CEMS(セムス)とは、Community Energy Management Systemの略で、地域全体のエネルギーを管理するシステムのことです。
点在する太陽光発電や風力発電などの発電設備からの電力供給量と、地域での電力需要の管理を行います。
「EMS」とつく言葉で、“HEMS”や“BEMS”といった言葉を耳にされたことがあるのではないでしょうか。
EMSは、Energy Management Systemの略で、
- 電気の使用状況を「見える化」
- 節電のための電化製品の制御
- 発電設備や蓄電池の制御
を行って、かしこく電気を使うためのシステムです。
ISO/DIS 50001として国際規格化されたエネルギー管理体系にも「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」があり、混同を避けるため「xEMS」と称されることもあります。
「x」の部分には、管理する範囲を表す言葉の頭文字が入ります。
- HEMS(ヘムス)
- Home Energy Management Systemの略で、住宅のエネルギー管理システムのことです。
- BEMS(ベムス)
- Building Energy Management Systemの略で、ビルのエネルギー管理システムのことです。
- FEMS(フェムス)
- Factory Energy Management Systemの略で、工場のエネルギー管理システムのことです。
CEMSは、HEMS、BEMS、FEMSを含めた地域全体のエネルギーを管理するシステムなのです。
たとえば、コミュニティ全体で需給のバランスを保つ、以下のようなコントロールが可能です。
- 住宅の屋根の太陽光発電による電気が余った場合、昼間に電気をたくさん使うビジネス街へ融通して活用する。
- 電力需要が予測を上回る時は、各家庭の電化製品を省エネモードに切り替えるなどして節電する制御を行うとともに、蓄電池に貯めた電気を使うよう切り替えるなどして需要を抑制する。
スマートコミュニティに欠かせないCEMS
エネルギー管理システム(EMS)を活用し、電気に加え、熱、交通も含めたエネルギーを効率的に使う社会システムを「スマートコミュニティ」といいます。
温暖化対策やエネルギー自給率の向上、防災といった観点から、スマートコミュニティの実現に向けた取り組みがすすめられており、大規模な実証実験を行うなど国も大きな予算を投入して取り組んでいます。
そうしたスマートコミュニティに欠かせないのがCEMSです。
HEMS、BEMS、FEMSで家庭、ビル、工場での各エネルギー需給を最適化し、CEMSにより地域のエネルギーを総合的に管理します。
CEMSは電力需給を最適化できる次世代送電網「スマートグリッド」の中核となるしくみなのです。
CEMS活用事例
宮城県東松島市では、市と積水ハウス株式会社により進めてきた「東松島市スマート防災エコタウン」が2016年6月に完成しました。
「東松島市スマート防災エコタウン」太陽光発電設備(容量:470kW)で発電し、その電力は地域の公営住宅や病院、公共施設などで使用されます。
固定価格買取制度(FIT制度)での売電をせず、既存の大規模発電所からの送電電力にもほとんど依存しない、日本初の「マイクログリッド」となっています。
太陽光発電設備からの電力は、CEMSで最適制御しながら供給されます。
防災エコタウンの名前のとおり、災害時など系統電力が遮断した際も、同タウン系統内の太陽光発電を蓄電池を用いて安定化させ、大型のバイオディーゼル発電機と組み合わせ、3日間は通常の電力供給が可能。大震災のような長期の停電時にも、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで病院や集会所などへの最低限の電力供給を実現できるようになっています。
まとめ
CEMSを活用することで、「省エネ・創エネ・蓄エネ」を統合した制御が可能になります。
活用が進むことで、再生可能エネルギーの積極的な導入、エネルギーの効率的な使用の達成が可能で、無駄なく安定した電力の活用に期待できます。