2016年4月から、一般家庭でも電気の契約先が自由に選べるようになる小売自由化が始まることを踏まえて、数々の電力会社が相次いでそれぞれの特徴や利点をもった料金プランを発表しています。
選択肢が多いことは、消費者にとって魅力的なことではありますが、供給エリア・基本契約メニュー・条件付き割引メニュー、他サービスとのセット割引等、複雑に組み合わされた各電力会社の料金プランを理解し、最も適切な電力会社を選ぶことは簡単ではないでしょう。
そういった中、役立つサービスのひとつとして「電気料金の比較サイト」があります。
今回は、この「電気料金の比較サイト」についてご紹介します。
「電気料金の比較サイト」でできること
電気料金の比較サイトは日本では真新しいサービスですが、既に自由化が進んでいる英国等では数多くの比較サイトが登場していて、電力料金を変更する人の34%は電気料金比較サイト経由であるといいます。
では、この電気料金の比較サイトには、どんな機能があり、何ができるのでしょうか。
それぞれ特徴はありますが、共通している機能として、WEB上で以下のような簡単な質問を選択・入力していくと、最適な電力料金プランを提案してくれるものがほとんどです。
- 地域を選択、または郵便番号入力でエリアを選択
- 現在契約中の電力会社、プランを選択
- 現在の電気使用料(kWh)や電気代(円)を入力
- 世帯人数や電気をよく使う時間帯など利用状況を入力
電力料金診断の上、そのまま各電力会社の申し込みページへ遷移できるサイトが多いです。
各比較サイトには、エネルギー関連の新着記事や省エネのための節電情報等も掲載されており、情報収集にも利用価値があるようにできています。
では、実例をみていきましょう。
主な電気料金の比較サイト
エネチェンジ
消費者の入力データを基に、東京電力や関西電力など現在25社・146プラン(2016年2月時点)の料金プランを比較できるサービスを開始しています。
電気料のみならず、ガスや携帯電話・ブロードバンド・各種ポイント等とのセット割引も考慮した節約金額も算出することができます。
エネチェンジは、英国ケンブリッジ大学の研究成果をもとに誕生しました。
昨年の2015年2月から新電力等の参入予定企業を含む電力事業者からの事前登録受付も開始していて、事業者側のメリットとしては、電力事業者が同サイトへ事前登録すると、「エネチェンジへの電力料金プランの掲載や送客準備」、「新規顧客獲得戦略・既存顧客の囲い込み施策などの相談」、「欧米の電力自由化事例やエネチェンジのユーザーデータに基づくコンサルティングサービス」などを受けることが可能(事前登録は無料)となります。
また、「でんきと暮らしの知恵袋」というコンテンツが閲覧でき、冬の電気代の節約方法や事業者向けに経営のコツ等、幅広く閲覧できます。
価格.com 電気料金
「価格.com」内に2016年1月14日から電力自由化に対応した電気料金プランの比較サービスです。
当初19社の掲載から始まりましたが、拡充が進んでいて、2月時点では39社のプランより選べるようです。
価格.comの特徴は、口コミを見ながら選べること。
家電製品等を買う際に、価格.comのクチコミ情報をチェックされる方も多いと思いますが、電力会社を選ぶ時にも、すでに切り替えた人等のクチコミがあれば参考になりそうです。
今はまだクチコミ数も多くないようですが、今後どんどん蓄積されていくのではないでしょうか。
エネがえる
一般消費者を対象にした診断サービスが増える一方で、事業者が利用する方式の診断サービスも登場しています。
「エネがえる」は、住宅メーカーや電気機器メーカーが家庭に提供する電気料金の診断レポートを作成できるサービスです。
家庭や小規模事業所の「電気の使い方を見える化」した情報をもとに“診断レポート”を発行。契約可能な電気事業者・料金プランから、最も経済的な電気料金プランを選択支援します。
現在、全国10地域で電力会社の料金プランを比較することが可能で、各家庭の1カ月間の電力使用量を基に、都道府県別・月別の電力需要の統計データから、12カ月分の電力使用パターンを推計し年間の電気料金を比較します。家族構成の他、燃料電池のエネファームがある場合とない場合に分け各プランを比較診断することが可能になっているといいます。
診断には、大量のデータをコンピュータで分析する「ビッグデータ解析」を使用。以後も、新たに太陽光発電と蓄電池を組み合わせた電気料金プランの診断サービスを年明けの1月から2月にかけて開始する予定だといいます。
タイナビスイッチ
太陽光発電導入ナビゲーションサイト「タイナビ」運営会社よる「タイナビスイッチ」も、サービスを開始しました。2月時点で、大手電力会社を含む25社143プランに対応しています。
株式会社新電力
株式会社新電力の電力比較サイトでは、他サイト同様、電力プランを診断できたり、プランの乗り換え手続き代行まで無料で行ってくれる上、電力プラン診断の専門家・電力診断士がオンライン上に在籍し、カウンセリングを受けているような感覚で料金シミュレーションができたりします。
セレクトラ
セレクトラでは2020年2月時点で66社、781の料金プランを比較することできます。
電気のほかにも、都市ガス、プロパンガス、インターネット回線なども料金の比較ができますので、お引越しの際に一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
家庭向けの電力小売りの競争が加速するにつれ、今後も多様な電気料金の比較サイトが登場してくるのではないでしょうか。
「電気料金の比較サイト」と「ビッグデータ」から広がる可能性
電気料金の比較サイトと切り離せないものといえば、消費データですが、サイトにより集められた消費データを主とする「ビッグデータ」を活用し、各社とも、新たなサービスの展開を検討しているようです。
例えば、「エネチェンジ」は、「日立製作所」と共にスマートメーターで入手できる電力の消費データをもとに、家電製品と連携し省エネにつなげる他、電気の使い方を分析し高齢者の見守りサービスを行うなど、電力のビッグデータを活用した新サービスを検討することにしていると先日発表を行いました。「エネチェンジ」は、日立製作所とベンチャーキャピタルの「環境エネルギー投資」が4億円余りを出資して業務提携をしたといいます。
「タイナビスイッチ」では、電気の見える化サービス「エコめがね」の実測データによる高精度シミュレーションシステムを構築しました。
スマートメーターが設置されていない家庭もあるなか、より精度の高い統計処理を行うため、エコめがねを運用するNTTスマイルエナジーが個人情報を含まない1時間単位の電力使用データを提供し、精度の高いシミュレーションが可能になりました。
「エネがえる」は、新サービスとして、過去の日射量のデータをもとに1時間ごとの余剰電力量を予測したうえで、蓄電池の充電・放電時間を変えながら、年間の電気料金が最も安くなるパターンを比較していくことも予定しているといいます。
今後も、電気料金の比較サイトは集められた「ビッグデータ」の活用により、消費者や事業者に寄り添った画期的な事業やサービスを展開していくことでしょう。