者にどのルールに適用されるか
どのルールが適用されるかは、電力会社ごとに設備の規模や接続申込の時期により決まります。
現在出力制御が行われている九州電力を例に見てみます。
九州電力エリアの出力制御ルール
旧ルール | 新ルール※2 | 指定ルール | ||
---|---|---|---|---|
接続 申込 |
500kW以上 | 2015年1月25日まで | ー | 2015年1月26日以降 |
50kW以上 500kW未満 |
||||
10kW以上 50kW未満 |
||||
10kW未満※1 | 2015年3月31日まで | ー | 2015年4月1日以降 | |
無補償での出力制御上限 | 年間30日 | 年間360時間 | 無制限 | |
出力制御機器設置義務 | なし | あり | あり |
10kW以上は2015年1月25日を境に旧ルール、指定ルールに分かれます。
10kW未満は2015年3月31日を境に旧ルール、指定ルールに分かれます。
このように接続申し込みの時期、設備の容量・規模で適用ルールが決まります。
※1 10kW未満(主に住宅用)の太陽光発電は、当面出力制御の対象とはならず、将来的に必要になった時に別途お知らせがあります。
※2 九州電力は、出力制御の対象見直し等が定められた省令、告示が施行された2015年1月26日時点で、接続申込量が接続可能量をすでに超過していたため、新ルールの適用がありません。
九州電力エリア以外の出力制御ルールの適用内容は、以下の記事をご参照ください。
電力会社エリアごと出力制御ルール整理表
経済的出⼒制御(オンライン代理制御)
経済的出力制御はオンライン代理制御とも呼ばれますが、オフライン事業者が行うべき出力制御を、オンライン事業者が代理で実施、代理制御の対価を受け取る、というものです。
オンライン事業者の売電金額への影響
オフライン事業者の代わりに制御した時間帯に発電していたであろう「みなし発電量」に、FIT買取価格を乗じた金額が、代理制御の対価として支払われます。
オフライン事業者の売電金額への影響
オンライン事業者に代わりに制御をしてもらうことから、本来出力制御されるはずであった時間帯の発電量について、買取義務者から対価が支払われないこととなります。
出力制御のオンライン、オフラインについて詳しくは以下の記事もご参考に。
出力制御のオンライン・オフラインについて誤解していませんか?
経済的出⼒制御(オンライン代理制御)にはどんな効果があるのか
オフライン事業者が手動制御を行う負担軽減に
オフライン事業者は、電力会社から前日に出力制御の連絡を受けて、発電事業者側で現地操作で停止したり復帰させたりして制御を行っています。オンライン代理制御が実施されることで、オフライン事業者にとっては手動制御の手間が省けます。
実需給に近い柔軟な調整が可能
オンライン制御はより実需給に近い柔軟な調整が可能であり、必要時間帯のみ制御が可能です。
例えば、九州でオンライン代理制御を導⼊した場合、オンライン制御とオフライン制御が混在する現状と⽐べて制御量が2割程度低減する効果が見込まれます。
出力制御対象拡大
従来の出力制御対象は
- 500kW以上の旧ルール事業者
- 10kW以上の指定ルール事業者、新ルール事業者
でした。
2020年4月から“当面、制御対象外と整理されてきた旧ルール500kW未満”が出力制御対象に加えられます。
旧ルール | 新ルール | 指定ルール | ||
---|---|---|---|---|
接続 申込 |
500kW以上 | 従来 | 従来 | 従来 |
50kW以上 500kW未満 |
追加 | 従来 | 従来 | |
10kW以上 50kW未満 |
追加 | 従来 | 従来 | |
10kW未満 | ||||
無補償での出力制御上限 | 年間30日 | 年間360時間 | 無制限 | |
出力制御機器設置義務 | なし | あり | あり |
急転したように感じられるかもしれませんが、2019年8月に取りまとめられた「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会中間整理(第3次)」で合意されています。
- 当⾯の間は出⼒制御の対象外と整理されてきた旧ルール500kW未満の太陽光・⾵⼒についても出⼒制御の対象とし、30日無補償ルールを適用する
- 旧ルール事業者に直ちにオンライン機器設置を義務付けることは困難ということで、「経済的出力制御」の手法で実施する
旧ルール500kW未満は出力制御対象外では?
旧ルール500kW未満は「対象外」と認識されている方が大多数を占めると思われます。
再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の資料を読み解くと…
“FIT認定事業者は制度上、認定取得日や発電規模によらず「出力抑制に協力すること」とされており、各事業者においてもその旨を遵守することに同意したうえで事業計画書を提出している(FIT法第9条第3項第1号、同施行規則第5条第1項第4号)。”
とあります。
確かに事業計画認定申請登録の際、遵守事項に以下の項目がありました。
“接続契約を締結している一般送配電事業者又は特定送配電事業者から国が定める出力制御の指針に基づいた出力制御の要請を受けたときは、適切な方法により協力すること。”
また2017年4月のFIT法改正前に「設備認定」を受けた方も、改正後の「事業計画認定」を受けるため「事業計画書」を提出されたと思います。そこにも同様の遵守事項があり、同意を条件に改正FIT法の下でも認定を受けたとみなされた経緯がありますので、現在FIT認定を受けている事業者はすべて出力制御に協力することに同意していると言えます。
古い記事ですが、当時のFIT法改正の記事もご参考に。
2017年4月から設備認定制度が変わります | エコめがねエネルギーBLOG
再生可能エネルギー発電事業計画書とは?【改正FIT法】| エコめがねエネルギーBLOG
10〜500kW未満の旧ルール事業者を出力制御対象にするインパクト
九州電力エリアの出力制御ルール別内訳が公表されているので見てみましょう。
旧ルールの低圧太陽光は6.4万件と膨大な数の事業者に影響があります。
いつから適用されるか
- オンライン代理制御システムの導入時期については、発電事業者への一定の周知期間の確保、契約上の実務、システム改修等を考慮して、2022年早期を目指す。
- 出力制御対象事業者の拡大と代理制御システムの導入時期を合わせる。
とあり、いつから適用されるか詳細は不明ですが、遅くとも2022年度内には実施されるのは確実でしょう。
オンライン代理制御の開始時期等、具体的な運⽤⽅法については、各⼀般送配電事業者のホームページに随時更新される予定とのこと。
まとめ
新たに出力制御対象となる500kW未満の旧ルール事業者も、代理制御を行うことになる指定ルール事業者にとっても、事業収益に直結する変更です。
納得できる制度設計と、丁寧な説明が求められます。引き続き経過を注視し、情報収集していきましょう。
参考
改正再エネ特措法に関する説明会 説明会資料と動画
電力会社エリアごと出力制御ルール整理表 | エコめがねエネルギーBLOG