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2012年7月にスタートし、日本では、今年で4年目を迎える固定価格買取制度。来年度の買取価格の発表が気になっている方も多いのではないでしょうか。

この固定価格買取制度を世界に先駆けて導入し、再エネを推進してきた代表的な再エネ先進国は「ドイツ」と「スペイン」です。
「スペイン」では、現在、電力消費量の約40%が再生可能エネルギーによってまかなわれています。

そこで、以前に紹介しましたドイツに続き、今回はスペインのFIT事情についてご紹介します。

参考:スペインの再生可能エネルギー ~世界の再エネ~

スペインでの固定価格買取制度の歴史

再エネ固定価格買取制度のはじまり

スペインで固定価格買取制度が導入されたのは、1994年。日本よりも20年も早いスタートでした。

買取価格はエネルギー源別(太陽光/風力/水力など)に設定され、エネルギー源によっては、設備容量別、燃料別(林業廃棄物/バイオ燃料など)にさらに区分をしているものもありました。

FIT制度の導入により、太陽光、風力発電をはじめとする再エネ電力の導入が大きく進みます。

再エネ発電量と再エネ比率の推移

再エネ発電量と再エネ比率

出典:欧州主要国における固定価格買取制度の変遷動向調査 | 環境省

はじけた「太陽光バブル」とFIT制度の凍結

買取価格の設定を高くした結果、高価格の太陽光の導入は拡大、2008年には設備容量が急増し、巨額の財政赤字を出し続ける事態を引き起こします。

結果として、太陽光の買取価格は2008年に一部引下げられ、2009年に年間上限枠を設定。2011年にさらに引下げられることとなりました。

また風力発電に関しても、2007年以降に設置された風力発電設備に対し買取価格の引下げや買取中止などが2010年に実施されます。

そして2013年7月、遂に、電力市場改革の一環として、再生可能エネルギーの買取制度自体が凍結されてしまいます。

スペインのFIT制度での買取価格

スペインの買取価格は、エネルギー源別に設定され、設備容量別、燃料別にさらに区分があります。

2013年買取価格

出典:新エネルギー等導入促進基礎調査事業(海外における新エネルギー等導入促進施策に関する調査)報告書 | 資源エネルギー庁

太陽光発電の買取価格の推移

太陽光発電の買取価格は、当初「5kW以下」「5kW超」の容量による区分がされており、5kWを超える設備の買い取り価格は、5kW以下の設備に比べてかなり低く抑えられていました。
買取期間は30年で、長期間にわたる買い取りを約束していました。

2004年

買取価格の引き上げとともに「100kW以下」「100kW超」の区分とする変更がありました。
結果として5kW〜100kWの設備の買取価格が大幅に上がることになりました。

2007年

「100kW以下」「100kW〜10MW」「10MW〜50MW」と区分が変更されました。
100kW〜10MWまでという広い範囲の設備において買取価格を引き上げ、爆発的な増加を引き起こします。

2008年

目標をはるかに上回る導入に伴い、買い取り価格を緊急引き下げすることに。
区分も「建物一体型(20kW以下)」「建物一体型(20kW超)」「地上設置型」に変更されました。

また設備認定する容量に上限が設けられ、2009年は400MWと設定されましたが、非常に多くの申請があったため特例として500MWとされました。

2010年

買取価格 (インセティブ)を適用する年間上限時間が導入されました。既に運転開始している設備も含む遡及適用です。

2012年1月

新規再エネ発電設備のFIT制度への登録停止がされました。

2013年7月

既存設備を含めて再生可能エネルギー発電設備を対象とした固定価格買取制度を撤廃し、新制度へ移行することが公表されました。

スペインのFIT制度における太陽光発電買取価格推移

太陽光発電買取価格推移

出典:欧州の固定価格買取制度について | 資源エネルギー庁

FIT撤廃後の新制度

2014年6月に、新制度が始まりました。
新制度では市場価格での売電で妥当な利益が得られないと判断された設備には、特定(支援)料金が支払われます。

妥当な利益の想定として、設備閉鎖までの期間の投資収益率(IRR)が7.4%とされていて、投資回収率が7.5%を超過したと判断されたら、インセンティブの付与は打ち切られます。

なぜ赤字が増大したのか?

固定価格買取制度は、電力利用者全てが再エネ賦課金を負担することで、市場価格より高い価格で電気を買い取れるしくみです。

急激に発電設備が増えたら、市民の電気代は高騰しますが、電力会社の経営状況を悪化させるものではないはずです。

スペインでこのような事態になったのは、経済・財政状況などにより、上乗せ分を電気料金へ転嫁ができず、電力料金の徴収不足がふくらんだためです。
FIT制度の問題というより、当時のスペインの政策に無理があったといえるのではないでしょうか。

日本でも再エネ賦課金の増大などの課題もあり、今後再生可能エネルギーに関する論議が盛んになることも予想されます。
再生可能エネルギー促進のために、総合的観点からの議論が必要となってくることでしょう。

参考

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