太陽光発電の買取期間満了(卒FIT)についての基礎知識
卒FITとは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)での買取期間が満了することです。
2009年に「太陽光発電の余剰電力買取制度」が始まりました。その後「固定価格買取制度」へと移行されましたが、この制度を利用すれば、太陽光発電の余剰電力(ご家庭で消費しきれなかった電力)は10年間固定価格で買い取られることが約束されています。
2019年11月からこの買取期間が満了を迎えるケースが出始め、2019年11月・12月だけで約53万件にもなると言われています。
ひとつひとつは⼩さな容量でも、数が膨⼤でまとめれば⼤きな電⼒量になりますので、その行方が注目されていて、「2019年問題」とも言われています。
卒FITのご家庭には、買取期間満了をお知らせする書面が、満了時期の半年前くらいに電力会社から届きます。
東京電力、関西電力などの既存の大手電力会社(旧一般電気事業者10社。以降「10電力会社」)の小売部門へ売電をしているご家庭が大部分を占めると思いますので、その方を対象に今後の流れや、今後も余剰電力を買い取ってもらうために知っておくべきことをまとめます。
北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力
※新電力
10電力会社以外の小売り電気事業者を以降「新電力」と記します。
卒FITのポイント これだけは押さえておきましょう
余剰電力をどうするか、ライフスタイルに合わせて検討されることをお勧めします。
買取期間満了の方が出始める時期となり、それに関連したビジネスが次々と登場していますが、熱心なセールストークに流されないために、最低限以下のことを押さえておきましょう。
何も対応しなければ、新しい買取価格で自動契約更新されて10電力へ売電することとなる。
自動更新される基本的な買取プランの買取価格は1kWhあたり7.0円〜9.0円となる。
基本的な買取プラン以外にも、ライフスタイルによってお得になる買取プランが用意されているが、それらを選択する場合は電力会社への申し込みが必要。またプラン利用料金が発生する場合がある。
10電力会社以外にも買取を行う新電力が多数あり、様々なプランが存在する。
10電力会社へ自動的に継続して売電をすることとなっても、後から別の新電力や別の買取プランへ移行することが可能。
電力会社ごとの基本的な買取プラン
2019年7月時点で公表されている、10電力会社の自動的に継続して買取されるプランをご紹介します。
北海道電力
- プラン名
- 買取プラン
- 買取単価(1kWhあたり)
- 8.00円/kWh
※買取価格には消費税等相当額(10%)が含まれます。
※買取価格は変更される場合があります。
※離島(礼文島、利尻島、天売島、焼尻島および奥尻島)は本プランの適用対象外となります。離島における買取価格等が決まり次第、対象となる方に個別にお知らせがあります。 - 対象エリア
- 北海道
- 契約方法
- 現在北海道電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了日までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 北海道電力>契約要綱・購入単価表
- 参考:北海道電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 再生可能エネルギー固定価格買取制度の買取期間満了のお知らせ
- 北海道電力の告知ページ
- 上記買取プランのほかに、北海道電力の電気をご利用の場合は「エネモプレミアムプラン」があります。詳細は北海道電力のページをご確認ください。
北海道電力>FIT制度の買取期間満了後の当社買取価格等について
東北電力
- プラン名
- シンプル買取サービス
- 買取単価(1kWhあたり)
- 9.00円/kWh
※買取単価については、非化石価値等(ゼロ・エミッション価値、環境表示価値を含む)ならびに消費税等相当額(10%)を含みます。買取単価は⾒直される場合があります。
※離島(佐渡島、飛島、粟島)は本サービスの適⽤対象外となります。離島における買い取りは、一般送配電事業者である東北電力送配電カンパニーが別途買取メニューを定めて、提示する予定です。 - 対象エリア
- ⻘森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、新潟県
- 契約方法
- WEBサイトまたはフリーダイヤルから申込み。
現在東北電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、FIT期間満了日の7日前までに現行契約の廃止申込みがない場合、新しい買取価格で契約が自動更新されます。 - 参考:契約要綱
- 再生可能エネルギーの固定価格買取制度>2.売電を希望されるお客さまへお申込み前の確認について>(1) 再エネ発電設備系統連系のお申込みをご検討されている方へ(契約要綱・お手続き方法)
- 参考:東北電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 再生可能エネルギーの固定価格買取期間満了に関するお知らせ
- 東北電力の告知ページ
- 上記のシンプル買取サービスのほかに、「でんきお預かりサービス」などの買取プランが用意されています。くわしくは東北電力のページをご確認ください。
東北電力>買取期間が満了する家庭用太陽光向けの新サービス「ツナガルでんき」のご提供について~お客さまの多様なニーズにお応えし、再生可能エネルギーの有効活用に貢献~
東京電力
- プラン名
- 余剰電力の買取り
- 買取単価(1kWhあたり)
- 8.50円/kWh
消費税相当額(10%)を含む。
買取単価は今後見直される場合があります。 - 対象エリア
- 栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都(島嶼地域を除く)、神奈川県、山梨県、静岡県(富士川以東)
- 契約方法
- 現在東京電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了日までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 再生可能エネルギー発電設備からの電力受給契約要綱(2019年4月1日実施)
- 参考:東京電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 再生可能エネルギーの固定価格買取期間満了のご案内
- 東京電力の告知ページ
- 上記の基本的な買取プランのほかに、「電気のお預かりプラン」などが用意されています。くわしくは東京電力のページをご確認ください。
東京電力エナジーパートナー>「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT)による買取期間満了後の余剰電力買取りについて
中部電力
- プラン名
- シンプルプラン
- 買取単価(1kWhあたり)
- 7.00円/kWh
※単価には消費税相当額(10%)、非化石価値を含みます。
※単価は必要に応じて見直される場合があります。 - 対象エリア
- 中部エリア内
- 契約方法
- 現在中部電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了日までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 再生可能エネルギー発電設備からの電力購入に係るご契約について>要綱・指針・法令など
- 参考:中部電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 買取期間満了のお知らせおよび満了後の買取契約のお手続き方法について
- 中部電力の告知ページ
- 上記の「シンプルプラン」のほかに、「プレミアムプラン」などが用意されています。詳しくは中部電力のページをご確認ください。
中部電力>再生可能エネルギーを活用した新たなサービスの展開について~FIT制度にもとづく買取期間が満了を迎えるお客さま向けのサービス~
北陸電力
- プラン名
- かんたん固定単価プラン
- 買取単価(1kWhあたり)
- 8.00円/kWh
上記買取料金は、現時点での買取料金であり、変更される場合があります。
買取料金は消費税等相当額(10%)を含んでいます。 - 対象エリア
- 富山県、石川県、福井県(一部を除く)、岐阜県の一部
- 契約方法
- 現在北陸電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了の1カ月前までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 固定価格買取制度に基づく買取期間満了後の買取について>各買取プランに関する契約要綱(2019年6月1日実施)
- 参考:北陸電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 再生可能エネルギー固定価格買取制度の買取期間満了のお知らせ
- 北陸電力の告知ページ
- 上記「かんたん固定単価プラン」のほかに、「あんしん年間定額プラン」などが用意されています。くわしくは北陸電力のページをご確認ください。
北陸電力>固定価格買取制度に基づく買取期間満了後の買取について
関西電力
- 買取単価(1kWhあたり)
- 8.00円/kWh
料金単価には、消費税等相当額(10%)および非化石価値相当額が含まれます。
買取単価は、今後見直しとなることがあります。 - 対象エリア
- 滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、兵庫県(一部を除きます)、福井県の一部、岐阜県の一部、三重県の一部
- 契約方法
- 現在関西電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 再生可能エネルギーの固定価格買取制度>契約要綱および申込書類
- 参考:関西電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 太陽光発電設備からの余剰電力買取期間の満了について
- 関西電力の告知ページ
- 上記の基本的な買取のほかに、「貯めトクサービス」があります。くわしくは関西電力のページをご確認ください。
関西電力>買取期間が終了する太陽光発電からの余剰電力買取について
中国電力
- 買取単価(1kWhあたり)
- 7.15円/kWh
税込・消費税率10%。非化石価値など相当額を含む。
買取価格は,年度(4月~翌年3月)ごとに見直される場合があります。 - 対象エリア
- 鳥取県,島根県,岡山県,広島県,山口県,兵庫県の一部,香川県の一部,愛媛県の一部
- 契約方法
- 現在中国電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 太陽光発電からの電力受給に関する契約要綱(2019年5月1日実施)
- 参考:中国電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度にもとづく買取期間満了のご案内
- 中国電力の告知ページ
- 上記の基本的な買取のほかに、「ぐっとずっと。グリーンフィット」の提供が予定されています。くわしくは中国電力のページをご確認ください。
中国電力>「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」による買取期間満了後の再生可能エネルギー電気の買取価格等について
四国電力
- プラン名
- 買取プラン
- 買取単価(1kWhあたり)
- 7.00円/kWh
買取単価には非化石価値相当額を含んでおり、消費税等相当額を税率10%とした場合の税込単価となります。
買取単価は見直される場合があります。 - 対象エリア
- 四国4県(香川県、愛媛県、徳島県、高知県)※ただし、以下を除く
[香川県]小豆郡(土庄町・小豆島町)、香川郡直島町
[愛媛県]新居浜市別子山、今治市の一部(伯方町・上浦町・大三島町・宮窪町・吉海町・関前)、越智郡上島町 - 契約方法
- 現在四国電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 再生可能エネルギー発電設備からの電力受給契約要綱(令和元年5月1日実施)
- 参考:四国電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 固定価格買取制度に関する重要なお知らせ
- 四国電力の告知ページ
- 上記の買取プランのほかにも「ためトクサービス」が用意されています。くわしくは四国電力のページをご確認ください。
余剰電力の買取期間が満了したお客さまに朗報!|四国電力
九州電力
- 買取単価(1kWhあたり)
- 7.00円/kWh
税込・消費税率10%
非化石価値は全て九州電力に帰属し、買取単価には非化石価値相当額を含みます。 - 対象エリア
- 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県
(九州本土と連系していない離島を除く) - 契約方法
- 現在九州電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 再生可能エネルギー発電設備からの電力受給に関する契約要綱[小売買取](2019年7月1日実施)
- 参考:九州電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 太陽光発電設備からの余剰電力買取期間の満了について
- 九州電力の告知ページ
- 上記の基本的な買取のほかに「お預かりプラン」の提供が予定されているようです。くわしくは九州電力のページをご確認ください。
九州電力>固定価格買取(FIT)制度の買取期間満了後の買取りについて
沖縄電力
- 買取単価(1kWhあたり)
- 7.5円/kWh
税込、消費税率10%
買取単価は変更する場合があります。
上記買取単価には非化石価値相当額を含みます。 - 対象エリア
- 沖縄県
- 契約方法
- 現在沖縄電力の小売部門が余剰電力の買取を行っていて、FIT期間が終了する場合、買取期間満了までに別段の意思表示がない場合は、新しい買取価格で契約が自動更新されます。
- 参考:契約要綱
- 再生可能エネルギー発電設備からの電力受給に関する契約要綱〔小売買取〕(令和元年7月1日実施)
- 参考:沖縄電力からFIT期間満了される方への通知サンプル
- 太陽光発電からの電力買取契約の終了について(お知らせ)
- 沖縄電力の告知ページ
- 沖縄電力>固定価格買取制度終了後の取り扱いについて
電力が無償で引き取られるケースは?
ここまで大手10電力会社の小売部門へ売電しているケースでは、買取期間が満了となった時点で別途契約をしたりしなくても買取先不在とはならないことをご紹介してきました。
しかし無償で引き取られてしまうケースがないというわけではありませんので、そのケースをご紹介します。
自動更新されないケース
大手10電力会社の小売部門以外へ売電しているケースなどにおいて、契約が自動更新ではない場合、どこかの小売電気事業者と買取契約を締結しないと買取契約が不在となり、余剰電力が無償で一般送配電事業者へ引き取られることとなります。
現在売電している小売電気事業者から買取期間満了のお知らせが届いていれば、その内容を確認しましょう。
また現在の売電先からの買取期間満了のお知らせが届いていれば、満了前に新たな買取契約を進めておくことが可能ですので、買取プランを比較検討し準備を進めておかれることをお勧めします。
売電契約先が倒産してしまったケース
今後、買取契約を結んだ小売電気事業者が事業を辞めてしまうケースが出てくるかもしれません。
なるべく早くあらたな売電先を探し契約することとしても、契約には一定の期間を要しますので、一時的に買取契約不在となり、余剰電力が無償で一般送配電事業者へ引き取られることとなります。
蓄電池や電気自動車に充電して売電しないつもりなら契約は不要か?
ここまでご紹介してきたとおり、卒FIT後も発電した電気が余れば、買い取ってもらうことが可能です。
しかしこれまでより買取価格は大幅に下がるのは確実です。
また購入する電気の料金は(エリアや契約プランにより異なりますが)だいたい20円/kWh程度と、余剰電力の買取単価と比較してかなり高くなります。
そうなると余剰電力を売るよりも、余らせずご家庭で使い切ってしまおうとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
卒FITを控えて、災害時の対策にもなる蓄電池や電気自動車が注目を集めています。
ただ売電しないつもりでも、電気のご利用状況や天候などにより電気が余ってしまう場合があるため、何かしら売電契約を結んでおく必要があります。
買取単価がお得になるようなプランの中にはサービス利用料を支払う必要があるものがありますので、ご契約前によくご確認ください。ほとんど売電するつもりでないなら、サービス利用料の不要なプランがよいでしょう。